閑話 ユリアside
「あら」
「ユリア?」
あの後、何名かのアドリエンヌ嬢の求婚劇を横で拝見しておりましたら、数名の貴族の子息が私にダンスの申し込みをして来ましたの。その様子を見ていた私の婚約者が嫉妬し、明らかに苛立ったレスカに引きずられる様にダンスホールへ向かう事になりましたのですわ。
ふふ、私の婚約者は困った事に嫉妬深いのです。
ですけどその後即反省し、「悪かった。手、痛くなかったか?」と心配しておりました。痛くは無いのですが、こうも嫉妬されてしまうと困ってしまうものです。
ですがその分私の事を好いているが分かるので、嬉しいといいましょうか…
何ともおかしな気分に陥ってしまいますわ。人の心と言うのは不思議なのですね。
矛盾とも言うのかしら?
有り難いことにレナに出会ってから私達の不穏な空気は一変し、以前よりも良好な関係となり、最近は嫉妬深い婚約者から照れながらも愛を囁かれるようになりましたの。
今も踊っている最中に囁かれてしまって、羞恥で顔が逆上せてしまいそうになりましたわ。お蔭で慌てて取り繕うなんて、私ここ数年は完璧な淑女としておりましたのに、全く困ったものです。
そうしてそんな様子の私の事を見て、嬉しそうに目を細めるレスカを見て…
レナの様に足を踏みますよ?
そう脅したら、慌てて顔を取り繕う様に澄ましたので次からはコレですわね。と呟けば、
「全く。ニキとジーニアスに君と、私の側の者達はレナレナとばかり言うな」
そう他の踊っている者達に聴こえないように呆れたように囁いてきましたわ。
…ケイン様の名を出さない辺り、彼のことを気にかけて居るのでしょう。
彼、ケイン・ノスタルジア・ジアス様。
先日からニキ様とレナの件が纏まってから私はお会いして居りませんが、レスカ曰く初日と翌日は失恋のショックで鬱ぎ込んで居た様です。ですがその事を把握したモニカ様に喝を入れられ、鬱々としていたケイン様に蹴りを入れ、一瞬でも思考する間も与えないよう、先日の侵入者の捜索に酷使させているのですわ。お蔭でかなり睡眠を削られて居るとレスカが言っておりましたが、大丈夫なのでしょうか?心配ですわ。
等と思っておりましたら、
「モニカ曰く失恋には思考を低下させるまで身体を酷使し、泥のように眠れば徐々に失恋の傷は回復していくのだそうだ。とは言え『日にち薬』の酷使版みたいだがな」
日にち薬とは失恋に陥った際によく聞く言葉ですわね。
何でも時間が立つと、徐々に心の痛みが癒えるのだとか。
…もしかして過去にモニカ様は失恋なさったことがおありなのでしょうか?
この度、やっとの思いでバーネット様の長年の恋が成就されたとレスカに聞いたばかりなのですが、等と思っておりましたら、
「言っとくがモニカの体験談ではなく、モニカが所属している魔術師団の隊員達に実施している事柄らしいぞ。お蔭で鬼教官と呼ばれているとモニカが笑っていたが」
「まぁ、それは…」
モニカ様らしいですわ、と言いかけて口を慎む。
レスカが壇上に目を向けたので其処で曲が終わったことに気付き、私もその場で止まる。今は二曲目を踊り終わったのですけど、次も踊るのかしら?と思ってレスカを見ると、苦笑気味の顔。
「モニカがニキとレナを探しているようだな」
「まぁ、モニカ様を見ただけでお分かりで?」
「目線が一瞬だけだが泳いだな。今は取り繕って澄ました顔をしているが」
分かっているぞと言わんばかりのレスカにそれだけ付き合いが長いことが伺えて、少しだけ嫉妬してしまいましたわ。
…嫌だわ私ったら。レスカの事を言えませんわね、心がこんなにも狭いんですもの。
「私お二人を探して来たほうが宜しいでしょうか?」
「ほっとけ。今のあの二人に関わるとニキに恨まれるぞ」
「あら?どうしてですの?」
「あの馬鹿、婚約の申し込みすっ飛ばして結婚の申込みをしたからな。今頃婚約の申込みでもしてるだろ。…まぁ、他にも色々すっ飛ばしてそうで怖いが」
色々?とキョトンとしておりましたら、次の曲に変わりポーズを変えて何時もよりも身体を密着させて踊り出しました。
ウインナーワルツ
…これ、少し恥ずかしいのですけど、フロアをクルクルと舞う様に踊るのはとても好きですわ。ただ殿方と距離が近いので、出来るだけレスカ以外とは余り踊らない様にしておりますの。それでももし踊らないと為らない時は、ニキ様やケイン様にアレス様と言ったレスカの幼馴染とだけにしております。
そうでないと…
ダンス満足できませんの。
優雅に舞い踊るのは卓越したセンスも必要ですが、何より身長差が有り過ぎるとあまり美しく舞えませんし、歩幅を合わせて頂ける殿方でないと此方が上手く踊れません。
更に無理に引っ張ってリードをしようとする殿方も中には居て、バランスを崩す事も多くあるのですの。勿論ワザとやって私を懐柔し、手に入れようと画策し、私から王家の情報を少しでも得ようとする方も居られるので、此方としては辟易してしまいます。
その事にレスカも気付いて居りまして、私と居るパーティーは必ずこの曲になると踊って頂けます。その事が嬉しくて…
ふと目線をレスカに向けると、此方を同じ様に目線のみで見詰めて「フッ」と笑いましたわ。嫌ですわ、何だか恥ずかしい…
こうして三曲目も終わった辺りで冒頭の言葉ですわ。
こう言うのは閑話休題と言うのかしらね。
片手を添えられてニキ様にエスコートされて会場に戻って来た二人、ニキ様にレナは先程私達が居た場所に戻って来られました。途端何時までも周囲で様子を窺い、私をダンスに誘う気で居られた子息達が戻られたニキ様によって蹴散らされました。
ニキ様は一睨みしただけですがね。
大事そうに連れて来たレナに変な虫でも付かれると困ると言う事でしょうけど、レナのお兄様のジーニアス様と言い、ニキ様といい、レナの周囲の男性陣は中々気迫がお有りの方が多いですわ。
不思議なものですね。
ジーニアス様の上のお兄様であるディラン様は何方かと言うと柔らかい物腰の方で、苦労性気味な気配がある人でしたので、全員が全員と言うわけでは無い様ですわね。
でもレスカの影の報告によると、そのディラン様もジーニアス様程では無いようですが、中々の腕っぷしの強さだと聞いております。
何でも実家を出た後、何百もの獣や魔物を倒して日銭を稼ぎ、途中妹を救出して王都へといらっしゃったのだとか。私、下手な英雄談よりも遥かに素晴らしいと思いましたわ。特に小さな村に襲い掛からんとした魔物達を千切っては投げ、千切っては切り裂き、千切っては真っ二つにして…
ああ格好いいですわ。
ウットリしてお話に聞いておりましたら、レスカの機嫌が急降下したので表情を取り繕いましたけど、私冒険談が好きなのです。今まで黙っていましたけど、こんな私はお嫌ですか?とレスカに述べましたら、次の日から沢山の冒険談を何処からか仕入れて居られまして、私に話して聞かせて来ましたわ。
大変驚きましたわ。
お蔭でとても楽しくて、ますますレスカが好きになりました。うふふ。
ですがこの件は私達の間の秘密ですの。貴族子女が冒険談がお好きと言うのは、醜聞にも繋がりますので致し方がないのです。残念ですわ…レナならこの私の気持を理解して下さるでしょうか?今度機会がありましたらお話してみましょう。
あら嫌だ、私ったらまた話が逸れてしまいましたわね。
席についたレナは私の隣の席に座ったのですが、即ニキ様に引き取られて行きました。今はニキ様の隣に座って、始終顔を真っ赤にして居られますわ。
そして…
ニキ様、そこは抑えましょう?
貴方がレナを心の底から好きで愛しているのは分かりますが、レナが真っ赤ですわよ?おまけに耳まで真っ赤ですわ。アドリエンヌ様等面白がってからかっておられますが、そろそろ呆れておられますわ。
落ち着きなさいませ。
そしてレナ、今からこの『溺愛』状態ですと逆上せ上がってしまいますわよ?え、もうなっているっていうの?
あら、まぁ…。
どうしましょうレスカ。私レナに惚気けられて居るのかしら?
え、レスカどうしま…っひゃあ!
ちょっ、ちょっと待って下さいませっ!
ええ?レナ達がキスしたからしたいって、ま、ま、まって!
こんな所ではちょっと、え、部屋行くって、あの、だから待って!
* * *
実はキスもまだの二人です。今回の事でレスカが先越された!と焦った様子。
本編には関係ないので閑話と致しました。
個人的などうでもいい話。↓
この文章を書いている間、ずっとBGMがペル●ナ5とTHE YELL●W MONKE●でした。
妙なテンションで書きまくってたヨ…
ちなみに曲とユリアの文章は全く合いません。そのギャップで筆が進むという矛盾を味わいました。
そして私、ペ●ソナ●ゲームしたこと無いっていう。今月出る奴とは別に、PS4の本編、3DSで出してくれんかね~。
そして更に。等々ドラクエオンライン手を出しました。
超初心者です。勿論3DSしかゲーム機無いのでそちらでin。
ううん、画面が気になる(笑)。このまま来年夏迄継続するならPS4購入検討しようかなぁ。ただin時間が極端に少ない。一日に一時間~一時間半程度、下手すると30分。有料料金掛かるので、毎日inでもこの時間しか取れないようなら継続は難しいかなぁ。




