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世の中は不平等である。

生まれつきなにかしら才能を持って生まれてくる者もいれば、なにも才能を持たず、また努力してもなにも得られない者もいる。


俺、水無月瑛太は後者だ。不器用で、友達いなくて、勉強できなくて、コミュ障で⋯⋯。

まぁ唯一親が昔から通わせてくれていた剣道はそこそこできる方だと思っているが。


神様は俺になにも与えちゃくれなかった。


ああ、神様を恨みたい⋯⋯。


「おい瑛太」


だが嘆いた所でなにか変わるものでもない。

人は生まれ持ってきたものを背負って生きていかなければならないのだ。


「おい瑛太!聞いてんのか!」


俺の数少ない唯一の友達、聡が俺の前を振り向きながら歩き、怒り気味に俺に向かって言った。


聡は、運動が得意だが、バカ。昔のマンガに出てくる熱血教師みたいな感じの性格のやつだ。もちろん短気。


「お、おう。わるいわるい。で、なんだ?」


世の中の不平等さを語っていたせいで、聡の話を全く聞いていなかった。


「で? じゃねーよ!せっかく俺が話してたってのに!」


「だからわるかったって。次からは気をつけるようにするから」


俺はいつまでもキレている聡をなぐさめるように謝った。


「ほんとか?じゃあいいけどよ。それで放課後どっか寄ってかないか?」


さっき話してたのは放課後デートの誘いだったのか。


「いや、わるい。今日はそのまま家に帰る」


今日は体育の授業があり、運動があまり得意ではない俺にとっては、体力的に放課後に寄り道する余裕よゆうはない。

一方で、運動が得意な聡は、まだまだ体力は有り余っているようだった。


「まじかよ⋯⋯。まぁ瑛太がそういうなら仕方ないな!」


聡は一度落ち込んだ表情を見せたが、すぐさまいつもの明るい表情に変わった。

こいつほんとにポジティブ思考だな。


友達が少ない俺にとっては、なぜこんな陽キャが俺にくっつくのかが理解できない。

別にこいつに限ってそんな深い意味は無いだろうけど。普段からあまりはしゃがない俺からしたら話してるだけで結構疲れる。



そんなことを考えていると、いつも聡と別れる場所が見えてきた。


「じゃあな聡。また明日」


いつものように別れの挨拶を交わした。

聡はなんだか悲しそうな顔をしてたが、構わず背を向けた。

あとになってみれば少しかわいそうかと思ったが、仕方ないとも思った。


しばらく歩いていると、自分の家が見えてきた。俺の家は、聡と別れてから10分ちょっとの所にある。大きめの丘の向かいにある、ごく普通の一軒家だ。


「ただいまー」


返事がない。相変わらずこの家は声が響かない。今のただいまの声もリビングにいるであろう母親には聞こえてないだろう。


「あら。帰ったのね」


俺がドアを閉めて靴を脱いでいると、物音を聞きつけた母が出てきた。


「⋯⋯ああ。ただいま」




疲れきった顔で母に挨拶をしたあと、俺は2階にある自分の部屋まで行き、ベッドに倒れ込んだ。


今なら数秒もあったら眠れそうだ。

最近寝付きが悪い俺にとったら、夜にこの睡魔が襲ってきてくれたらと心の底から思う。


そんなことを思っているうちに、俺は睡魔に敗北し、深い睡眠に陥った。



「──助けて」


「──?」


「──私を⋯⋯、この国を救って」


「 ⋯⋯誰だ?」


まだ夢か現実かも定かではない中、俺は謎の女性の声に助けを求められていた。


「──私は、エメルダ国のカミラ。あなたに救ってほしいの」


「──どういうことだ?救ってほしいって⋯⋯」


「──あなたはエメルダを救う力がある」


「──待ってくれ。救ってくれってどういう──」


「──時間がないの。今からエメルダ国への転生の仕方を教えるから覚えて」


俺は再度どういうことかと聞こうとした所で、話を遮られた。

どうやらこの声の主はカミラという者で、異世界人だと推測する。


「──いい?転生の仕方なんだけど、あなたの家の向かいにある丘の上まで登ってそこにある木の所に行って願いながら待っているだけでいいわ」


そんな話信じられるかと、ツッコミどころはあるが、今は話を聞いておこう。


「──もう一度言っておくわ。あなたに救ってほしいの。ただ、こっちの世界に来るか来ないかはあなたの決断に任せるわ」


意識がだんだんと覚醒しだし、カミラの声が遠くなっていく。


「──明日の夜までに決断して」


そこでカミラの声は途絶えた。


「──」


「⋯⋯ん」


家に帰ってきてから既に3時間以上もの時間が経過していた。

俺は目が覚め、さっきの出来事が夢だったと確信する。


あの夢は本当なのだろうか。

夢にしてはよく出来すぎている。あっちが一方的に話をしていて、こっちからはなにも聞くことができなかった。


あのカミラとかいう女⋯⋯。

俺に国を救う力があるとかなんとかいってたな。


俺が国を救うなんて⋯⋯。


俺は心の中でそう呟いていた。


だけど、もしもあの夢が本当だったとしたら⋯⋯。


どちらにしろ、異世界に行くか行かないかというのは自由で、明日の夜までに決断しなければならない。



俺は疑いながらも、1度は夢見た異世界召喚に微かな期待を抱き、試すことにした。


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