第十二話 情報源
いよいよですね~!
まだ秘匿情報だったものを知っているという未来人の強みを活かしていくぞ~!
時は天正三年。
武田家と織田・徳川家は押しては引いての繰り返しであったが、ついにこの年決着をつけることとなる。
事の発端は秘匿されている武田信玄の死の後、武田家を継いだ子の勝頼が徳川家康の領地である遠江・三河を手に入れようと三河へ侵攻を開始したことである。
上洛のスタイルから本国・甲斐への撤退後、大人しかった武田家が不審な動きを見せたことを織田信長が見逃すはずはなかった。
岐阜城にてその知らせを受けた信長は家臣たちを前に、口元をニヤリと歪ませる。
「武田が動いたか」
「佐久間殿がうまく事を運べたようです!」
「重畳」
「お館様、では……!」
「うむ。みな、戦の支度をせよ!」
「ハハッ!」
信長の一声にみなは一斉に支度を始める。
部屋を去ろうとする家臣たちの中で、信長は明智光秀と羽柴秀吉を呼び止める。
「光秀、そなたに本隊の鉄砲隊の指揮を命じる。鉄砲の管理も一任しよう」
「はっ、お任せください」
この時点での明智光秀は、それまでの室町幕府将軍・足利義昭と織田信長の中継ぎ役から正式な織田家家臣となっている。
秀吉や池田勝正同様、金ヶ崎撤退戦において殿を見事勤めあげた功績もあって信長に気に入られ、信長直々にスカウトしたようだ。
「サル、そちが持ってきた情報、当たっている可能性が高いな」
「信じていただきありがとうございます! わしではなく、半兵衛が掴んできた情報なんで褒美は半兵衛に」
「すべては戦で勝利してからだ」
「はい!」
秀吉が信長に流したという情報。
それは武田信玄の死である。
この時期、まだ武田家の秘匿とされていた情報をなぜ秀吉が、もとい半兵衛が持っていたかというと――。
岐阜城の一角。
羽柴秀吉に与えられた武家屋敷の一室にてその情報を持っていた主は静かに茶をすすっていた。
「ふぅ~、今日もお茶がおいしいわね」
「……なんで僕がこんなことを」
「あら。あなたは旦那様の小姓なのだから、私の小姓でもあるのよ?」
「ジャ〇アンかよ。てかなんで姉さんまでここにいるの」
「それはもちろん、いち早く戦の情報を聞くためよ」
「ほんとに戦に出るの!?」
「今更よ。半兵衛と何度も死地を超えてきたのよ?」
いくら武術経験が前世であるからとはいえ、まさか本当に戦に参加しているとは思っていなかった石田佐吉もとい三吉は信じられないものを見る目で姉を見る。
見つめられた寧々子は視線を意にも留めず茶をすすり続ける。
すると聞き慣れた足音が複数聞こえてくる。
「ねね~、お主はいつでも落ち着いているのぅ」
「おかえりなさいませ、旦那様。信長様からのお話はいかがでしたか?」
「うむ。武田家と本格的に開戦のようじゃ。家康殿の応援に行く形で参加する」
「分かりました。では長浜城のことはお任せください」
「いつもすまんのう。助かるぞ」
そういいながら秀吉は寧々子にひしっと抱きつき、軽く口づけを交わす。
目の前にそれを見せられた三吉は頬を染め、秀吉の後ろにいた人物はフッと軽く笑った。
「仲がよろしいようでよかったです、お二人」
「半兵衛もおかえりなさい」
「おねねさま、このあと少々お時間いいですか? ついでに佐吉殿も」
「ついでですか……。僕は秀吉様の見張りをせねばならないのですがってあ! もういない!」
先程まで寧々子に抱きついていた秀吉が忽然と姿を消していた。
三吉は小姓となってからしばらくして、秀吉は寧々子との関係の良し悪しなどとは別に単純に仕事から逃げる癖があることを思い知った。
知るまでに時間がかかっているのは三吉の人がいいことの表れである。
「今は見逃して、この顔ぶれで秘密談義といきましょう」
「戦が始まると言うことは、信長様は情報を信じたのね?」
「そのようです。おかげで事がうまく運びました。信長の家臣・佐久間信盛の暗躍によって武田は無事動いてくれました」
状況を説明するとこうだ。
今から一年前。
寧々子と三吉が未来人であることを知った半兵衛は、二人が長篠の戦いがこれから怒るであろうことを知っていたことを受け、情報を聞き出す。
三吉は歴史に明るくないので大した情報はなかったのだが、寧々子は当然それなりに持っていた。
まず一つめは織田家に限らず、諸侯にとって大きな情報である武田信玄の死。
この情報は秘匿されており、武田家以外未だ誰も知らない。
疑いを持って行動を起こしている者もいるようだが、それでもみな確信はない。
そこが未来人たる強みだ。
二つ目は寧々子の時代に伝わっている長篠の戦いにおける織田・徳川連合軍勝利の鍵。
有名な織田の鉄砲隊。
対武田騎馬隊対策・馬防柵。
そして、今回信長や半兵衛の口から出ている織田家家臣・佐久間信盛の裏切り工作。
三つ目は大まかで、おもに歴史系のアクションゲームでやったもので確証はないもの。
敵・味方の陣形と大まかな流れである。
最後は曖昧な記憶であるものの、そこは軍師たる半兵衛の機転ですぐに策がたてられた。
「あのときの半兵衛の行動が素早かったおかげでこうしてうまくいったのです」
「それもこれもあなたが未来人であることが功を奏しました。打ち明けてくれたことに感謝です。情報が信じられるので確実な策をたてられます」
私の知る世界には能力者なんていませんけどね。
などという言葉は茶と共に飲み込む。
読了ありがとうございます。
ブクマ・ptよろしくお願いします!
次は戦に入れるだろうか。。。




