第十八話 賽は投げられた
そういえば武田家には真田家が仕えてましたな。
竹中半兵衛がこの後起こる織田信長と武田との戦で勝利を絶対のものとするため、三吉や寧々子も使ってあれこれ準備をしてからひと月ほど経過した頃。
徳川家康の元へ半兵衛から預かった言伝を伝え、目的の書状を受け取った三吉が三河より帰還した。
この時、秀吉、半兵衛、寧々子は一時居城・長浜城へと戻っていた。
三吉帰還の報せを受けると寧々子はすぐさま半兵衛と共に招集する。
「おかえり三吉。どうだった?」
「二人の名前を出したら家康様はあっさり承諾したよ。でも簡単に明け渡すな、という指示だったからこれを演じるのに時間がかかった」
「上々ですよ、佐吉殿。一か月かければ、これを策と怪しむ者と大丈夫だろという単細胞とで良くて八割二割、悪くて半々で意見が分かれるでしょう。それでも相手が信玄でないなら問題なく事が運ぶはずです」
さりげにバカという言葉を包んで単細胞と言った半兵衛に寧々子と三吉は半眼になる。
最近うっすらと感じていたけど、結構毒舌ですね竹中半兵衛。
「ちなみに武田勝頼って人はどちら側に該当するんでしょうか?」
「単細胞ですね」
三吉の問いに半兵衛はいい笑顔で言い切った。
「半兵衛、佐久間殿に頼んだ調査とやらは大丈夫なのですか?」
「無論です。武田家の状況と長篠城付近の動きも把握させました。これで信長への献上品は十分でしょう。僕はこれから秀吉様へ報告、そのまま岐阜城へ参じて共に打診するので少し時間をください」
半兵衛は三吉が持ってきた家康からの書状を受け取り、颯爽と寧々子の部屋を離れた。
それから数日後。
信長の居城・岐阜城へ行っていた秀吉一行が長浜城へ帰還した。
いい報告を持って。
寧々子と三吉は秀吉たちが城へついた知らせを聞くとすぐさま出迎えに馳せ参じた。
「おかえりなさいませ、旦那様。半兵衛。平馬」
「おおー! ねね! 出迎えご苦労なんじゃー!」
「ちょっ、そんな引っ付かないで」
「うう……自分から提案したとはいえ、これから戦になるからまたねねと離れ離れじゃ……この城のことを頼むぞ」
寧々子に抱きついている秀吉から戦が決定したことを告げられて反射的に顔を上げる。
すると半兵衛の目が合う。
彼がニヤリと笑ったのを見てこの話が真実であることと、留守番できるわけはないことは見通せた。
そのまま秀吉たちと天守へと向かい、長浜城にいる秀吉がここへ来て新たに雇用した家臣たちを含めてみな集めて武田と戦をすることが決定した旨を伝える。
今すぐ開戦というわけではないが、信玄が亡くなっている確信がまだなく戦国最強とされる騎馬隊を抱える武田に一筋縄では勝てないとこの場の誰もが理解していた。
皆、いつでも戦になってもいいように常に最新の情報収集と準備を始めることとなった。
各自へ兵糧や兵、武器に関する指示を秀吉がし終えると大体の者たちが去り、天守には秀吉・寧々子・半兵衛・三吉・平馬の五人が残った。
この顔ぶれを見渡すと秀吉はみなに近づくように合図する。
五人へ円を描くように座り、顔を突き合わせた。
「今から話すことはこの城ではこの五人だけの話じゃ。よいな?」
「「承知しました」」
全員の返事を聞いてから秀吉は神妙な顔つきで話始めた。
「半兵衛の提案書にもあったが今回の戦、鉄砲と馬防柵だけでは騎馬隊対策はできても歴戦の武田家の武将たちに勝てない。そのための一計として織田家臣・佐久間信盛殿の裏切り工作をすることとなった」
秀吉の話と自分が知る史実を照らし合わせて内容に相違ないことを確認する寧々子。
「このことはこの五人以外他言無用だ。織田家でも信長様と明智光秀殿しか知らぬ」
「敵を騙すにはまず味方から。兵法の一つです」
「なので、もし佐久間殿が怪しい行動をしているのを見かけることがあれば怪しんでくれ」
「……無視をするのではなく?」
「そうじゃ」
三吉は納得がいかないというように首を傾げる。
平馬も寧々子も一瞬首をひねるが、そこで寧々子は一つ大事なことを思い出した。
「真田……」
「おお! ねねは普段城のことを任せていることもあって各地の武将についても明るいのう! 話が早い!」
「なるほど。真田家に仕えている猿飛佐助ですね」
平馬も真田という単語を聞いて思い出したように言う。
三吉も平馬が言った猿飛佐助という名にようやくピンときた。
「忍び!」
「そうじゃ。佐吉ももっと早く気付けるように諸侯の勉強をするとよいぞ。真田家に仕えているこの忍び、徳川殿の元で仕えている服部半蔵と並び立つくらいに優秀だと聞く。裏切りの話を佐久間殿が武田へ持っていけばまず間違いなく確認として忍びを送り監視するじゃろう。猿飛自身が来なくとも、奴の手下が来ることは十分ありえる」
「信憑性を持たせるためにも、あえて怪しい行動を無視ではなく追求するんです。ですが、言葉は選んでくださいね? 織田家で事情を知らぬ家臣たちに聞かれて万が一にでも話が大きくなりすぎたら工作どころではなくなります」
「騒ぎが大きくなり、信長様の耳にまで入ったなら死刑にしないと織田信長らしくなくなりますものね」
「工作のためだと全員に言うわけにもいきませんしね。お話は分かりました。秀吉様と同行していくとき、とくに気をつけましょう」
「この城で仕事をする分にはその佐久間殿という方に接触することはないですしね」
「油断はしすぎるなよ? 来訪の可能性が全くないわけではない。特に小姓二人はわしにずっとついておるからの」
「「はい」」
そこで秀吉の話は終わり、解散となった。
秀吉の前を辞し、小姓二人とも別れて寧々子と半兵衛は二人だけになった。
すると半兵衛から話しかけられる。
「寧々子殿がそのげーむとやらで見たと言う戦の詳しい流れについてもう一度お話を聞きたいです。今日は地図を持ってきましたので合戦地の目処と詳しい動きがより分かるかと思います」
「はい。私の記憶でお役にたてるならば」
「そして鉄砲の数も多ければ多いほどいいとは進言したのですが、具体的な数をやはり出しておいた方が明智殿の助けにもなりましょうし、それも考えたいです」
「数かぁ。ゲームは無限に湧いてくるからなぁ」
二人はそのまま寧々子の部屋まで向かう。
本格的に戦が始まるまであと数か月のことだった。
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次回、開戦となるか!?




