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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。
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 …うん。

 モニカ様やり過ぎ。

 厨二病的発言が少し痛々しい。

 ニキ様が背後で「それ、只の火炎魔法…」ってポソリと言われている辺り、ある意味火傷負ってる。精神的な意味での。


 そしてモニカ様に敵対した人攫いは一瞬にして当人だけ真っ黒に焦げた。寧ろ煤けた。後で聞いた所、軽い火傷程度と一時的に目の視力を奪った程度(数日で元に戻るそうだ)とハゲになった程度で済んだそうだ。

 と言うかハゲってモニカ様。

 それ、アレイ家の父とカイデン兄さんにしてくれません?って一瞬思った位に見事だった。


 但しドドーンって直径三十センチ位の火柱が天高く朝日を浴び、一般市民達が唖然と様子を見守る最中、街の一角に立ち上がってしまって当然周囲は大混乱。

 勿論当の本人であるモニカ様は「やり過ぎた」と周囲に平謝り、更には駆け付けて来た警備兵や護衛の騎士達に見付かって大目玉。レスカ様も警備兵に交じってモニカ様を叱り、盛大にモニカ様は凹んだ。

 かなり心が折れた様だ。


「もし火が飛び火して辺り一帯が火事に為ったらどうする!」


 と、レスカ様に怒られたしね。

 火は特に注意しないと為らないとの事。ここカモーリでは街中では火魔法を盛大に使っては為らないそうで。理由は船の輸入品に『油』とか燃えやすい品を輸送したりするからだそうです。







 そして現在…



「頭を上げて貰わないと、流石にちょっと…」


 土下座。

 モニカ様が問答無用でバーネット様の前にザ・土下座。


「調子に乗ってやり過ぎてしまいました、誠にすいません」


 市井に紛れる為か一般市民の格好、でもちょっと魔女っ娘?年齢的に言って魔女でいいのかな?な風な気がするのはモニカ様がワンピースを着て居て、更に手にしている箒のせいかも知れない。

 と言うか何故箒?杖じゃないの?

 もしかしてソレで空飛ぶとか言うのかな?

 ニ〇バス2000とか言うネーミングじゃないよね?

 モニカ様ならほっといても飛べそうだけど。跳躍的な意味じゃなくて、空中を自由自在に箒に乗ってね。


「市井に紛れるには杖より箒かなって。手に持ってても商店から購入したのか掃除して居る様に見えるでしょ?それにこの杖、ううん箒型杖、長い間頼んで居てやっと出来て来た新しい武器だから、是非自分で取りに来たいと思って来たらこの騒動なんだもの?つい、ね」


 つい、で魔がさしたと。

 試し撃ちしたくてウズウズしていたらこう、ねぇ?とか言われても困る。更に床に座して土下座状態維持中ってのも止めて欲しい。

 バーネット様じゃないけど、目に優しくないですこの光景は。

 私より高位貴族の方がやってる光景、しかもついこの間お世話に為った人のはあまり見たくないです…。


「頼むから止めてくれ。後で君の兄であるアルビオン様に報告する時困るんだぞ」


「だから土下座してるんじゃないの」


「余計困るんだよ。取り敢えず立ってくれ」


 え~ってぷくーと頬を膨らませるモニカ様。

 もしかしてあまり反省してない?

 途端バーネット様が呆れたやら困ったやらって顔付で見て来る辺り、あまり反省して無いのかも。もしもし、モニカ様。頬を膨らませて居ると土下座した意味無くなりそうですよ?効果薄れますよ?



 今私達が居る場所は、バーネット様が居る居城の執務室の中。

 幾ら人攫いを捕まえる為とはいえ事情も聴かずにこのまま無罪放免には出来ないと、血気盛んに言い募るカモーリ領お抱えの騎士団を説き伏せるのは面倒だと言う事をレスカ様が判断。実際凄い剣幕でしたし。

 お陰で身分を明かすまで威圧的に出て居てずっと此方を見下して居たものだから(年齢的にも此方は年下ですし)、後にレスカ様達の身分を知ってカモーリ騎士団の皆は震え上がって平謝り。勿論モニカ様の身分も知って更に畏縮。

 レスカ様は兎も角、モニカ様の場合は畏縮しちゃうんだねぇ…。

 レスカ様は「謝らなくて良い、職務に全うに尽して居る証だからな」と必死に謝って来るカモーリ騎士団の人々を困惑して落ち着かせ、モニカ様は素知らぬ振り。もしもし?もしかしてこの手の事の常連さんなのかな?


 ほんっと何やってるんだろうモニカ様。火力が高いからってだけじゃないよね?明らかにカモーリ騎士団+ウチの護衛さん達まで小さくなってしまって居たし。


 その後当然の様に市場を見学するのは終了。

 レスカ様がカモーリ騎士団の数名+街でもっと買い物をしたかったとしょんぼりと項垂れるモニカ様を引き連れ、全員でバーネット様の元へと戻って来た。



 塩ぉ…

 お魚…

 御土産…

 異国のまだ見た事が無い調味料…

 出来たら日持ちのする果物も。

 そして憧れの香辛料達。あるかどうか分からないけど。


 香辛料があったら!是非!カレーの再現をしたかったのにぃ!!

 と言う事はグッと我慢して、泣く泣く何度も振り返って見てしまう。


 そうなのです。

 この世界、実家のあるアレイ領地は兎も角、王都に来てから乙女ゲームの世界に酷似しているせいからか食には困らない事が多いのだけど、残念ながらカレーが無い。胡椒はあるから探せばあるのだろうけど、王都の市場では見当たらなかったんだよね。


 …レスカ様の好物のプリンはあるのに。

 おまけにバナナも無い。

 これはまぁ、南国から輸入して来る段階で無理があるのだろうって思うのだけど。他にも色々無くって、設定結構グダグダだったんじゃないの?とか思ってしまったのは仕方がない事だと思う。

 勿論キムチも無し。

 と言うか辛いモノがあまり無い気がする。

 これは気候のせいかも知れない。


 一度ケイン様に聞いてみたら、砂漠のある国には辛い料理があるって言ってたし。ただし王都には輸入されて居ない。理由は距離があり過ぎるのと、この国の王都に居る貴族はあまり辛いモノが売れない傾向にあるとかで、余程モノ好きな人が商人達に頼んで輸入する位しか無いらしい。

 尚その珍しい購入者ってのは王都ではなく、ココ港町カモーリの周辺領土に住む貴族や地方に住む貴族、特に王都より気温が高い所に住む人達には好評らしく、其処では結構売られて居るらしい。

 更にその手の領地には独特な香辛料を使った料理があるのだとか。


 今度機会があったら是非行ってみたいものです。

 もしかしたらカレーがあるかも知れないしね?




 閑話休題。




 拉致されてズタ袋に入って居た子は人攫いに薬品を嗅がされたとのニキ様の証言により、当初はカモーリ騎士団の詰所か街医者まで運んで介抱させようとした。でもニキ様ケイン様にレスカ様がその子の顔を確認した途端、三人で何故か顔を合わせてそれを拒否。

「此方で身柄を預かる」と有無を言わさずと言った感じで引き取った。


 理由はどうやら三人の“知り合いかも知れない”からと。


 ユリア様に聞いて見たら、残念ながら知らないらしく困惑した顔をして居たけど、心当たりがあるような気がする。

 そんな訳でその子供は現在バーネット様の居城の一室で寝かされている。

 ただし、厳重に何人もの護衛を付けて貰って。


 現在ジーニアス兄さんがその子の護衛に付いて居る。

 レスカ様が腕の立つのが必要だと言って。その為今現在『見習い』ではあるけど、レスカ様付の近衛兵が一人の為にやたらとコリンさんが張り切っている様子が見える。シャキーンって音が立ちそうな程に立って部屋の角で警備中。そして今回の行程に付いて来た護衛騎士の人達も張り切っている様な気がする。

 何だろう、兄さん居ないとそんなに張り切るのだろうか?


 攫われた子の顔を見て居ないのだけど、余程重要人物なのかなぁ?


 そんな訳でこの執務室に居るのは人攫いを追い掛けた私とニキ様、それに一緒に買い物に来ていたレスカ様にケイン様にユリア様、市井まで警備付いて居たコリンさん。そして問題起こしたモニカ様、バーネット様に常に付き添って居るメイドさんと言った結構大所帯な人数が詰めて居る。この大所帯なので当然椅子が足りず、使用人の方がわざわざ椅子を持って来てくれた。すいません、有難う御座います。


 そして大所帯になってしまったので部屋の外で待機してくれている護衛さん達、何だか申し訳無い。いえいえお気に為さらずって言われたけど、気に為ってしまう。特にモニカ様と離れてホッとして居る様子を見れば尚更。


 ほんとーに何があったんだ、モニカ様?


 その当人であるモニカ様は反省を表す為か、単にバーネット様を困らせたいだけかは知らないけど当然腰掛けず、未だに床におります。



「今医者を呼んでいる。もう少ししたら来るだろう。それで一応モニカ様には隣室で事情徴取したがってウズウズし、今か今かと待ち構えて居るカモーリ騎士団の面子に説明してくれ。私も行くから」


「えー」


「えーじゃない。大体は察しているし報告も受けて居るが、街中で『火魔法』をぶっ放した罰だ」


「火魔法じゃないわ、火炎魔法よ」


「火だろうが、なお悪い!大体カモーリで燃焼する恐れがある火魔法を放つのは禁じて居ると何度言えば分かるのだ」


 何度言っても分からないんだモニカ様。

 は~…と大きくため息を吐いて頭を抱えて居るバーネット様。

 そしてチラリと此方を見るモニカ様。

 ううん、その視線是非スルーしたい…


「だっあって~小さな頃から可愛がって居るニキが意中の子とやっとデートしていたのよ?なら張り切っちゃうでしょ?」


 ぶふーっ!?

 意中って、そのっ!


「モ、モニカさまぁ!?」


 何だかフッフーンどうよ!って感じで見られてしまったんだけど、「いやその、あのっ」て変な風にしか声が出ない。そして自覚するぐらいに顔に熱が集まる。


「え」


 って言って驚いた顔をして見て来るモニカ様。

 でも今声に出したのは、私から少し離れた場所に居たニキ様で。


「?」


「レナちゃ…」


「レナ、お前」


「レナちゃん?」


 何だか、あの、ニキ様ケイン様にレスカ様。それにユリア様迄此方一点を見詰めて居て。


 この部屋に居たバーネット様とコリンさん達のみ「なんだ?」って感じで周囲を見て、それから………私を見て、バーネット様は納得っていう顔を…って、え?


 わ、私の顔今変!?

 変になってる??


「レナ?」


 ニキ様が此方を見て、私もその顔を――…


 な、に。

 ニキ様の顔を見た瞬間、自分でも分かる。分かってしまう。

 熱が集まっていた感じがボンッって破裂した様に…


 な、ななな、なんで!?

 心臓が飛び跳ねるの?

 こんなの今迄何度もあったじゃない。ニキ様の顔を見るなんて、今まで何度もあった事だよ?なのに何で、何で今とても恥ずかしくて堪らなくなるの?

 それにさっきの馬の――


 や、やだ。

 わけわかんないっ!


「あ、あの、急に御免なさいっ!失礼しますっ」


「レナ!」



 背後からニキ様の声が聞えたけど、その場に居るのが居た堪れなくて。恥ずかしくてどうしようもなくって。貴族子女として行儀がなって無いだとか駄目だと分かっているのだけど、どうしようもなくなってしまって。その場から駆け出して逃げた。



 だって、分かってしまった。

 私、嘘でしょ?モブなのに。乙女ゲームに名前さえ出て来て居ないモブなのに。


 こんなのストーリーに無かったじゃない。

 そりゃ今迄乙女ゲームでの時期が早まったり、無かった話とかが出て来て居ておかしいとは思って居たけど。でも、違う。こんなの無かったじゃない。


 モブである私は本来なら名前さえ出て来ない男爵家の三女で、父親に問答無用で借金の代わりに妾に差し出されて居て。その為に救えなかったとジーニアス兄さんがその事が切っ掛けでヒロインと出会った当初はとても暗くて。そんな妾になってしまう私の運命も、落ち込んで暗くなってしまうジーニアス兄さんも嫌で。



 嫌で、逃げ出して。

 王都に来て頑張って働いて道を切り開いたら…







 攻略対象者であるニキ様を好きになってしまって居た…


 

レナ、自覚するの巻(遅)。

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