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35. くるくるトンカツ


さて、気を取り直して本日のメインに取り掛かる。

本日は自分で決めておいてなんだが、ちょっと手間がかかるのだ。


豚バラ薄切りを並べて、大葉をひいてから隅にたらこをのせていく。

そして、たらこが溢れないようにくるくると巻く。

ロールかつというやつだ。

ひたすら単純作業。

くるくる、くるくる、くるくる、くるくる…


大葉たらこロールが終わったら、次はスライスチーズとエリンギだ。

エリンギは縦切にしてなるべく太さを均等に。笠の部分は細切りにして一緒に巻いてしまう。

くるくる、くるくる、くるくる、くるくる…


あぁ、ちょっと面倒とか思ってしまう、私の馬鹿!



******




『メニューはこれだけ!


 本日の店主の気まぐれご飯


 くるくるトンカツ2種(大葉&たらことエリンギ&チーズ)

 たまご巾着の小鉢

 ご飯とわかめのお味噌汁付

 ※ご飯大盛り、おかわり無料


 900円』



「よいしょ、と」


ミニ黒板を持ち上げて外に出すだけなのに、掛け声を無意識に出してしまう三十路超え女子っす。

さぁて、今日も頑張りますよ!




******



「お待たせしましたー」


「あ、いらっしゃいませー!空いてるお席どうぞ!」



お客様のテーブルにランチを届けて、見込みよりもか客入りが早い事にちょっと慌てる。

ちょうど今来店したお一人様でカウンター席は満席、テーブル席は…、片方のグループがそろそろお食事終わりそう…かな?

いつもはもう少し来店の間隔が開くんだけどなぁ…

こんな日に限ってカツにしてしまったわたしのタイミングの悪さよ!


薄切り肉のロールかつなので、揚げ時間としては厚切り肉より速いのが救いだ。

パタパタと客席の合間をすり抜け厨房に戻り、すぐさま揚げる作業に入る。


小麦粉たまごパン粉は厨房にセッティング済なので、サクサクっとつけて油の中へ投入。

ジュワワワ…と音をたてて黄金色にダイブするロールかつ達。

揚げている間にお皿に千切りキャベツをセッティングし、キツネ色に浮いたものから取り出していく。

大体15センチ程の棒状になっているロールかつを、真ん中からサクッと音を立てながら斜めに二等分する。

断面からジュワっと肉汁が浮かぶが、薄切り肉を重ねているので厚切りトンカツの切りたて程肉汁パワーはないんだよね。

…なんだ肉汁パワーって。

自分で考えてたくせにアホみたいなワード…!


断面は大葉とたらこロールの方が鮮やかだ。

大葉の緑とたらこのピンクが美味しそう。

見た目は劣るけどエリンギとチーズのロールも良い具合。

チーズがとろけてソースとの相性抜群ですぜ!

セッティングしておいたキャベツの千切りに立てかけるように盛り付けて、と。

汁多めのたまご巾着の小鉢、シンプルなわかめの味噌汁とご飯。


この厨房にも慣れて、流れるように複数並列して盛り付けも出来るようになりました。

ただ、運ぶのは一食ずつなんだけどね…

お店広くないし、両手持ちは危険なんだよね。



「お待たせ致しました!」

「おお、うまそ!」

「ごゆっくり!」


「お会計お願いしまーす」

「はーい!少々お待ちくださーい」


とりあえずは席にお料理お届けを優先するぜ!あと二食!

お会計のお客様、ちょっと待っててくださーい!すぐ行くよ!


******



カラカラカラ

「ありがとうございました!」




ふぅー……



何だったの、何かこんな小さいお店なのにすごく忙しかった。

いや、まだお客様いるんたけど、この一息がつけなかったんだよね。



「店長さん、お疲れです?」

「いやいや全然!今ちゃんと矢崎さんのカツ揚げてるんで、待っててくださいね」

「はーい」



にこにこしながらカウンター席に座っている矢崎さんは、先程の怒濤のタイミングが終わる頃に来店した。

ちなみにポテサラ君も来ている。

ポテサラ君は矢崎さんよりも早く来店していたので、お一人様だったけどカウンター席が空いてなかったので、テーブル席に相席だ。すでに料理を食べ始めている。


あ、カツいいな。



サクッ

ロールカツを二分する音に、バッと顔を厨房側へ寄せる矢崎さん。

…お待たせしております。

素直な空腹アピールに、思わず笑ってしまう。



「もう出来ますからねー」

「はい!」



相変わらずの大盛りご飯とともに矢崎さんの前に料理を置く。



「お待たせ致しました」

「待ってました!いただきます!」



味噌汁から始まり、大葉とたらこロールに早速手を付ける。


サクッ



「んんんん〜!」



良い音を立ててカツを一口。

右手にお箸、左手は頬に当ててその反応。

作り手冥利に尽きます。



カラカラカラ

「お姉さ〜ん、大盛り3つ〜」

「はーい、空いてるお席にどうぞ〜」



矢崎さんの微笑ましい反応を見ていたら、いつもの三人組がご来店。

ほっこりしてる場合じゃないや、カツ揚げなきゃ。




「はい、お待たせしました」

「かつ!」

「肉!」

「…たまご巾着」


順番にお料理を運んでるのに、最初に運んだメガネ君のランチを覗き込むミート兄貴とチベスナ君。

…すぐ持ってくるからね。

相変わらず三人組は賑やかである。



「お会計お願いします」



三人組に料理を運び終わるのを待っててくれたのか、ポテサラ君から声がかかる。

この子良い子だわぁ…。

渡された千円に、100円のお釣りを渡す。



「いつもありがとうございます」

「うまかったです。カツもだけど…たまごのやつ」

「お口に合って良かったです」

「あれだけで飯食えますね」

「ありがとうございます」



最近帰るときにこうしてちょこっと感想くれるのが嬉しい。

そしてポテサラ君は最近、あだ名の由来のポテトサラダもだけど、煮物系の茶色いおかずが好きなんだろうとも分かってきた。



「また来ます」

「はい!またのお越しをお待ちしてます!

 ありがとうございました!」


カラカラカラと引き戸を開ける背中に声をかけて見送る。




「あいつアイのライバルじゃね?」

「何の?」

「…恋の」

「よし、その設定にしよう面白い」

「三神、店長さんに迷惑かけんなよ」

「…かけんなよ三神」

「え、俺だけなん?」



厨房に戻ると、コソコソと声を潜めている“つもり”の三人組の会話が聞こえる。

中学生のノリについ笑ってしまうと、同じく、その会話が聞こえているらしい矢崎さんと目が合い二人でクスクスと笑ってしまった。



今日も春眠亭は平和です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎話美味しそうな料理でワクワクします 魂?的存在の方達との関わりも(料理の方も)私としては妖怪アパートに近しいニュアンスで楽しく思います 作り方が描写されてる面も作ってみたいなと思えいいと…
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