第二十二話 誰だお前
サブタイそのままの気持ちです。
誰だお前。
寧々子が一足先に徳川家康に合流した翌日、織田軍本隊が岡崎城に到着した。
到着後、丸一日の休憩を取って英気を養い、二日後に長篠城付近へ出陣予定となっている。
此度の織田軍には、柴田勝家、明智光秀、丹羽長秀、前田利家といった名だたる武将が数多く参陣しており、城内は騒然としている。
無論、寧々子の旦那である羽柴秀吉も竹中半兵衛を引き連れて参加している。
石田佐吉こと三吉と大谷平馬はまだまだ未熟の若僧なのでお留守番だ。
「信長殿、よくぞ参られました。恩にきります」
「家康か。盟友の危機とあらば、馳せ参じるのが友というものよ」
「信長殿とよき友人になれたこと、光栄に思います。さぁ、どうぞ城内へ。他の皆さまも」
家康はそのまま自ら信長一行を城内へと案内した。
両軍はそのまま丸一日の休息をとり、士気を十分に上げていた。
そして翌日、出陣のための準備を進めていた岡崎城に一人、駆け込んでくる者がいた。
長篠城から援軍要請にきた鳥居強右衛門である。
彼は到着後、すぐに家康の御前に通されて長篠城の近況を報告し、援軍を求めた。
元より出陣するつもりであった徳川はその要請を承諾。
鳥居は良き返事に感謝の意を告げると一足先に長篠城へその朗報を持ち帰るべく、一時休息をとるとすぐに城を出る支度を始めた。
そこへ。
「鳥居強右衛門様ですね」
一人で支度していた鳥居の元へ歩み寄る人が二人。
「初めまして。私、織田軍羽柴隊に所属する竹中半兵衛直属の一兵・治と申します」
「おお、織田軍の方ですか。改めまして、鳥居強右衛門と申す」
「これはご丁寧に。これから長篠城へ戻るのですよね? 私もお供します」
「ありがたき申し出。しかし武田軍の警戒網を突破せねばなりませぬ故、一人でいる方が好都合。気持ちだけ頂いて参ります」
「その武田の警戒網を突破するためです。あなた一人では突破することはもはや不可能」
「なに」
侮られたと考えたのか、鳥居は急に険しい顔つきへと変化させていく。
それを見て寧々子は慌てて両手をあげる。
「決して鳥居様を侮っているわけではありません。先程、主より周辺の最新情報を聞きまして、鳥居殿が城を出た時から少し状況が変わっているようなのできっと来た時と同じ手は通じないかと」
「……なるほど。早とちりしてしまい、失礼した」
「いえ。私こそ、誤解を与えるような言い方をしてしまい、申し訳ございません」
実は先程、寧々子が口頭に並べたことは全て嘘である。
うっかりこのままではダメだと口走ってしまったので、適当に信じてもらえそうなことを言っただけである。
変装とか隠し事とかしていると、だんだん誤魔化すことに長けていくな。
「そうだ、私のほかにもう一人同行者がいます。この辺りのことに詳しい者なので、きっと秘密の抜け道などを知っているかもしれません」
「ほう。して、その者は?」
「ここに直接向かわせると家康様がおっしゃっていたので、もうそろそろかと思うのですが」
「遅れてしまったようで、すぃやせん」
急に背後に人の気配を感じて寧々子は鬼気迫る顔で背後を振り返る。
すると自分より少し高い、男性としては低身長の男が立っていた。
寧々子はその人を見てギョッとした。
「どうもぉ~! 徳川家康の影やってます、服部半蔵でぇ~す! よろしくぅ!」
突然現れたその男の自己紹介に、寧々子だけでなく鳥居もギョッとした。
服部半蔵。
徳川家康の懐刀ともいえるほど忠義を尽くして生涯かけて仕えた伊賀の忍び。
そもそも、忍びといえば、草木や陰に隠れるように目立たない恰好をしているのがイメージというもの。
しかし二人の前に現れた服部半蔵は。
明るめの茶髪に、ところどころアクセサリーを身に着けており、服装の色も草木や陰に紛れる気など一切ないかのような色合いをしている。
鎧が見当たらないのは忍び故、と片付くかもしれないが、靴に草鞋どころか下駄を履いている。
これ、忍びか?
本気であの有名な服部半蔵なのか、目を見張った。
「だ、だれ……」
「チョットチョットォ~! 家康ちんに俺を貸してくれって言ったのはおじょ、僕ちゃんだろう~? なんでそんなに驚いてんのぉ~」
確かに言ったけど、誰がこんな忍び予想したよ。
目立たず、強くて道案内ができるとしたら忍びかなと思って興味もこめて頼んだけど、これは人選ミスではないか。
しかもこいつ、家康様を、ちん付け?
さらには私が女だって知ってる?
家康様が教えたのかな。
「は、治殿、やはり某は一人で」
「い、いや、私は行きます。こいつはいいかな」
「ええー! 呼んどいてそりゃないじゃぁん! 仕事は果たすよ~!」
「そんな恰好でなに言ってるんですか!! 忍びっぽくない!!」
「忍びっぽさってなんだよ~。俺は俺のしたい恰好してるだけだしぃ? これでちゃんと普段仕事果たしてんだからいいじゃん」
この格好で仕事してるって、まじかよ。
ありえないものを見る目を半蔵へと向ける寧々子に、半蔵はやれやれと首を振る。
「僕ちゃん、偏見はよくないよぉ。まぁちゃんと見ててよねぇ? バッチリお役目果たすからサ!」
そう、最後に星でもつきそうなノリで言われる。
半信半疑、いや一信九疑くらいの割合だが、こうして三人は長篠城までの死地を共に歩むこととなった。
ほんとに読了ありがとうございます。
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次回、こんなとんでもな忍びと死地を共にするぞ!!




