2. 厚切り豚バラ香味ネギだれ
さて、記念すべき初日を迎えるに当たり、何にしようか考えに考えました。
気まぐれじゃないじゃん!と突っ込まれそうだけど、気まぐれって言葉使いたいだけだったのでお気になさらず。
初日はドドンとインパクトあるものが良いなー。
お昼に食べたものはその日のうちに消費されそうだし、いわゆる0カロリー理論(尊敬してるよ伊○さん!)が適用されそうだからカロリーも気にしないで食べたいものを出してしまおう。
と、いう深い深ーい考察のもと決めたご飯はこちら!
『メニューはこれだけ!
本日の店主の気まぐれご飯
厚切り豚バラ香味ネギだれ
ご飯とお豆腐のお味噌汁付
900円
にんにくきいてます』
久々に触ったチョークで丁寧に書いて、と。
オープン初日は平日だし、立地的には男性のお客様が多そうだった。
近くに建設会社や土木会社もあり、良い匂いに誘われて来てくれないかなと。
まぉ事前にチラシも持ち込んで、「お願いします!」と頭も下げてきたけれど。
歳を重ねると、なかなか大胆な行動もできるようになるものだ。
昔の自分なら、出来なかっただろうなぁ…
オープンは11時、クローズは15時。
居酒屋さんが18時からだから、きちんと後片付けしてお渡し出来るようにしなきゃ!
さぁもうすぐ11時。
そろそろお気に入りの暖簾をかけて、黒板出して…
気合入れていくぞー!!
おー!
******
「いらっしゃいませー!
お好きな席にどうぞー!」
意外や意外。
思っていたよりお客様が来てくださる。
12時過ぎると四人掛テーブル2つは早速近くの会社のサラリーマンと思しき方々で埋まってしまった。
「うちはメニュー一種類だけですけど、大丈夫ですか?」
念の為そう声をかけるが、今のところ問題ないみたいだ。
「すっごい腹減る匂いがしてさぁ、入っちゃったよ」
お冷に口をつけながら四人掛テーブルに座るお客様に言われ、周りもうんうんと頷く様子を見て、狙い通り!なんてにやけてしまう。
「すぐご用意するのでお待ちください」
早くお出ししなくては!
まぁメニューは一つしかないし、下準備もバッチリだからね!
ガツンとにんにく効かせるぜー!
薄くスライスしたにんにくをごま油で香り出し。
オリジナルで仕込んでおいたにんにくと生姜入り香味だれ(多分これが“腹減る匂い”のはず)とザクザクみじん切りの長ネギも投入。ネギに火が通りさらに香ばしくなる。
これで香味ネギだれはバッチリ。
脂の甘さとお肉のギュッかつホロリとした食感を楽しんでもらう為に、お肉の厚みは2.5cm程。
この豚バラにネギたっぷりの香味だれをかけて。
添えるのは勿論シャキシャキ甘いキャベツの千切り。
お手製ゴロゴロポテトサラダもワンプレートに乗せて、
お好みでポテサラにも香味ネギダレを絡ませても良し!
メインにパンチを効かせすぎたから、お味噌汁はあえての王道。
お豆腐さ!
土鍋で炊いた白米もツヤツヤ。
あぁ…我ながら美味しそう…。
小皿には蛇腹に切ったきゅうりの浅漬けを少々。
短時間で味がしみしみ、食感も良い。
「お待たせしました!」
一度に全て運べないからテーブルまで行ったりきたり。
先にお届けしたお客様から食べ始めている様子が近くを通ると見れてこれはこれでラッキー。
どうかな…?
美味しいはずなんですけど…?
「あー…うまい」
「味噌汁しみるー」
「肉分厚いなぁ、あ、うまっ」
「おっ、ポテサラついてる!あー…ゴロゴロタイプかぁ…」
「すげぇ白飯が進む、おかわりできる?」
と、まぁ口々に感想いただきました。
「おかわりはお一人一回までなら無料ですよー」
一気に箸をすすめてご飯を掻き込んでる姿に一安心。
ポテサラがアンチゴロゴロ派の方がいたようだけど、その人のお皿をこっそり厨房から覗き見たらまず先にポテサラがなくなっていた。
‥‥嫌いなものは先に食べるタイプかな?
その後も近所に住んでるというおじいちゃんがきて、お肉が柔らかいと喜んで食べてくれたり、
四人掛テーブルのお客様がかえったタイミングで地元の友達が食べに来てくれたり…
あとは中年のお一人様が意外と多かったかな。カウンター席は例のご予約席を除いて満席になるタイミングもあったりで少しビックリ。
予想よりも忙しかったせいか、多めに用意していた豚バラ肉があと一食分になってしまった時点で時間は早いが閉店することにした。
万が一複数でお客様が来てくれた場合、一人分しかないなんてさすがに申し訳ないもんね。
人がきれたタイミングで表に出て暖簾をしまう。
黒板を裏返し、
『本日売り切れ ありがとうございました』
と書いて閉店時間になるまで出しておこう。
チョークを持った手のまま外でグッと伸びをする。
清々しい達成感が自分を満たしているのが分かった。
ゆっくり後片付けしても時間に余裕があるし、初日は素晴らしかった!
私の動き方に反省点はあれど、よっぽどお待たせすることも無くお店を回せたし一安心だ。
「よし、後片付けするかー」
踵を返しお店に入りながら独り言。
営業が終わったと思うと途端に気が抜けてしまう。
が、視界に入った光景に驚いてヒュッと息を吸込む自分の音がした。
だって、最後のお客様を見送って暖簾を片したのに。
例の“ご予約席”には見知らぬ人が座っていたのだ。