第九話 束の間の平穏 忘れていたこと
更新お待たせしました。
次話まで、寧々子が先送りにして忘れていたことの整理回になりますね!
浮気騒動が落ち着き、痛い目をみた秀吉はしばらく女遊びをしなくなったため、長浜城にしばしの平穏が訪れる。
その間、秀吉は領内の安定を図り、先を見据えての人材発掘のための政策を施した。
説明が遅れたが、秀吉は姉川の戦い以降、改名をしている。
それまでの木下藤吉郎から織田家臣の丹羽長秀及び柴田勝家のそれぞれの名前を頂戴し、羽柴秀吉と改めている。
それには織田の古参家臣である二人に未だ快く思われていないことから、関係の改善を図るための狙いがあったともいわれる。
ひと時の平穏な時が流れている長浜城であるが、ここで寧々子はすっかり忘れていた事案と向き合うことになる。
「失礼いたします、竹中半兵衛殿がいらしております」
「おう、半兵衛か。通せ」
廊下に控えていた秀吉の小姓・大谷平馬が中にいる秀吉へと来客の取次ぎをする。
長浜城の天守にて秀吉は寧々子と共に政務をしていた。
書面へ向けていた顔を上げ、入ってくる半兵衛に二人は向き直る。
「政務中にすみません。用事というわけではなく、おねねさまを呼ぶ者がいたので呼びに来た次第なのです。町の者らしく、ここまで上がれないでしょうから」
「おお、そうか。ねねは民にも慕われていてわしは鼻が高いのう」
「あなたがこれまで女目当て以外に下に行かないから私が見ていたのですよ?」
「すまんすまん。今度共に視察も兼ねて城下町へ買い物に行こう」
「はい」
騒動前とは打って変わってすっかり前と同じ、いやそれ以上の仲の良さを見せつける二人。
にこやかな笑顔で秀吉に見送られ、二人は天守を出る。
半兵衛が先導して歩き、目的の場所まで案内してもらう。
案内された先は寧々子の部屋であった。
「半兵衛、来客はもう私の部屋に通しているのですか?」
「いえ、これからですよ」
「それなら私、その者がいるところまで出向きますので呼ばなくても」
「いえ、それは大丈夫です。もう来ています」
矛盾した返事に寧々子の頭はハテナばかりが浮かぶ。
まったく察する気配のない寧々子に半兵衛は呆れたため息をついて寧々子の部屋の戸を開ける。
中に二人が入り、寧々子にいつもの席まで行くように促して対面の位置へと座る半兵衛。
「僕が、あなたに用があるのです」
「え? それなら直接そういえばよかったのでは?」
「そう思ったのですが、お遊びとはいえこの前の一件もありますし、石田佐吉があなたの浮気相手ではという噂もお遊びの一件の前に立ったばかりでしょう? 秀吉様からめちゃくちゃお悩み相談された身としては無難な道を選びたかったのです」
「なんだか苦労ばかりかけてすまないわね。それで、話って?」
「それも心当たり浮かびませんか?」
浮かばんな。
顔に答えが出ている寧々子にまたも半兵衛はため息をつく。
「金ヶ崎で、あなたが僕に謎の忠告を残した関係の件です」
ああ! すっかり忘れていた。
ポンと手を叩き、思い出す寧々子。
しかしそれと同時に寧々子も半兵衛に言いたいことがあったことを思い出す。
「そうだ。私も家康様の件、あなたに聞きたいのでした」
「一向に呼び出される気配がないので怒ってはいないのだろうと思っていました」
「そんなことはありません。さらりと私が戦に出ていることをバラしたことはとくに。しかしあの方が神様であることを教えずに接触させたのもなんですか!?」
「隠し事はお互い様ですよ。 ……あなたを呼ぶ前に人払いは済ませました。今日こそはじっくりお話しましょうか」
そういって不敵な笑みを浮かべて迫る半兵衛。
いつもはたじろぐ寧々子だが、今日は寧々子にも反撃の手札を持ち合わせているので屈しはしない。
寧々子は深呼吸をして冷静さを保つと、話を始めた。
「ではとりあえず時系列的に、先に発生した半兵衛に対する一件から話しましょうか」
「よろしくお願いいたします」
ねねさまとの入れ替わりを見られた上に、ねねさまが接触して会話したことによってもはや言い逃れはできないだろうということで、寧々子はこれまで半兵衛に隠していたこと全てを話した。
自分が未来人であること。
前世で死んだところを、ねねさまに召喚されたこと。
ねねさまの目的を果たすべく、ねねに成り代わっていたこと。
自分自身に能力はなく、ねねが能力者であること。
ねねは一度迎えた歴史を変えたくてこんなことをしたこと。
金ヶ崎では入れ替わりがあったこと。
などなどをつらつらと述べた。
半兵衛は幾度か面食らうかのような表情をしたものの、茶化すことはなく真剣な表情で聞いてくれた。
「――信じがたい話ですが、それを言ったら僕やねねさまのような能力者がいること自体、通常は信じられないのであり得るのでしょう。あと時々あなたが言う謎の単語はなにかと思っていましたが、未来人なら合点がいきます」
「私の不注意が信用を得るきっかけになるのなら失言も有効活用されたわ」
「このこと、家康殿は無論?」
「知っていましたね。私自身の名前も知っていた」
「名前……そうか、別人なんですよね。本当はなんと?」
半兵衛に本名を聞かれ、途端に照れ始める寧々子。
その態度に半兵衛は「なんだ急に……」と言わんばかりに白い目を向ける。
「ずっと好きだった武将にまさか本名を呼ばれる日がくるとは、と少し照れくさくて」
「おや。僕を好いていたのですか。それで初対面のときにあのようなことを言い出していたのですね。死後、誰かにそう思っていただける人になれて僕は少し幸せ者ですね。して?」
「はい、本名は寧々子と申します」
一拍の間。
「あまり変わりませんね」
「運命ですよね、きっと」
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