第十六話 やっぱり便利なものには制限がある
制限なしで使えたらせっかく戦国時代にきたのに馬使わなくなるからもったいないですよね
竹中半兵衛への手土産を増やすために、徳川家康に助力して領地に攻めてきた武田軍を打ち払うことになった寧々子。
戦場で竜巻のごとく、兵を打ち上げていくその様をみた榊原康政含む徳川軍は呆気にとられるもその後士気が高まってそのまま武田軍を押し返すことに成功。
寧々子はそれを見届けると勝利で歓喜する高天神城を後にしてすぐさま家康のいる浜松城へと帰参した。
「おかえりなさい、寧々子殿」
「戻りました、家康様。無事武田軍を追い払ってきましたが、あの場を撤退する素振りがないので再び攻めてくると思います」
「こちらも領地を譲るつもりはないのでまた来たら払うのみですが、先にも申しましたように信長殿に助けを請いたいです」
「その旨、しかと届けます」
「よろしくお願いいたします」
家康への挨拶も済み、彼の見送り付きで現在秀吉たちが生活している岐阜城へと帰ろうとする寧々子。
浜松城で家康が人払いしてくれた彼の部屋前の庭に立ち、帰るために必要な自分の内にいるねねさまを起こそうとする。
おーい、ねねさま。
一拍の間。
あれ、起きない。
いや、待て。
私、これまで自力でねねさまを起こしたことがあっただろうか。
ここまで来て自力ではねねさまを起こすことができないというワープの欠点に気付いた寧々子。
一人顔を青くして冷や汗を流し、棒立ちしていると動きがないことに心配したのか家康が近寄ってきた。
「いかがしました?」
「……半兵衛が作ったこの移動装置、ねねさまが起きないとダメなんです」
「起こせないのですか?」
「いつもねねさまから話しかけてもらっていたので自分から起こしたことがないんです。いつも半兵衛がいるから」
「ああ、能力者同士は近くにいるとなんかチクチク? 不愉快な感覚に襲われるので仕方ないですよね。なかなか使うところが限定的なものですね」
「改善方法を模索して参ります」
そうは言ってもこのままでは帰れない。
普通に馬で帰るしかないのかな、と寧々子が途方に暮れそうになったとき、家康が寧々子の肩に触れた。
「家康様?」
「僕がいるので今は問題ないですよ」
「え」
家康がそう言って微笑むと一瞬、二人の周囲をぶわっと風が巻き起こる。
同時に、体がものすごく軽くなる感覚に襲われる。
「ああっ!」
「おねねさまの声!?」
急に外からねねさまの驚きを含んだ叫びが聞こえて状況に戸惑いながら周囲をキョロキョロすると、近くで地面に倒れているねねさまがいた。
「え!? 分離してる!?」
「おっと、少し起こすつもりだったのに引き離してしまいました。すみませんお二人」
「力加減が下手すぎますぞ、家康殿!」
家康に対して物怖じせずにはっきり物を言ったおねねさまに、寧々子は一瞬焦りを見せるが、家康は全く気にしていない様子だった。
「いやぁ~普段力を抑えたり気配を殺すことにばかり気を張っているものですから、操作することに慣れていなくて。吹き飛ばしてしまってすみません、大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけありますか! このままでは妾、消えてしまうわ! 早く戻してくださいまし!」
「承知です」
へらへらした態度から一変してすっと無表情になり、目を細めると今度はおねねさまが寧々子の体へと吸い込まれるように消えていく。
すると寧々子は元の体の重さを感じた。
「私の体って重かったんだ」
「魂二つも入っていれば重いですよ。それでも肉体が耐えているのは普段ねね様が眠って気配を消しているからです。あまり無闇に起こすのは命のためにもおススメしないですよ」
「そんなハンデが……。それじゃあこのワープも結局場所も回数も限定なんですね」
「そういうことになりますね。なにかいい馬を用意しましょうか?」
「それくらいならば、よく使いますし旦那様にお願いでもしますので」
「おや残念」
なにが残念なのかは不明だが、詮索しないでおこう。
“ やれやれ。家康殿にも困ったものだ ”
「あ、おねねさま、起きてるんですね」
“ 妾の力が必要だからこうなったのだろう? 仕方ないから力を貸す。帰るぞ ”
急かすようにおねねさまが言うと、寧々子の体が光り出す。
それに寧々子も家康も驚いている間に、寧々子の体は家康の前から消えた。
残された家康は「退屈しない方々ですねあの二人は」と一人呟くと室内へと戻っていった。
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