第二十三話 長篠城帰還まで
チャラッチャラしてますねぇ。。。
でも仕事はキッチリこなすんですよこういう人。
徳川軍本隊へ援軍要請に来た奥平貞昌の家臣・鳥居強右衛門。
無事援軍の確約をもらい、急ぎ主の待つ長篠城へと帰還するつもりで支度をしていたところを、羽柴隊竹中半兵衛直属兵士・治に変装した寧々子と寧々子が家康に頼んだ助っ人・服部半蔵が現れる。
寧々子と鳥居は、現れた服部半蔵の姿に衝撃を受け、ほんとうに忍者なのか疑いを持ちつつも共に長篠城へと行くこととなった。
支度を終えた三人はさっそく岡崎城を出ていく。
岡崎城から出た馬は二頭。
一頭は鳥居が、もう一頭は半蔵が手綱を引きつつ寧々子が同乗していた。
「あの、何も一緒に乗る必要などなかったのでは? 私、馬乗れますよ」
「女の子と一緒に馬に乗る機会なんて忍びやってたらなかなかないからサ。まぁ遠慮しなさんなって。俺、上手いよ?」
「遠慮してないですし、今一応男に変装してるんであまり女子扱いしないでもらえます? 怪しまれます」
「この時代、男と男が仲睦まじくても不思議はないから問題ないよ!」
このように全く取り合ってくれない半蔵に寧々子は辟易していた。
前世ではオタクであったためにチャラチャラした男とは無縁で接する機会もないに等しかった寧々子は男性が少々苦手めだった。
しかし今は転生して信長や秀吉、治に変装している間は男所帯にいるので昔ほど苦手意識はない。
とはいえ、チャラチャラな男に耐性がないのでちょっと苦手である。
寧々子の夫・羽柴秀吉もすぐ女に声をかけるのであれもチャラチャラしているのかもしれないけど、昔から知っていることが幸いしてか秀吉は平気だ。
「あの、服部殿! どの道を進んで長篠城へと行かれるのですか!」
それまで後ろからついていく形でいた鳥居が馬を並べて、声をかけてくる。
「あんた、行きはどうやって来たんだ?」
「行きは夜半に豊川の下流を泳いで武田の陣をくぐり抜け、茶臼山近くで川を上がって山の中を通って参りました」
「なるほどね。帰りは山の中ではなく麓に沿っていき、最後に豊川上流に沿って戻る予定だよ。ただし、ただでは帰らない」
「ただでは帰らない? といいますと?」
「すこーし武田と遊ぶことになるよ」
半蔵の言葉に寧々子が過敏に反応して半蔵の耳を引っ張って引き寄せ、そのまま小声で叱りつける。
「ちょっと! 武田と遊びなんてしたら鳥居さんの死亡確率上がっちゃうじゃない! それを回避するためのあなたなのよ!?」
「いや完全回避なんて無理だよ。俺の配下の情報によれば今の長篠城は四面楚歌状態。鳥居殿が抜け出せたのはほんとに奇跡の所業なんだぜ、お嬢ちゃん。だからどの道衝突は避けられない。でも、鳥居殿が無事長篠城について援軍が来る報せさえ入れば俺たちの勝ちってことだろう? なら武田と戦うんじゃなくて遊ぶんだ」
「戦力が二人なのにどうしろと!?」
「その抜けてる戦力て俺かなぁ? それともお嬢ちゃんかな? お嬢ちゃんなら朝倉の奇襲軍相手に一人で翻弄できて忠勝の旦那に一目置かれるくらいには実力あるし問題ないって。俺に関しても忍びだから翻弄するのはお手の物よ。まぁ暗殺が一番だけどね~」
チャラチャラしているのにさらっと暗殺が得意とかいったぞ、こいつ。
やっぱ忍びなんだな。
「どっちかっていうと鳥居殿がどれだけの実力か分からないところが唯一の不安だけど、まぁもしものときは俺が守ればいいっしょ」
「……お役目を果たす気はあるのね」
「だから最初から言ってるじゃあん!? 俺のこと信用しなさすぎっしょ、今だってあまり馬に乗ってても苦じゃないようにしてんじゃあん!?」
言われてみれば、自分で乗っているときに比べてお尻が痛くない。
寧々子は静かに驚いていると、それを見てドヤ顔を浮かべてる半蔵。
こういう気遣いもできるところも実にポイントが高い。
チャラついているが、ほんとに仕事はこなしてくれるのだろう。
服装が目立つのが難点だが。
しばらく馬を走らせていると山が近づいてきた。
山道にそろそろ入るか、というあたりで半蔵がなにやら懐をもぞもぞと触りだす。
「さてさて、山に入るしそろそろこれ着ますかね~」
「なにを?」
「姿隠し」
そういって半蔵は寧々子も覆いながら大きなマントみたいなものを羽織る。
布の色が草木と同じなので周りに同化している。
「こんなの使うなら最初からそういう格好すればよくない!?」
「忍び服で馬に乗るなんて逆に目立って仕方ないっしょ! これも作戦作戦」
「どうせただ着たいだけでしょ」
「そういうのもある」
まともに相手すると疲れそうだ。
寧々子はしばらく半蔵の相手をするときは適当にしようと決めた。
三人はそのまま山中を通り抜けて無事豊川上流が見えるところまでたどり着いた。
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明日、鳥居は無事に長篠城へたどり着けるのか!?




