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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。
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65 灯台の影 version 2

 ・補足・

 sideは後半になると『誰か』判明します。

 また、前回の灯台の影に登場した誰だか分からない不明な二人組と、36話に出て来た人物も同一人物です。


 * * *


 side:???


 ハァハァハァ…


 あ~クソ。あの人攫いが嗅がせた薬品のせいで身体が鈍った!

 以前はもう少し身体が動けた筈っ!

 足だってもう少し動いていた!

 チクショウ!


「そっちだ!」


「行ったぞ!」


 隙間と隙間、ほんの小さな針の穴の様な隙間を掻い潜り、道なき道を走り抜く。その度に背後から追う声が上がる。


「逃がすな」


「追え!」


 古城の一室の窓から音も無く飛び降り、庭を横切って一気に城下町へと駆け下りると、背後から甲高い笛の音が追う相手はココだと言わんばかりに周囲に鳴り響く。


 駄目だ、このまま道を走っただけでは追い付かれる。

 真っ昼間なのは分かっている。だが『通常の人が通る道』ではどう足掻いても不利。相手はこの港町カモーリの道を熟知しており、このままでは捕まってしまうだろう。ああほら、すぐ数メートル先で何名か隠れてボクを待ち構えている。

 厄介だ、実に厄介だ。

 だって言うのに、全くどうしようも無いなボクは。


 …同時に楽しくなって来たっての。

 ヤバイ、息も上がって心臓の鼓動が早く鳴り、爆発しそうになっているってのに全く。


 ああ、ボクの悪い癖だ。

 口の端がニィッと笑みを描く。

 息が上がるが実に楽しい。


「と言うかさ~ほんっと、…よっと」


 逃げたら追うって心理でも働いているのかね、この人達。

 犬か?しかも忠犬。

 ああ、忠誠を誓っているから似たようなもんか。

 かくいうボクも主に忠誠を誓っているから似たようなものだしなぁ。


 大体ボクはあの領館では悪い事はしていないんだけどなぁ~…今は。ただあの場に何時までも居ると都合が悪かったってだけ。意識がやっと回復したってのに、此方の都合も考えずに即座に尋問が始まりそうだったからトンズラしたんだし。

 それともバレちゃったのかなぁ。

 ん~…



 つい先程までさてどうするかと、思案していた時を思い出す。



 目を醒まし、何時も付けている黒い眼帯を左目の上に取り付けられているかどうかチェック。

 …大丈夫、無事"付いている"。

 速攻で理解すべく周囲を見渡し。この場が何処かを記憶の片隅に「知識」として入れていた場所、病室のような真っ白な天井を眺めてボクはー…己の失態に頭を抱えた。


 ナニをしているんだボクは。

 先日の光景を思い出し、更に頭を抱える。

『監視対象』が城下に居るからと様子を見に来てみれば、人攫いに攫われるってどれだけ気を緩めていたんだか。らしくない。実にらしくない。

 幸いな事にボクの記憶を辿り、魔法や薬等で『弄られた形跡』が無いことを確認。

 どうやら今の所はナニもされていない様だ。

 ただ微かにだが、ボクの主がこの場の目先の場に足を踏み込んだ形跡が空間に残っており、また全く同じ場に二名の男女の形跡がある。その事から主がその場に踏み込んだ事はこの館中に知れ渡って居るのだろう。

 だとすると、主がボクの安否を聞いた可能性が高い。


 あ、ヤバ。

 ボクこのままだと主に見捨てられるわ、マジで。

 その場で顔面を蒼白にして居ても仕方無い。今は何時だ。そして脱する時期は何時だ?見極めなければいけない。


 そう思案している時だった。





「本日はパーティーがありますので」


 この屋敷で治療を施してくれていた屋敷の主のメイドはニコリと微笑みー…


「【我らあまねく】…”我らの主のもの”。我が同胞、逃げるなら今です」


 そう、囁いてくれた。

 あのメイドはどうやら我が主の手足の一人だったらしい。



 主ー…『若』は見た目や年齢はともあれ、幼き時より巧妙に実父に隠れ、我らの様な者達を彼方此方の貴族達へと放っている。そのメンバーは細胞の一部の様になり、ひっそりと入り組んだ人社会の闇に紛れており、残念ながらボクは全員の名前も顔も把握していない。


 とは言え全員がほぼ『元孤児』だ。

 中には上手い事いって貴族と養子縁組を果たし、貴族の末席に入り込んだ者もいれば、王族の騎士等に紛れた者も居るし、他国へと渡って行った者もいる。

 しかも獣人・亜人・人間さらには…いや、今話す事ではないな。

 兎に角何人も居る。

 中には密偵を抱き込んで此方側に引き込んだ者も居て、ソチラはボク個人としては大分疑わしく思って居るが、それは兎も角『若』の手腕は恐ろしく高い。

 だが世間一般的には『若』は己の力を誇示する事は無かった。

 何度もボクはもっと表立った事をしたほうがと思ったものだ。

 だが決して『若』は表に立とうとはしない。


「私は「表」には向いていないのだよ」


 そう言って、瞳には淡い絶望に似た暗い色を宿したまま、顔には無理をして作った微笑を貼り付けて。


 辛い。

『若』のあの顔をボクは見るのが辛い。

 あの方には冷たい顔も冷ややかな面差しもして欲しく無い。


 過去一度だけ見た、太陽の様な朗らかに笑って唄う娘を見た時の、眩しそうな暖かな眼差しで見詰めて微かに、だが穏やかに笑っていた。あの時の様な穏やかな表情をボクはまた浮かべて欲しいと思っている。

 なのに。

 世間ってのはほんと、冷たい。


 仕方が無いのだろう。

 あの娘は『若』とは接触を恐れて居た様で、常に怯えて居た様だから。

 何度もその若の気配は表に立って居る時のみですよって伝えたかった。伝えたからと言ってもどうしようも無かったのかも知れないが。それに何故あの娘は『若』をあの様に恐れていたのか、ボクには皆目検討もつかなかった。

 別にイケメンが嫌いってワケでは無い様に思えるし、単に高位貴族だったから恐れていたとかか?それにしては第二王子には今もだが、暴虐武人の様だが。

 全く分からない。


 過ぎ去りし事は仕方がない。

 ボク個人としてはあの娘には『若』の隣で笑っていて欲しかったのだが…



 それにしても、あのメイド。ボクは今迄見たことが無い『若』の新たな手下に苦笑した。ほんと、一番の側近だと自負して居たんだけどなぁ…まだまだ未熟って事だよね。今回の人攫いの件もだし、何より『若』がボクを追って来たなんて予想外。


 …でも無いか。

 大方第二王子の様子とあの娘の様子を見たかったって言うのもあるのだろうな。

 何とも甘酸っぱい。

 若としてはそう言った言葉では言わないけどさ。

 会えたよね、若。辛い現実もあったみたいだけど。

 吹っ切ってくれたら良いな、と思う。


 トン、トン、トトン、トンッと勢いを付けて民家の壁に偶々立て掛けてあった梯子を登って屋根に飛び移り、一旦姿勢を低くして息を殺す。

 少し足音を立て過ぎた気がする。気が付かれたか?


「おい!此方来たか?」


「いや見なかった」


「おし、俺は向こうに行く。お前達は二手に別れてくれ」


「「了解!」」


 屋根の上から様子を伺い、一度無意識の内に吐息を吐いてしまう。


 ーーーさっきの探しに来て居た騎士の中に「見なかった」と言った騎士が居たが、あれって『若』の手の者じゃないか…はぁ、ここでもボクは助けられて居るって言うのがね…



 クソ、情け無い情けない情けない!!



 どうりであの屋敷で一番甲斐甲斐しく世話をしてくれていたな、と思う。幾ら何でも市井で攫われた子供を薬を嗅がせられ、数日間意識が戻らなかったからと言って何時までも面倒を見続けるワケは普通は無い。


 勿論何かしらの理由がソコにはあったのだが…

 今回その事には簡単に説明が付く。

 主の意向と、モニカ・モイストの思惑が一致したのだろう。


 嗚呼、もう全く。

 主に何度も注意されていたじゃないか、あのモニカ嬢には気を付けろと。



 頭を振るって…あ、ヤバ。

 慌てて頭部の角度を右に数センチずらす。

 途端耳を掠ってゆく、銀色の刃。


 振り向くな、そのまま足を動かせ!駆け抜けろ!屋根上を走り抜け!


「チッ」


 背後から舌打ちをする音が聞こえる。と共に、一名だと思った足音が増え二名になる。

 それがやがて…


 ヤメテー!ボクのライフは限りなくゼロに近いんだからー!

 何で今ボクは総勢五名のゴツイ髭面親父に追い掛けられなければ為らないのだ!しかも皆額に汗をかきながら!オイお前ら無理すんな!ボクをそっとしておけ!誰かそう言ってやって!


 んだけど、その中に明らかにヤバイ奴が一名混じってやがるもんだから、足は止められない。


「ちょ、ヤメロって」


「ナイフ、ナイフ投げるなって!今ココ屋根!下には市民がっ」


「は、…ぜー…やめっ」


 ナイフ持って追っかけて来る奴は他の四名と違って体幹が確りして居るし、カナリの鍛えようで、これ一般騎士や護衛とかと明らかに違うよな。動きが、目が、足腰が野獣の様だ。

 とか思っていたら、またナイフが脇腹を掠めて行く。


「てめ、相手は子、ど、もっ!」


「捕まえろって言われてるってのに!この馬鹿!ナイフ投げるなっての!」


「殺す気か!?」


 いや殺す気満々だろうがどう見ても。

 おっさん達空気よめ!

 そして空気読まない暗殺者!?暗器を出すな!ボク今素手!何もねーんだよっ!

 仕方ねえ!と、咄嗟に片腕の裾を縫い目から引き千切り、斬り掛かってきた男の暗器の…これ、ベルトに仕込みナイフって奴か!?だーいいな、それ。よし、今度作ろう。そしてボク専用にしよう。

 と無駄なことを考えつつも引き千切った袖で暗殺者らしい男の手首に巻き付け、暗器を床に落してから前方の追い縋って来た男達に向けて蹴り上げる。勿論当てる気は無いよ?牽制程度です。ボク、まだ人殺ししたくないんで。そのうち殺らなくては為らなくはなるんだろうけど、今は『若』が命じない限りは無いよ。その時は躊躇等しないけどね。


「ぬ、あー!あばばば、あっぶね!てめ、小僧あぶねーだろ!」


「いやあぶね~のあの馬鹿のほうだろ。とめねーと!」


「つかよ、あんな輩俺らの部隊には配属されてねーぞ!」


 あ、やっぱり?

 コイツこの場に紛れて来たって奴か。


「ヤバイあの娘、いや子?男?助けないと」


 娘じゃないから!ボク男だからな!って叫びたいけど、正直に言おう。無理だと。

 この暗殺者さっきから何度も蹴りやら突きやらナニヤラで体術の技量が半端ない!あんなに走った後だっていうのに、コイツの攻撃を躱すだけでボクは精一杯だよ!

 後から来たおっさん達四名が応戦?しに来てくれたけど、はっきり言って動きづらい事この上ない!その間に暗殺者はまた何処から出したんだよ!って場所から暗器を取り出して斬り付けてくるし!


 クソッ!

 全身に気合を入れ駆け抜けるが、まだ小さな肢体の身には大きな大人の歩幅には敵わない。せめてあと数十センチ程身長があればっ!



【入れ】



 ビクッと身体が震える。

 今の【声】は…



【今捕まると厄介だ】



「わ、若!?」



【声に出すな。…アイツの手のモノが部隊に居る。厄介な難敵だ。故に入れ】



 って事はさっきの暗殺者か?

 今も背後から襲って来る度に何とか躱し、屋根から飛び降りて空き家らしき民家の窓を突き破って突入する。


 そして、は、はい!

 声に出さずに答える様に頷く。

 でも【入る】には声出さないと無理っ!

 若みたいに自由自在に陣が発動しないんだよ!


「我は乞う、闇の眷属・精霊・高霊達よ!何時の遍く深い懐…」


「居たぞー!」


 げ!


【未熟者め】


「若みたいには無理ですよ!」


 民家の反対側のドアを突き破って街道へと転がり、そのまま路地裏へと突き進む。


 走れっ

 走れっつーの!ボクの足!動け!


「我は乞う、【闇の眷属・精霊・高霊よ。アレス・バーンドが望む。我の主の者、名をドミニク。字をドム、我の片腕。彼を我が元へ】」


「若!?」


 ボクの代わりに『若』が、アレス様がアチラの世界へと呼んでくれた!

 しかも『片腕』って!


 次の瞬間、視界は目まぐるしく代わり、最後に見た『元の世界』での光景は、暗殺者が四名のおっさん達に取り押さえられて居る光景で。



 ―――よく来た、ドム。



 困ったような青い瞳で此方を見ている主、アレス・バーンド様にボクは歓喜の声を上げそうになるのを抑え、恭しく頭を下げたのだった。



裏話↓

今回の章は某鬼神(笑)を引き止めないと話が進みませんでした。

例えば、レナとニキの庭先での件。

例えば、ドミニク(人攫いに攫われた子供)の逃走。

他にも色々。

彼が暴走していたら、先ずニキとレナの告白云々はありません。また、レナが庭でアレス(レナは気が付いていない)脅される事も無い。更にドミニクは窓辺から出た瞬間に卒倒させられて終了。

何だこの話をブチ壊す無双男は!?と、なります


その為にレスカの護衛からアレクサへと変更。代わりにコリンが代打に。

コリン自身はジーニアスが居ないと完璧な無双にはならないので助かりました(^^ゞ


尚、ドミニクの名前の意味は『我の主のもの』。メイドが言った意味はこれで通じるかと。

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