第二十六話 合流
戦がはじまる前ですが、また未来視がっ!?
寧々子と半蔵が設楽原に着いた二日後。
織田・徳川連合軍本隊が設楽原に到着した。
織田信長は到着後、速やかに防御陣形を展開。
織田軍は三万、徳川軍は八千からなる連合軍だが、まず織田軍のみを築いた堀や馬防柵ごとに広く薄く展開して敵から三万もいるように見えなくした。
残った徳川軍には織田・徳川軍の本陣の守護を任せ、戦場のほとんどを織田軍が占めることとなった。
一足先に着いていた寧々子と半蔵はさっそく合流して徳川家康の陣へ訪れていた。
「主、任務は無事完了。長篠城も未だ維持されております」
それまでチャラチャラした態度でいた半蔵が、急に生真面目な報告を始めたので隣にいた寧々子は目が飛び出すのではないかというくらい見開いている。
「半蔵、ごくろうさま。鳥居殿が無事に送り届けられてもなお長篠城が落城せずに済んでいるのは重畳。あなたの救いたい願いが報われましたね」
そう言って寧々子へゆっくりと顔を向ける家康。
寧々子は一礼してお礼の意を述べた。
「私のワガママを聞いてくださり、感謝です。歴史は変わってしまうかもしれませんが、それでも痛々しい彼の死が亡くなって私は安堵しております」
「歴史が変わるならそれはそれで私は楽しみです。話は変わって、これからの動向ですが、治殿は織田軍へお戻りください。半兵衛殿が呼んでおります。半蔵はいつもどおり私の影として守護を」
「承知」
「分かりました。ありがとうございます」
そこで寧々子は徳川の陣を後にした。
残った家康と半蔵はお互いに顔を見合わせると、吹き出した。
「半蔵。さっきの演技はなんだい?」
「お嬢ちゃんに俺が仕事できる奴だってことを見せるために切り替えようかなって」
「切り替えなんて普段は一切考えていないくせに。気に入ったのかな?」
「んー、そこまでじゃねぇけど、俺と初めて顔合わせした時の驚きっぷりが家康ちんと初めて会ったときみたいでな~!」
「私と寧々子殿は忍びに対する考え方が同じなのでしょうね。誰がこんな傾奇者みたいな忍びがいると考えますか」
「ここにいるんだなーー!」
これから戦だというのに緊張感のかけらもない二人であった。
家康から半兵衛が呼んでいると聞いた寧々子は織田軍の羽柴隊が配置されたところまで向かう。
羽柴隊は本陣より南の方に展開しており、武田軍の下からの奇襲に備えたり、またはそのまま進んで長篠城を救援する役割を負っている。
「あっ、戻ってきた~」
「半兵衛!」
「おかえり~。鳥居殿は無事に送り届けることができたのかい?」
「おかげさまでなんとか」
寧々子の返事に満足そうにうなずく半兵衛。
しかしすぐに真面目な顔へと変わる。
「聞いていた話だと彼の死で長篠城は奮戦するということだったけど、生きて戻っても士気は依然高いようだ。つまり、援軍が来るという報せの方が彼らの心の支えとしては重きがあるわけですね」
「それがないと四面楚歌状況では希望が見えず、降伏するしかないですからね」
「でも降伏したところで一度裏切った奥平親子を武田が許すわけもないし、貴重な戦力を失うギリギリだったね」
「このあとは信長様の命に従うだけでよい? 長篠の戦いはこちらの負け戦じゃないから私がどうこうするようなことはないですし」
寧々子の言う通り、馬防柵と鉄砲があり、長篠城が落城していないのならば史実通りに進みさえすれば確実に織田軍が勝利する。
そのため今回は寧々子が奮戦したり、立ち回る必要はない。
「本当にそう思いますか?」
「どういうこと?」
「あなたがまさに昨日までにやってきた鳥居殿の生還。これが全く影響しないと?」
「この二日の間に何か未来視を?!」
久しぶりの未来視案件発動に焦りを見せる寧々子。
半兵衛は神妙に頷き、未来視で見た内容を言い始める。
「具体的になにが問題だったのかまでは分からないのですが、敵にこちらの情報が漏れ、長篠城は陥落。救援に向かった秀吉様は危機的状況に、本陣に残っている信長や家康様も窮地に立たされます」
「えっ!? 原因が分からないと対処のしようが……それに本陣前には馬防柵と鉄砲隊がいるのにどうして……」
「確かに馬防柵と鉄砲は脅威です。が、全く対処できないわけではありません」
そこで半兵衛は地図を地面に広げた。
二人は地図の周りにしゃがみこんで話を続ける。
「今、僕たちがいる南と本陣から北にあたるこの二点の道。ここを通っていけば馬防柵と鉄砲に真正面から戦わずに済み、奇襲としてもうってつけです。つまり騎馬隊のことを考えるなら武田はこの二点を攻めるしかないのです」
「情報が漏れたことがきっかけでって言ってたよね? ということは織田軍の陣形や策がバレて北や南に集中して攻撃してくる可能性があるってこと?」
「そのとおり。きっと寧々子殿の知る歴史どおりならば問題ないのでしょうが、鳥居殿の生死を変えたことや僕の未来視のことを考えると怪しいです」
「ということは……仕事しなきゃですよねぇ」
新たな試練が生まれたことにより、やはり楽をすることができない寧々子であった。
寧々子と半蔵が設楽原に着いた二日後。
織田・徳川連合軍本隊が設楽原に到着した。
織田信長は到着後、速やかに防御陣形を展開。
織田軍は三万、徳川軍は八千からなる連合軍だが、まず織田軍のみを築いた堀や馬防柵ごとに広く薄く展開して敵から三万もいるように見えなくした。
残った徳川軍には織田・徳川軍の本陣の守護を任せ、戦場のほとんどを織田軍が占めることとなった。
一足先に着いていた寧々子と半蔵はさっそく合流して徳川家康の陣へ訪れていた。
「主、任務は無事完了。長篠城も未だ維持されております」
それまでチャラチャラした態度でいた半蔵が、急に生真面目な報告を始めたので隣にいた寧々子は目が飛び出すのではないかというくらい見開いている。
「半蔵、ごくろうさま。鳥居殿が無事に送り届けられてもなお長篠城が落城せずに済んでいるのは重畳。あなたの救いたい願いが報われましたね」
そう言って寧々子へゆっくりと顔を向ける家康。
寧々子は一礼してお礼の意を述べた。
「私のワガママを聞いてくださり、感謝です。歴史は変わってしまうかもしれませんが、それでも痛々しい彼の死が亡くなって私は安堵しております」
「歴史が変わるならそれはそれで私は楽しみです。話は変わって、これからの動向ですが、治殿は織田軍へお戻りください。半兵衛殿が呼んでおります。半蔵はいつもどおり私の影として守護を」
「承知」
「分かりました。ありがとうございます」
そこで寧々子は徳川の陣を後にした。
残った家康と半蔵はお互いに顔を見合わせると、吹き出した。
「半蔵。さっきの演技はなんだい?」
「お嬢ちゃんに俺が仕事できる奴だってことを見せるために切り替えようかなって」
「切り替えなんて普段は一切考えていないくせに。気に入ったのかな?」
「んー、そこまでじゃねぇけど、俺と初めて顔合わせした時の驚きっぷりが家康ちんと初めて会ったときみたいでな~!」
「私と寧々子殿は忍びに対する考え方が同じなのでしょうね。誰がこんな傾奇者みたいな忍びがいると考えますか」
「ここにいるんだなーー!」
これから戦だというのに緊張感のかけらもない二人であった。
家康から半兵衛が呼んでいると聞いた寧々子は織田軍の羽柴隊が配置されたところまで向かう。
羽柴隊は本陣より南の方に展開しており、武田軍の下からの奇襲に備えたり、またはそのまま進んで長篠城を救援する役割を負っている。
「あっ、戻ってきた~」
「半兵衛!」
「おかえり~。鳥居殿は無事に送り届けることができたのかい?」
「おかげさまでなんとか」
寧々子の返事に満足そうにうなずく半兵衛。
しかしすぐに真面目な顔へと変わる。
「聞いていた話だと彼の死で長篠城は奮戦するということだったけど、生きて戻っても士気は依然高いようだ。つまり、援軍が来るという報せの方が彼らの心の支えとしては重きがあるわけですね」
「それがないと四面楚歌状況では希望が見えず、降伏するしかないですからね」
「でも降伏したところで一度裏切った奥平親子を武田が許すわけもないし、貴重な戦力を失うギリギリだったね」
「このあとは信長様の命に従うだけでよい? 長篠の戦いはこちらの負け戦じゃないから私がどうこうするようなことはないですし」
寧々子の言う通り、馬防柵と鉄砲があり、長篠城が落城していないのならば史実通りに進みさえすれば確実に織田軍が勝利する。
そのため今回は寧々子が奮戦したり、立ち回る必要はない。
「本当にそう思いますか?」
「どういうこと?」
「あなたがまさに昨日までにやってきた鳥居殿の生還。これが全く影響しないと?」
「この二日の間に何か未来視を?!」
久しぶりの未来視案件発動に焦りを見せる寧々子。
半兵衛は神妙に頷き、未来視で見た内容を言い始める。
「具体的になにが問題だったのかまでは分からないのですが、敵にこちらの情報が漏れ、長篠城は陥落。救援に向かった秀吉様は危機的状況に、本陣に残っている信長や家康様も窮地に立たされます」
「えっ!? 原因が分からないと対処のしようが……それに本陣前には馬防柵と鉄砲隊がいるのにどうして……」
「確かに馬防柵と鉄砲は脅威です。が、全く対処できないわけではありません」
そこで半兵衛は地図を地面に広げた。
二人は地図の周りにしゃがみこんで話を続ける。
「今、僕たちがいる南と本陣から北にあたるこの二点の道。ここを通っていけば馬防柵と鉄砲に真正面から戦わずに済み、奇襲としてもうってつけです。つまり騎馬隊のことを考えるなら武田はこの二点を攻めるしかないのです」
「情報が漏れたことがきっかけでって言ってたよね? ということは織田軍の陣形や策がバレて北や南に集中して攻撃してくる可能性があるってこと?」
「そのとおり。きっと寧々子殿の知る歴史どおりならば問題ないのでしょうが、鳥居殿の生死を変えたことや僕の未来視のことを考えると怪しいです」
「ということは……仕事しなきゃですよねぇ」
新たな試練が生まれたことにより、やはり楽をすることができない寧々子であった。
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