表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
2章 今日も学園はゴタゴタしていますが、学園の外までゴタゴタしていて観賞しようとしてもどうやら無理な様です。
9/110

7

「ふおおおおおおっ!?」


 妙な雄叫びを上げてしまったのは仕方ない。

 って言うか、今時夢落ちってー!

 余りにも古いぞこのパターン!と叫びそうになるのだけは何とか堪え、今し方迄眠って居たベッドから起きようとして我に返る。


 全身汗でびっしょりって。幾ら今日が休日だからと言え、今日此れから人と会うのだからこのままだと非常に気持ちが悪い。むぐーと唸りつつタオルを水で濡らし、簡単にだが拭う事にした。


 よし、これで汗臭くは無いよね?とチェックしつつ、急いで着替えて身嗜みを整える。


 ちなみにこの世界に洗浄とか身綺麗にする魔法はあるのかも知れない。だけどほぼ庶民と変わらぬ生活をしていた貧乏男爵家三女にはその手の知識は残念ながらありません。お勉強をし始めているとはいえ、一般教養が優先で魔法の勉強にはまだ一切触れて居ない。


 その理由は、ぐぬぬ…この世界何せ本が前世の様には簡単に手に入らない。千円出せば一冊買えるお値段では決して無いのだ。

 何せ初めて王都に来て頭がパニックになりながらも街中の店先に並ぶ商品の価格をチェックした際、どうみても虫食ってるだろーって言いたくなる本でさえ軽く日本円で十万円越えてた。

 ふ、この国のお代金で二十万ゴルですって。日本円で二十万ぐらいですよ。

 思わず某有名ロールプレイングゲームの金銭の単科を短縮した名前かと初めて聞いた時突っ込んでしまいたくなったけど、そんな事を言っても他の人には白い眼で見られるか頭の心配をされるだけなので声には出さない。

 心の中でひっそりなのだ、うん、寂しいね。

 幼い時にうっかり領民のジージの前で言ってしまい、小さい子だからまだまともに口が回らないのかと思われたのは一寸悔しかった。呂律は大丈夫なんだよジージ。だから10歳になるまで会う度に大きく口を開けさせて、「あいうえおかきくけこ」と呂律が良くなる歌を歌わされたのは少し堪えたよ。いい思い出でもあるんだけどね。


 それは兎に角、この世界娯楽が少ないせいか本はとても高価。

 さらに輪を掛け、魔法に関する本は何倍にもなって高価になっている。その為どの学校も魔術に関する本は写本か、もしくはリサイクル品を使って居るらしい。その為に魔術に関する本、私が習得すべき『初期魔法』の本は流石にニキ様もフォーカス様も持って居なかった。


「すまん、流石に初等部を卒業してから売ってしまった」


 とフォーカス様。


「俺も初期魔法の本はこっちには持って来て無いな」


 ニキ様も困惑気味。

 ただもしかしたらニキ様の領地の自室にあるかも知れないので、今は魔法に関するお勉強はお預けとなっている。


 でもなぁ、もし洗浄とかあったら今日みたいな時には是非とも使いたい。魔法が使えるかどうかは兎も角、おば様達にでも今度聞いてみようと思う。


 …もしくは街の図書館に調べ物に行くか、だなぁ。


 拝観料が結構するから出来るなら避けたいんだけどね。

 学園の図書館は私には入室する権利は無い。勿論許可を取れば良いのかも知れないけど、許可が出るかどうか分からない。何せ今は只の厨房の職員ですしね。


 …


 …


 ふと、表を見る。

 学園の塔がこの部屋の窓から見えるのだが其処に時刻を知らせる時計があり、


「げ、時間!」


 待ち合わせ時刻十分前ー!

 慌てて髪を梳き、今日は時間が無いからいいや!と、何時も左右の横の髪の毛の二房を後ろに持って来て結い上げるのだけど、今日は一本に纏めて結い上げる。最後にシドニーお姉ちゃんから買って貰った大事なリボンで飾る。

 寮の部屋に備え付いて居る鏡で確認し、部屋の鍵をちゃんと掛けて急いで待ち合わせ場所に出掛けていった。




 今着ている服は三男の兄、ジーニアスが買ってくれたワンピースだ。

 この王都ロメインに来てから兄は一旦姉、シドニーの元へ身を寄せたと思った翌日、即王国騎士団に書状を携えて入団手続きを取り、その三日後に行われた入団試験を受けて無事合格した。何でもこの王国では貴族の三男以降、職にあぶれると大抵こうして騎士団に入団する様に親から書状をしたためて貰って来るのだそうだ。

 貴族の長男は元より次男は大抵予備として手元に残される為、滅多な事では騎士団に入団する事は無いらしい。勿論長男も騎士団に入団して腕を上げて行き、功績を上げて爵位を上げて行く者もいるらしいのだけど(ニキ様の一族男性はほぼ全員騎士団所属)、今は乱世の時代では無いので滅多な事では上り難いらしい。


(どうでも良いのだが、元の世界ではロメインと言う名前は『ローマの』と言う意味がある。何でも製作者側が拘りたかったとかで、王都の街の名前がこの名前になっていたりする。勿論此方の世界にはそう言う由来は無く、ローマなんて言う名前の都市も無い)


 そんな訳で兄が無事入団出来た事により当然の様にお給料が発生する訳で。兄はなんとその初任給で私の為にワンピースを買ってくれたのだ!


 これが喜ばずにいられ様か!

 嫌、居ない!


 そんな訳で今まで大事に取っていたのだけど、流石に着ないわけにもと思って今回初めて袖を通した。買ってくれた当初は大きめだったのだけど、今は丁度良いサイズ。おまけに王都の流行りのワンピース!ふわああああ可愛いい!今まで着た事も無かった(貸して貰ったドレスは別)庶民の可愛いお洋服を着た私は異常なテンションで居たわけで。


「よし!三度目の正直~!」


 待ち合わせ場所に居た二名の道連れ。

 ケイン様とニキ様が職員用の門の前で待って居る姿を見た瞬間、往来の場で思わず叫んでしまったのだった。



 何故叫んだのかって?

 それは―…


「おはよう~今日はまた可愛い格好だねレナちゃんっと、髪型変えた?似合ってるね」


 ふ、早朝から眩しい笑顔ですねケイン様。

 そして褒めて下さり有難う御座います。あれです、此方では言いませんが前世の世界ですと馬子にも衣装って感じなのは分かっておりますとも。

 そして流石の美貌ですね。

 片手に持って居る桶とタオルが物凄く違和感ありますけども。


「お前な~朝っぱらから元気だな」


 おっす、と此方やけに庶民っぽい挨拶を交わすニキ様。

 そして此方も桶とタオル等を手にしている。

 ちなみにこの乙女ゲームに酷似した世界では、所々日本のゲームの設定のせいか前世の中世ヨーロッパ風の設定をしているのに何処か日本臭い設定がある。その一つが此れから向かう場所だ。


「ふっふっふ~お兄ちゃんから頂いた大事なワンピースの初お披露目ですからね~」


 そう言ってその場でくるくるーと回るとふんわりと舞うスカート。

 今まで着ていた野暮ったい服とは違うんだよと胸を張ってみる。

 途端目線を外す二人。うん、紳士だね。

 そしてハシタナイ事をしたと今我に返ったよ。

 何せ前世は女らしい部分が悲しい事に絶…いや、止めよう思い出すのは。どうせほぼ覚えてないしね。


 でもはっきりと頭の中で独り言が聞えた気がするんだよ。「どうせまな板」と。


「髪型まで変えたのか、成程俺とのデートの為だな」


「違います」


 即答でニキ様の台詞をバッサリ切り付けるとケイン様がお腹を抱えて笑い出す。


「あ~やっぱり君面白いね。ニキをこんな風にぶった切るなんて君ぐらいだよ」


 少しむくれた顔付のニキ様の頬を笑いながらつっついて、反撃の蹴りを喰らって居るケイン様達の姿を見て仲良いなぁって思う。


 何せ実家の領地に居た時は同世代の男子共は何故か遠巻きにしていて寄って来なかったし、女子達にはえらい困惑した顔付をされた記憶がある。それは年相応な成長をしていなかったからだと八歳の時に自覚したのだけど。

 だって、ね…


 8歳の私に5歳の子が年下扱いをして来たのだ。

 確かに身長も低かったし、毎日忙しく畑を開拓していたから泥んこになっていたのだけど、服も領主の娘の癖に三女だったから使い回しのお古で破れた箇所を幾つも繕った後が凄かったから、物凄く憐れまれたし。


 で、でも今は身長があるもんね!

 この国の平均身長は知らないから分からないけど、比較的平均だと思う。そりゃ並べばニキ様達とは頭一つ分違うけどさ。

 ユリア様とも違ってた気がする。

 …あれ?やっぱり低い?

 ま、まぁ身長の話しはやめとこう。不毛だもんね。


「今日入れて三度もしといてそう言うか?」


「お風呂に行くだけじゃないですか」


 ぶふー!と更に笑って居るケイン様にまた蹴りを入れようとしたらしいニキ様にケイン様は華麗に(?)避け、


「ぶふふ、ニキが敵わないって流石だな~」


 と言いつつ学園の時計がある塔を眺め、


「そろそろ行かないと、三度目の正直出来ないよ?」


 と言われて慌てて歩を進める。

 そうなのだ。今日は三度目になる大衆風呂屋、しかも温泉!に行くのである。その際何故かニキ様は何度かデートだなと言うのは何故なのだろう。そして何故かケイン様もちゃっかり連れて来てるのは何故なのだろうか。

 一人でお風呂に入るのが苦手なのかなって思ったけど、確かに人数が居ると背中が流せて気持ちいいから其処のとこは同意出来るんだよねぇ。


「あ、そだ。今日僕はお風呂入ったらハーブの手入れに行くね。朝御飯は学園の食堂で食べるよ」


 何でも新しいハーブを植えるのだとか。

 出来たら朝一で植えた方が植物に負担が掛かり難いからねと歩きながら説明してくれる。後で時間のある時にでも見に行こう。


 先日誘われた苺も、甘く熟れた頃に厨房職員の全員にお声が掛かり、休日の人まで午後の仕込みに掛かる時間を交代し、ケイン様のハーブ園(と、おば様達が呼んでいる)に行き全員で堪能させて頂きました。ご馳走様でした、とても美味でした。ちなみに何故かちゃっかり攻略対象者であり甘党のユウナレスカ様、そしてユウナレスカ様に連れられたユリア様、何故か走って来たニキ様まで居た。ちなみにフォーカス様は途中から優雅にポットに紅茶持参で参加し、皆に振る舞っていた。


 うん。またなって居ないかな~苺って思って居たら、どうやら心を読まれたらしい。


「流石にもう苺は生らないかな~でもね、次はお茶になるハーブとかの新芽が出て来てるから良い頃合いになったら食堂に卸すね」


 おお~それは楽しみ!

 元々あのハーブ園にはミント(ちゃんと区分けしてある)とかレモンミントにアップルミント、それにバジル等料理に使いやすいハーブが多いのでおば様達がケイン様が来る前は時折交代で世話をしていたのだけど、ケイン様が来てからすっかり手が離れたからね。

 しかも今迄より倍増して拡張しているのだとか、って一人で世話するの大変でないかなぁって思って居たら、おば様達がよくあのハーブ園に居て井戸端会議をしているのはボランティアとして世話をしに来ている為なのだとか。

 し、知らなかったです。


「はは、先輩達が居るからね。実家のハーブ園や薬草園での世話の仕方とか今まで苦労していた事とかも話し合えるからとても楽しいよ。それにハーブが傍にあると薬草の育ちがとても良いんだ」


 ほうほう、それは良い事を聞いた。

 今度頂いたラベンダーの植木鉢の横に薬草でも鉢に入れて置いてみようかな?







 それにしてもと思う。

 ゲームしてる時は気が付かなかったのだけど、この王都は本当に治安が良い。

 何故かと言うと良家の子息様達が幾ら平民の服装をして変装して居るとはいえ、早朝で人があまり出歩いて居ない時間なのに先程から騎士団の人達のパトロール部隊が二人セットでキビキビと歩いて警備をしている。


 決して騎士団の息子がいるからと裏から手を回して居るワケではなく、元々こういう街なんだよね。しかも裏通りや少し危険な場所には必ず警備員が居る詰所が存在していて常時在駐しており、不測の事態に備えている。

 何だか派出所みたいなんだよね、流石日本の乙女ゲームに酷似した世界なだけはあるなぁ。もしかしたら前世持ちが政治に介入して居て彼方此方手を出していた成果かも知れないけど、私には分からないから感謝だけはしておこう。


 うん、今日も騎士団の皆様ご苦労様です。

 出来たら騎士団に勤めている兄に宜しくしてあげて下さいね?


 しみじみと警備している騎士団の人達を「兄を宜しくね~」と心の中で思いつつ、あの制服カッコいいなと魅入って居たら急に腕を引かれた。

 うん?何故ニキ様渋い顔?


「レナは今日は休みだろ?」


 はい。ご飯食べた後に露店でも見て妹と姉の御土産を買って会いに行こうと思っていますよ。


「そうか」


 それっきり何故かうんうん頷いており、ニキ様の背後にいたケイン様がクスクスと笑って居た。


 うーん何なんだ。


次も宜しく!と思って頂けたら、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します

m(__)m


6/1 

・ワンピースの部分加筆

・姉シドニーの部分をジーニアスとなって居たため修正



領民G「あの子らは元気かの~」

領民ABC「「「どーしたジージ?」」」

領民G「いやのう、王都っつー都会は恐いとこっつーのを思い出しての~」

領民ABC「「「恐い?」」」

領民G「そーじゃ、何でもの、都会に入る前にとってもでっけー門があっての」

領民ABC「「「うんうん」」」

領民G「そのでっけー門の上から更にでっけーのがそびえ立ってての」

領民ABC「「「う、うん」」」

領民G「それがの、時間になると問答無用で閉まってしまっての」

領民ABC「「「う、うん?」」」

領民G「閉まるとの、聞こえるんじゃ」

領民ABC「「「な、何が?」」」

領民G「おいてけ~おいてけ~っと…」

領民A「何を?」

領民B「もしかして」

領民C「命…」


ギャー!


領民G「いや、中に入る賃金なんじゃがの~ってもうおらんか、あやつら以外と恐がりじゃの」





長男「…(ちびった)」←隠れて聞いてた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ