第二十四話 任務完了っと!
今回楽しかったですー!!
わりと半蔵のキャラが気に入ってきた。
豊川上流地域に到着した寧々子たち一行はそのあたりで速度を緩め、周辺の警戒をしながら川沿いに下っていた。
「忍びを雇ってる真田はこっち側に配置されていないはずだから、下るまでは問題ないと思うけど油断はしないでね、お二方」
「承知」
「ええ」
そのままゆっくり下り続けていたところ、途中で武田の旗が見えると半蔵がすかさず制止の手を出す。
馬を下りて進むらしい。
確かにこれ以上、馬で行くのはバレるリスクが上がるだろう。
「じゃあ、作戦会議~! まず、このまま駆け足で長篠城まで突っ切るけど、その先陣を切るのは鳥居殿」
「えっ」
「まぁまぁ最後まで聞いて。鳥居殿は周りも俺たちのことも考えずにただただ長篠城へ走ってください」
「う、うむ。任せよ」
「援護を俺と治殿でやるよん。治殿は弓があるよね? それを打ち切るまで鳥居殿を中距離から援護。俺は先に行かせてた部下たちに合図しながら周辺の武田軍を混乱状態に陥らせるんで」
いつのまに部下を送り込んでいたのか。
チャラチャラしてるけど、仕事は本当にできるようだ。
「というわけでそれでよろしくね!」
「「承知」」
武田の旗数がいよいよ多く見えてきたが、鳥居は周りを見ずにただただ走った。
そのスピードは並の将に比べて早く、まさに伝令向きだ。
前方を駆けていく鳥居を追うのに寧々子は必死だった。
「鳥居殿はまさに援軍要請に向いた人物だったわけかぁ~。そこらの伝令より足早いよ~」
「鎧着てるのにこの速さって、一体どんな体の鍛え方してるのよ」
「まぁそれについていけてるお嬢ちゃんも俺的には驚きだけどね。運ぶつもりでいたんだけどなぁ~」
「それはよかった。あなたに抱えられて走ることになったらそれこそ性別がバレてしまうわ。てかあんた、全然平気そうね」
寧々子の言う通り、半蔵はさすが忍びというべきか、息一つ上げることなく忍びらしく身を低くして走っている。
履物も下駄なはずなのになぜか音がしないし、そもそも足音がない。
風と共にいるような心地になる。
それに目を見張っていると半蔵はニヤリと笑う。
「俺のこと、見直したかい?」
「ちょっとね。認めたくはないけど」
「ええ~ひどいな~。お嬢ちゃんの時代で俺ってばどういう風に伝わってるわけ~」
「……事情を知ってるの?」
「そりゃ、俺ってば家康ちんの影だし。いつでもどこでもご一緒してるよ~」
ということは全部聞かれていたのか。
いやでも、どう考えてもいたか? と疑問を抱くような状況もあったが。
「ほら、そろそろ入るよ。構えて」
半蔵に言われるとまさに鳥居が武田の陣を横切っていく直前だった。
急いで弓矢を構える寧々子。
武田軍は長篠城を向いているので、後方である山から現れた鳥居にはまだ気づいていない。
寧々子は鳥居の存在がバレるギリギリまで何もせず、鳥居もただただ突っ走る。
そして、陣の横を素通りして武田軍の前に鳥居が着いたその時。
「あの者を捕らえよ!」
武田軍から鳥居捕縛の命が発せられた。
寧々子はすかさず構えていた弓を命令した部隊長と思しき人物に狙いを定めて放った。
弓は命中し、命じた兵士は倒れる。
他の兵がそれに動揺していると、炮烙玉がどこからか投げられてきた。
ドドドン。
炮烙玉が弾ける音が戦場に響き渡る。
「わぁお」
「これだけじゃないよ」
半蔵はそう言いながら懐からまたなにか取り出してそれを武田軍めがけて投げる。
それが何かにぶつかると、煙が勢いよく噴出した。
煙玉だったようだ。
「おお、鮮やかなお手並み」
「お褒めに預かり恐悦至極」
気障なやりとりを交わしながらその場を後にしてすぐに鳥居を追いかける。
先に行っていた鳥居の前を別の部隊所属の武田軍が立ちはだかり、道を阻む。
寧々子は矢を三本構えて一気に放つことを繰り返す。
全部は当たらないが数撃てば当たる方式だ。
隣を走っていた半蔵は少し寧々子と距離を取って、寧々子の矢以上の数の苦無を放って全て当てる。
「すごい、忍びっぽい」
「いやだから忍びなんだけどな」
そのまま二人の連携プレイを持って戦場を駆け抜ける。
途中、半蔵の部下だと思われる者たちの炮烙玉や半蔵が投げる煙玉で戦場は大混乱に包まれる。
「半蔵! 矢を使い切った!」
「ではあとはお得意の槍だね! 鳥居殿にもっと寄せて行って」
「分かった!」
並んで走っていた寧々子がひと際前に飛び出して前方の鳥居に近づく。
長篠城はもう目前に見えるところまで来ていた。
あとは橋を渡れば。
そう思っていると、橋の前に一人の将が立ちはだかった。
「ここを通すわけにはいかぬ」
「あれは、武田信廉」
「鳥居殿、あれは誰ですか!?」
「信玄の弟です」
ここまできてまさかの武田の重鎮が相手か。
二人は長篠城への橋の前で足を止めることとなる。
長篠城は目前だというのに、あの信玄の弟となればさすがに簡単には通してくれないだろう。
二人が神妙な面持ちで構えると、背後から飛び出してきた一つの影。
「半蔵!?」
「服部殿!?」
半蔵はそのまま武田信廉に腰につけていた短刀を抜いて攻撃する。
「忍びか」
「忍びだからって堂々と武将と戦えないわけじゃないよん」
飄々と受け答えしつつも攻撃の手を止めない半蔵。
一瞬、寧々子はそんな半蔵と目が合った。
“ 行け ”
そういわれた気がした。
「鳥居殿!」
「うむ!」
二人は同時に駆け出す。
それに気づいた武田信廉が半蔵を交わして止めに行く。
鳥居が橋を渡り始めたのを見届けて寧々子は振り返り、追ってきた武田信廉を迎え撃つ。
「治殿!」
「はやく長篠城へ!」
一瞬止まった鳥居はすぐに寧々子の言葉で走り出した。
武田信廉が悔し気な表情を浮かべると、背後から半蔵が援護に入る。
それを見事に交わして、体制を立て直す信廉。
半蔵は視界の端で長篠城へ入る鳥居を確認すると、ニヤリと笑った。
「これで任務完了っと」
「なにっ」
「お嬢ちゃんすまん、我慢してね」
「えっ」
半蔵は戸惑う信廉へ背を向け、その勢いのまま乱暴に寧々子を片腕で担ぎ、近くの崖へ走っていく。
「ななななにをおおおおおおおおおおお!?!?」
「武田の人、じゃーねぇぇぇ!」
「待てっ!!」
寧々子を担いだまま崖を飛び降りた。
下にあるのは豊川。
半蔵と寧々子はそのまま川へ落ちたのだった。
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