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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。
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 えーとぉ~…


 と言って固まるアドリエンヌ様。

 それはそうだよね。

 うっかりと言うか何というか。レスカ様に咎められたと言うか詰め寄られたニキ様が、小声で何事か話し合って居たら、急に…


「いいかニキにレナ。三度連続で踊ってこい」


 脅迫されている!?と言う気迫で言われて驚いて居たら、急にユリアの手を引いて会場を出て行った。

 ふと見たユリアの様子が羞恥に消え入りそうに真っ赤に顔が染まっていたけど、大丈夫だよね?会場を出て行った辺りから大慌てでメイドさんが付いて行った様だから、大事には為らないと思うけど…


 …ストーカーレスカ様だからなぁ。

 ユリアの事に関してぶっ飛んでるから、今一信用が無い。


「ニキ、何か言ったの?」


「あ~まぁ、な」


「何言ったの?」


「(レナとキスしたって言ったらああなった)」


 うぷっ!

 ニキってばレスカ様になんて事を伝えてるのー!


 小声で言われたからアドリエンヌ様には聴こえてなかった様だけど、何だか此方を見てニヤニヤされてしまっているんだけど。


「お二人とも仲が良いのは良いけど、ちょっと妬けてしまいますわ」


 何時の間にか、ニキ様の『様』が抜けていらっしゃるようですし?と言われてしまって内心かなり焦る。顔に出そうだけど、まぁ、これはこれで仕方が無い。それにアドリエンヌ様なら私が動揺している事には気が付いてるだろうね。目を細めて此方を見ているし、貴族子女として恐らく機微に敏い人の様だし。


 私は機微にはさ~っぱりだけどね。

 元庶民上がり、元アレイ男爵令嬢で現ガルニエ男爵令嬢の私には中々高等なスキルだわ。

 ただ「今後確りと学びましょうね?」とビンセント先生に確りと言われたので、学ばないと為らないんだろうな…出来る出来ないに関わらず。「やっておいて損はありません」と言われたしね。

 少し気が重いけども。


「先程大勢の男性に囲まれて居た人には言われたくありません」


「ふふ、中々言いますわねレッティーナ様は。でもそれはね、殆ど理由が分からないのよ」


 はぁ、と吐息を付いて語るアドリエンヌ様。

 曰く、


 ・数回パーティーで会って軽く会話していただけなのに、何故か相手が熱烈に求婚して来始めた。

 ・街に馬車に乗って買い物へ言った際、偶々入った店でのんびり眺めていたら話し掛けられて、数度言葉を交わしただけなのにその後何度もお誘いの手紙が来る。

 ・家族と演劇を見に行った会場で、偶々隣りにいた男性から婚約の打診が来る。

 ・気に入った本の作家さんの次回作が欲しい、読みたいとお茶会で話したら、お茶会に参加していた『令嬢達』の『兄弟』達が新作を携えて何かとお誘いして来るように為った。


 うわ、なにそれ何処の…ん?

 もしかしてナンカのゲームの展開にありそうな、イヤまさかね。

 乙女ゲーム仕様はヒロインのアメリー・メメントリー準男爵令嬢だけでお腹一杯ですよ。



 今はニキが周囲を牽制し、アドリエンヌ様目当ての男性陣が遠巻きにしている様だけど…あれ?さっきまでココにジーニアス兄さんが居たのに。


「ねぇ、兄さん何処行ったか知らない?」

「レッティーナ様のお兄さん、多分すぐ帰って来ると思いますわ」


 んん?

 何処か背中がゾクッとする色気が混じっている様な吐息を吐き、アドリエンヌ様がほら、と指を刺す方向に目線を向ける。そこにはジーニアス兄さんが、会場を警備していると思われる兵達に何名かの気絶していると思わしき男性を担がせ、庭先から此方へと戻ってくる。その顔付きは特に何でもありませんという風に涼しげだけど、周囲が何かあったと言う証拠&雰囲気が一杯だ。


 その兄が何かしら指示を出して気絶している男性達を担いでいる兵をその場で待機させ、此方へと早足で向かって来た。


「失礼、アドリエンヌ嬢。申し訳無いがこの者達に見覚えは?」


「ありますわ」


 ん?会場に居るモニカ様と目があった。

 その目、ものすごーく嬉々としていらっしゃいません?

 目を見ると実にワクワクしてらっしゃるよね?

 モニカ様の横に並んでいたバーネット様に耳打ちして、それから近場の兵に何かを指示し、今度は兄さんの方を見て居る。


 あ、何か嫌な予感がしてきた。


「すまないが分かる範囲で素性を教えて欲しい」


「分かりました。まず此方の方はカーモード子爵の御子息ですわ。そしてこの方はネイハム伯が懇意にしていらっしゃるフォー男爵の次男ですわね。そして…」


 うわ、これってほぼロドリゲス家の息の掛かった子息ばかりだ!

 その人数4人。

 ひぇ~…

 むしろ良く集まったって感じ!?


「有り難うございます。よし、後は頼んだ」


 騎士団のメンバーとバーネット様の領館の警備兵達がその場に辞して行く様を見て、会場内がザワザワとし始める。

 モニカ様、絶対コレ狙ってたよね。

 ロドリゲス家を追いやる為に確実に射止めに行ってるわ。


 そしてパーティー会場の出入口に仁王立ちしている騎士団長アルビオン・モイスト様の姿。

 うわ、これなんて出来レース?


「アドリエンヌ様…」


「今回とある方からお願いがありまして」


 チラリとその視線はモニカ様に。

 わ~お、恐らく何らかの罠がモニカ様によって張り巡らされて居て、今回見事に引っかかったってワケだね。そしてその一端にアドリエンヌ様がエッセンスを加える程度に関係して居ると。


「ちなみにそのお願いと言うのは?」


 話せます?と聞くと、


「このパーティーに参加を『是非』お願いいたします。ですわ」


 ふぅ、と扇で口元を隠しながらも吐息混ざりに呟く言葉に遠巻きで見ていた男性達が色めく。頬を染めて熱い眼差しで見詰める者、うっとりと眺めている者、蕩けた様な夢見心地な表情の者。

 色々な表情が其処にあるが、全員がアドリエンヌ様を見詰めている。

 凄すぎるこの効果。


 …ニキは大丈夫なのかしら?

 少し心配して見ると、此方を見てニキが微笑を讃えている。

 此方が考えていること丸分かりって事?

 少し悔しいけど、それはそれで、その。恥ずかしい…


 するとニキが、


「アドリエンヌ様は社交界の『艷やかな華』で有名なんだ。お蔭で男性陣のファンが異様な程に多い」


 確かに求婚者達の数が多いものね。

 一瞬逆ハー?とかって思ってしまったけれど、当人であるアドリエンヌ様が困惑し、鬱陶しそうにしている辺り何というか…ご愁傷様?


「私、只の男爵令嬢でしか無いのに」


「魅惑的だからな、アドリエンヌ嬢は」


 おろ?

 ジーニアス兄さんがアドリエンヌ様の手を掴んで…ん、ん、んー!?


「気分転換に一曲如何かな、お嬢さん」


「まぁ、嬉しいですわ」


 ふわぁぁぁ、凄い絵面になってる!

 二人並んで歩くと正に美男美女。方や氷上のプリンス、もう片方は真紅の薔薇。

 と言うか兄さん、何時の間にそんなにダンスが上手くなったのよー!つい先日まで私とどんぐりの背比べ状態だったじゃないの!


 畜生流石乙女ゲームの攻略対象者め。

 チートだチート。






「レナ」


「はい」


「ジーニアス殿にお前もさっさと行けと言われた…」


 あらら。

 どうやら兄さんに発破掛けられたのかな?


「三曲連続になるが行けるか?」


 この世界の貴族社会では、一度のダンスは兎も角、連続で二度目は友人や家族等と言った意味があり、三度目の連続で踊る事は伴侶や恋人の意味がある。

 ちなみに普段のレスカ様達は三度目どころではなく踊り捲るので、社交界では有名で特に『ウインナーワルツ』になるとクルクルと優雅に蝶や妖精が舞う様に華麗に舞っているのだそうだ。


 つまり三度連続で同じ相手と踊ると言うことは、それだけ仲が良いという宣言にもなっているし、周囲に恋人宣言している様なものであり、「この二人は相手が居ますよ、結婚の申込み等しないように」と牽制しているのと同じ事になる。


「は、はい。足を踏まない様に頑張ります!」


 だって、そうしないと先程から何人もの御令嬢がチラチラとニキの事を窺っていて、此方に来て声を掛けようとして様子を窺っている様に見える。


 あれはダンスに誘おうとしているよね?

 もしくはニキと仲良くなろうとして…うう、想像もしたくない。

 そんなの嫌。

 ああもう、レスカ様の事どうこう言えない。

 私こんなに独占欲が強かったんだなぁ。

 知らなかったよ。


「フッ…足を踏まないようにって、言わなくて良いからな?」


 何とか上手くリードする、と耳元に囁かれて。その言葉と耳元に言われた事に頬が染まる。


「行くぞ」


「はい」








 * * *






「あら」


「おや」


 ダンスホールの中央。

 拙いながらも必死で付いていく成人前の可憐な令嬢と、そのお相手らしき同じく成人前の男性が一組。


 時折テンポを崩しそうになると男性が女性を然りげ無くフォローして行き、時折互いの顔を見合わせて微笑み合う。

 その様子は何処か初々しいながらも愛らしい。

 そんな可愛らしい印象を見ている人々に思わせる。



「ニキ達は大丈夫そうね」


「だな。しかし意外だ、ニキがあんなにダンスが上手いとは」


 中々上手くリード出来ているじゃないか、としみじみとバーネットは呟き、モニカもその事に同意する。


「あの子は昔から運動神経が良いからね。普段はレスカ様の警備もあって他の令嬢が寄って来ない様にしていたみたいだし、滅多に踊って居なかった筈だから気が付かないのも当然だわ」


 ニキはレスカ付きの学友であり、側近候補である。

 今は警備対象の第二王子であるレスカは会場を抜けて移動しており、同じく見習い近衛兵のコリンや騎士団のメンバーもレスカ達の警備に付いて行ったのでこの城に居る限り、ニキがあえて付いて行く必要も無い。


「それにしても良かったわ」


「ああ…ご愁傷さまって事だな」


 恐らく先程の事だろうとバーネットが思っていると、此方をバッと言わんばかりにモニカが振り向いた。

 何だ?そう思ってモニカを見ると、


「馬鹿ね、ニキの恋路よ。こ・い・じ。アノ子が小さい時からハラハラして見ていたんだから!」


 嗚呼、そっち。

 今一時だけ。バーネットは表情には何とか出さなかったが、モニカから目線を外しながら、コッソリと心の中で溜息を吐くのだった。



『ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー』

この作品が本日で更新してから一ヶ月経ちました。

宜しかったらソチラも宜しくお願いいたします(^^ゞ

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