第十五話 いざ高天神城へ出陣!
武田と徳川が小競り合っていた城は遠江・高天神城ともう一つ東美濃・明智城らしいです
遠江の方が家康ってイメージがあるので高天神城にしました!
三河の家康の居城・浜松城へ落ち……訪れた寧々子は城主・徳川家康の頼みで武田との戦に参加することとなった。
家康の頼みを渋々引き受けた寧々子はさっそく変装するために城の一室で着替えている。
家康ほどの大名となると、ある程度道具も揃っているので変装することにそう時間はかからなかった。
「家康殿、お待たせしました」
着替え終わって部屋から出ると、外で待っていた家康がこちらを振り向く。
一瞬虚を突かれたような反応をする家康に寧々子は苦笑する。
「前に見ているではありませんか」
「いえ、改めて変化前後を時間差もなく見られると驚きます。素晴らしい変装の腕前ですね。しかも声も少し低くしておりますね? それ大変じゃないですか?」
「さすがに十年以上やっていると慣れます。むしろ戦後に元の声に戻すのが大変ですね」
準備を終えた二人がその後向かったのは現在武田家と徳川家が奪い合いを繰り広げている遠江・高天神城である。
今はまだ徳川家が持っており、武田を追い返さんと奮戦しているところであった。
「激しいですね」
「ええ。一年前に信玄が死に、武田軍はこのあたり一帯のあらゆる地から撤兵していたのですが、おそらく勝頼が新当主となって攻めの姿勢に出たのでしょう」
「家康様は信玄の死を確信しているのですか?」
「二週目というのもありますが、ちゃんと念のため確認はしましたよ? 当時武田領であった長篠城を攻めたり近隣の村を焼いたり。抵抗がなかったのでおそらくまちがいないでしょう」
寧々子の中の徳川家康は、姉川の戦時話したときの少々かわいい男性というイメージがついていた。
その家康の口から信長のような焼き討ちという単語が出てきて一瞬「盟友だわ」と内心で呟く。
「殿! なぜかような場所に……その者は?」
「ああ、康政。ちょうどよかった。この者を戦へ入れてくれるかな」
「何者ですか?」
「織田家の者で正式に参ったわけではなくお忍びなので他の者には公言しないように。出遅れたうちの者として入れておいてくれる?」
「はっ、殿がそうおっしゃるなら」
多少の疑問は感じるものの主の命令ならば、と聞いてくれるらしい。
いい人、榊原康政さん。
康政はそのまま寧々子に歩み寄ってくる。
「某は榊原康政と申す。そなたは?」
「存じております。姉川ではお世話になりました、治と申します」
「治……姉川……忠勝が言っていた兵か!? 一人で朝倉軍を翻弄していたという!?」
どうやら知らぬ間に忠勝殿に噂をされているようだ。
本多忠勝、口数が少ない上にすごいガン飛ばしをしてくる人であったので他人とあまり話をしないのかと思っていたけどそうでもない様子。
「そうなんだよ。さすがに大勝利とまではいかないだろうけど、武田を追い返すぐらいはできるんじゃないかって。そしてここで見たことをぜひ盟友・信長殿へ報告してもらおうかと思ってね。信長殿はああ見えて結構戦には慎重なお方だからね」
「承知。あの忠勝に一目置かれるその武勇、ぜひ拝見仕りたく!」
「お、お手柔らかに」
ものすごい期待の眼差しを受けながら寧々子はいざ、遠江の地へ出陣した。
遠江・高天神城は北に小笠山と呼ばれる大きくはない山があり、城の面積もさほど多くない。
かつての金ヶ崎城のような砦の役割を果たすような城である。
山が急斜面なので登ることができず城の周辺から攻めることができないため石垣はなく、代わりに土塁と堀で囲まれている。
「敵が攻め入るならば正面の大手門からしかできぬため戦はしやすい。しかし、武田は多くの戦をくぐった精鋭揃いなために純粋に戦経験で劣る我らが力負けしているのだ」
「なるほど。ここでは小細工は効かないというわけですね。ほんとに野戦だ」
「左様。故にお手並み拝見の戦にもってこいだ」
なるほどなるほど。
つまり、さっさといって俺にもその腕前見せろ、ってことですかね。
めちゃくちゃキラキラした目をするじゃないですか、康政さん。
さすがは後に徳川四天王として数えられる武勇を持つ男、やはり強きものには興味津々な様子であった。
寧々子は家康からもらった槍を背から手に持ち替える。
いつもは一般兵が使う量産品の槍を使用しているため、やはり手への馴染み具合が違うが、わりにしっくりくる感じがしている。
“ これ、寧々子殿のために用意したものですのであなたにあげます。あれだけの腕前があるのに量産品ではもったいないです ”
光栄なことにあの徳川家康がいつのまにか私のために用意してくれたようだ。
地位の高い人間が事情を知っているということのありがたみを受けた気がする。
「それでは参ります」
寧々子は槍を構えて借り物の馬に乗って高天神城の本丸を出る。
大手門へはあっという間に着き、門の外は激戦区となっているのがすぐにわかった。
大手門を大きく飛び出した寧々子はそのまま馬上から槍を大きく振るって武田軍を薙ぎ払う。
突然の寧々子の登場に徳川軍も武田軍も混乱して呆然としてしまう。
その隙を寧々子は見逃すことはなく、次々に武田軍を打ち倒していった。
戦場に突如竜巻でもできたかの如く次々に、宙に体が打ち上げられ死体の山は築かれていく。
もはや並の兵士と同じと言う実力ではない。
見ていた榊原康政でさえ、驚いて目を剥いている。
「こんな猛者が織田軍にはいたのか……」
寧々子の知らぬところでまた彼女の噂は広がりを見せた。
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