火星旅行 ロケット帰還
世界から選ばれた5人は間もなく火星探査に出発する
TVのインタビュー
「リーダー。出発前のお気持ちはいかがですか。」
「全世界の代表として、なるべく多くの情報を得たいと思っています。」
管理基地にはカチカチの緊張がはしっている
ロケットには乗員が次々入って行き、最後にリーダーが手を振って入った
世界中の人々が画面にくぎ付けで応援している
5 4 3 2 1 0 発射!
閃光がはしり煙が舞い上がる
バァァァァァァァァン ゴォォォーッ
「成功だ!」
打ち上げは無事成功した
管理基地では皆が握手し、だき合った
数十分してロケットも安定してきた
乗員どうしも笑顔でグータッチだ
打ち上げは完全に成功、ここまでは何のミスも見受けられない
しかし操縦装置を確認すると、思わぬトラブルが発覚した
実は食糧庫を80%損失していたのだ
今からスケジュールは変えられない
5人は食糧のほとんど無いまま数週間の旅に出るのだ
リーダーは全員に食糧紛失の事実を伝え、かなり食事制限が必要だと告げる
「こうなった以上は仕方ない、なるべく少ない食糧でやりくりするしかない。」
「まあダイエットになっていいじゃないか。」
始めのうちは皆わりと余裕だ
しかし、1週間くらいたつと、だんだんと元気がなくなり、いらいらしてくるようになった
「くうーっ、腹減ったな。今日は朝からパン一切れだ。何でもいいから食いたいな。」
皆の我慢も限界になってきた
そんな時だ
「あれ、リーダー。こんなとこで何してるんですか。」
実は食糧を皆に配っていたリーダーが、陰にかくれて、他の人より多く食糧を取っていたのだ
「コノヤロー!ばかにしやがって。」
取っ組み合いのけんかがはじまる
「いや、1回だけなんだ。どうしても腹がすいて。すまなかった。」
「すまなかったですむかっ!」
リーダーは突き飛ばされ、操縦装置にぶち当たり、火花が散って真っ暗に、
しばらくして明かりは点いた
だが事態はそれだけではない、落ち着いて操縦装置を確認すると、ロケットの進行方向が変わっているのだ
「どうしよう。」
直そうとするがなおらない
このまま行くと、まだほとんど情報の無い小惑星に突っ込んでいくことになる
「もうだめだ。」
ロケットは小惑星の重力圏内に入った
「ここで砕け散るのか。」
「突っ込むぞ!」 ドォーッ、ガチャガチャガチャ(衝撃と火花)
・・・・・
しばらくして、「あれ意識があるぞ。」
ロケットは小惑星への激突は免れ、軟着陸できたのだ
「すごい、生きているだけでもラッキーだ。」
落ち着いてから、窓の外を見てみると、、、そこには思わぬ景色が
「す、すごい!」
着陸したところは、地球にそっくりなのだ
植物らしきものが生えていて、池のようなものもある
危険な細菌やウイルスもないし、安全な植物以外の生物はいない
これは、測定値から見ると外に出ても大丈夫そうだ
「何があるか分からない。もっと調査が必要だ。」
リーダーは止めるが、はらぺこの乗員はとりつかれたように扉を開け表に出てしまう
「もしかしたら食べられるものがあるかもしれない。」
リーダー以外の全員が表に出てしまい、食べ物を探し始める
「全く地球と変わらない
絶対に何か食糧になるものがあるはずだ。」
惑星のひんやりとした森のなかをゆっくり探し歩く
樹木は地球の物そっくりだ
小川も流れている
しかし動物に該当するものは見受けられない
10分ほど歩いたときだ
ブドウのようなものを発見!
1つを採取した
測定器で毒性を調べると、何も問題ないようだ
乗員の1人が恐る恐る口をつける
「うまい、地球のブドウとかわらない。全く問題なさそうだ。」
他の乗員も興奮しその物体を食べだす
「これはうまい、助かった。
持てるだけ持って、ロケットに戻ろう。」
ロケットではリーダーが操縦装置の修理を徹夜で行っていた
このロケットはかなり角度がついていても発射可能になっている
操縦装置さえ修理できれば、地球に戻れるかもしれない
採取した物体を山のようにかかえた4人の乗員がロケットに戻ってきた
リーダーは4人が持ってきたブドウのような物体を不審そうに見る
「これは食べてうまいし全く問題無かった。」
戻ってきた乗員の顔はあかるい
勧められリーダーも物体に口をつける
「本当だうまい!これさえあれば、食糧の問題は全くなさそうだ。」
全員が笑顔になる
出発以来のグータッチだ
リーダーの努力もあって操縦装置はひとまず使える状態になった
食糧庫はブドウのような物体でいっぱいだ
「発射しよう、これなら地球に戻れるかもしれない。」
5人が定位置について発射!
発射は無事に成功した
操縦装置も正常に動いている
ロケットは地球に向かっている
撮影装置も修復された
全員の元気そうな映像が地球に送られる
地球ではもうだめだと諦められていたので、全員の元気そうな映像に盛り上がっている
「やった、奇跡だ!」
全員無事に地球に帰って来られそうだ
帰りの発射から2日目になった
ロケット内の画像の送信状況は良好
乗員は皆、元気そうだ
「あれっ、気のせいかリーダーって発射の時より少し太ってないか。」
「あまり運動しないから、太り気味になるのかもしれない。」
数時間後
明らかに乗員が皆太っている
「こちら地球の管理基地です。リーダー、皆さん食糧の取りすぎということはないですか。」
「大丈夫、ぐうっ」
そのあと見る見るうちに、乗員の体形に異変が発生
「リーダー、乗員に何か異常はないですか?」
「。。。ガアッ」
「おい、たいへんだ。乗員に異常がみられるぞ。病気かもしれない。」
「ガー、ギャー」
「顔まで変わってしまった、もう会話が成り立たないぞ。」
乗員の異変はどんどん進んで行く
「怪獣だ、乗員は怪獣になってしまった。
どうすればいいんだ。元に戻らないのか。」
「落ち着け。時間がたてば元にもどるだろう。」
しかし、期待とは逆に乗員の怪獣化はより進んでいるようだ
「グワーッ、グオー、グルグル」
二週間経ち、管理基地での会議は怪獣対策に話が変わってきた
「あんなのが地球に来たらどうするんだ。」
「会話は全く成り立たないし、凶暴なようだ。
彼らには悪いがミサイルで撃墜するしかない。」
地球から3発の撃墜ミサイルが発射された ドォンドォンドォンゴォォォーッ
しかし、宇宙空間のまとにミサイルを当てるなど簡単な話ではない
次々と外れていく撃墜ミサイル ドキューン バアァァァン バアァァァン
3発とも少しずつ外れてしまった、ロケットはもうすぐ地球に戻ってくる
人類に残された道は、ロケットの帰還を待つだけだ
管理基地から地球全体へ非常事態宣言が発令
ロケットの着陸予定地点の周りには数十台の戦車と軍隊が配備された
兵士は火砲の狙いを定めて待ち受ける
現場の映像はロケットの発射の時よりさらに多くの注目を浴びている
ロケットは、ほぼ間違いなく予定位置に着陸しそうだ
空にはロケットらしき青い流れ星が確認された
ドォォォーッ、逆噴射して、白煙を舞い上げて、ロケットが戻ってきた 着陸!
ロケットの帰還は成功だ
やがて煙が止んでロケットの姿がくっきりと現れてきた
炎は消え、静まり返った
・・・・・
しばらくして扉が開く ガタッ