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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
1章 今日も学園はゴタゴタしていますが、私は厨房の仕入れ作業に勤しみつつ鑑賞し、本日も萎えています。
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「だ、大丈夫ですかー!」


 あの『火の玉』は『火の弾』であって、人魂何て言うオカルトでは無いですよーっ!

 魔法ですよー!

 業者さん確りして下さい~!


「レナ!無事か…って、お?」


 騒ぎを聞き付けたのか、ニキ様が走って廊下を通過しようとしてから私の声が聞こえたとかで此方へ向かって来てくれたのですが、抱き起している業者さんに驚いて居る様です。


「取り敢えず降ろしてだな」


 うん、それ無理。

 今私達が居る玄関、床が既に氷漬け。

 わーぉ、準メリーの魔力がてんこ盛りで氷の層が何重にも重なっているよぉ~。しかも先程から隣からバチバチやらドンッやら、時折爆発音がするんですが、これ玄関とか大丈夫何でしょうか?


「恐らくこの騒ぎの原因は、メメントリー準男爵令嬢とキャムデン辺境伯伯爵令嬢だろうな」


 キャムデン辺境伯伯爵令嬢とはシモーネ・キャムデン辺境伯伯爵令嬢のこと。

 準メリーの派閥が縮小されてしまい、代わりに出て来たのがこの辺境伯伯爵令嬢近の派閥らしい。そしてこのご令嬢、おば様情報ではユウナレスカ様の親衛隊らしく、ワザとらしくしな垂れかかる準メリーに激怒しているらしい。

 尚このご令嬢『烈火の乙女』等と言う2つ名があり、中々激しい性格をしているとのこと。

 勿論これも厨房のおば様方の情報です。

 ほんっとおば様方の情報網半端無い。


「レナ」


「はい!」


 一先ず広がりつつある周囲の氷の層の魔力を根こそぎ奪い、業者さんを寝かせる場所を確保。それと少し気合を入れる。そうじゃないとあの飛び交う火の弾は危険だ。

 と言うか―…


「ニキ様、あの火の弾壁やら物やらに当たってますけど、何故火事に為らないんですかね?」


 不思議な事に飛び交う火の弾、多分火の攻撃魔法だと思うんだけど物に当たると何事も無く消失する。そして一切火災には為らない。


「あんな常識外れた火をぶっぱなす馬鹿は一人しか居ない」


 何でもシモーネ様は変わった火の性質をしており、任意の相手にしか火が付かず、他は全て触れると消失するらしい。って、どんなチートなんだよ!あれか、これで美少女ならチートなライバルになっちゃうんじゃないの?

 それならと飛び交う火の弾に触れるとシュン!と言う音を立てて消失するのを確認し、一旦ニキ様が閉じた玄関の扉を開けて廊下に出る。すると既に何人か廊下の先で避難と野次馬をしているのか、数人の生徒が顔を覗かせている。って、おば様達~っ!厨房のおば様達、皆戦闘装束(エプロン姿)で、鍋やらバケツやらに水かお湯を入れて持って来ているんですか!?

 対応早っ!

 そしてフォーカス様は何故に塵取りを持って控えているんですかね?拘りの職業である用務員のお兄さんの作業中でしたか?



 コッソリと隣の玄関である壁から伺うと、此方側からは見えないが声が大きく反響する。

 ちなみに業者さんは隣の玄関に寝かせて来たけど、先程会ったフォーカス様とおば様方に預けて来た。今頃対処してくれているだろう。それに準メリーが気合を入れて張った氷の層に数人の犠牲者が靴底がくっついて離れないと言う荒業を喰らってしまい、脱出出来なくて困って居た人達をニキ様と共に救出し、その人達も同じく後方へ避難させてフォーカス様に預けて置いた。

 きっと犯人である準メリーと辺境伯伯爵令嬢は、後程靴の修繕代金か買い替え代金請求されるだろうなぁ。

 何せ一人結構高そうな靴を履いて居た生徒が居たからね。多分親の階級はそこそこお偉いさんでないかなぁ、ニキ様が顔見知りらしく普通に話し掛けて居たしね。


 …まさかジン・アメイジング様で無いよね?

 似てる気がするんだけど。

 私には関係無いけど、隣国のお偉いさんだとしたら色々拙いですよ、準メリーにシモーネ辺境伯御令嬢様?



「邪魔なのよ貴女!」


「何ですってぇ!貴女こそ邪魔なのよっ!」


 うわ~…女の闘いです。戦闘ですよ戦闘。これが銭湯なら平和的で良いんですけど、てか是非銭湯にして下さいよ。珈琲牛乳が飲みたいんですよ。もしくはイチゴ牛乳。あれ美味しいんだよね~湯上りに飲むと丁度良くて心地よくて、きっと頭がスッキリして戦闘も止めると思うんですよ。


「レナ銭湯好きなのか?」


 好きです。かなり。湯船最高。


「よし、今度王都の良い銭湯連れて行ってやる」


 わーい!って、今それ所じゃ無いでしょ!

 靴箱の裏に隠れて潜んでいるんですが、何だかニキ様が素っ頓狂な事を言って居るのはスルーするとして、兎に角周囲の氷だけでもと魔力を吸収します。ちなみにさり気なくデートに誘って来たニキ様、何が不満なのかムスッとした顔で、


「俺と行くのは嫌なのか」


 とか妙な事聞いて来ますよ。

 今それ所じゃないっつーの。


「だがな、そこのフルーツ牛乳が中々味が濃くて美味いんだ。それに女性に人気のコラーゲン牛乳が好評でな」


 なぬ!?コラーゲン!

 それは乙女の希望の名前!

 美肌の友!

 そして前世からの憧れぇええ!

 今世のピチピチお肌の十代には不要かと思われるなかれ!憧れなのだー!


「ああ、肌がモチモチになると言うぞ。何でも女性の肌がしっとりつやつやになると人気で、先着30本しか毎日仕入れられ無いのだとか」


 ぬぉおおおおおおおおっ!

 行きましょう行きましょう!是が非でも行きましょう!なんなら明日の朝でもぉ!


「よし、約束したぞ。明日は流石に学園があるからな、週末の早朝にでも行こう」


 はいいいいっ!

 やったね美肌げっとぉおお!


 あ、そんな場合じゃ無かったぁー!


「止めないか二人とも!」


「「ユウナレスカ様!?」」


 うわーユウナレスカ様が来た途端、シモーネ辺境伯伯爵令嬢が大人しくなり、準メリーは準メリーで振り翳していた手を慌てて後ろに隠した。って、あー長い。シモーネ辺境伯伯爵令嬢って長いわ。もうねシモちゃんでいいやって下ネタっぽいなぁ、乙女にそれは無いか。よし、モネちゃんでいいや。自分の中で呼ぶならそれでいいよね。


「(声洩れてるぞ)」


 って、ヤダー!

 何声に出しちゃってるの私!

 て、ニキ様声潜めてますね。小声ちょっとセクシーなんで小心者の私はビクビクしちゃいますよ、主に怯えの意味で。後で貴族令嬢としての勉強特訓追加とかしませんよね、ね、ね?


「(レナはほんっと、顔にも声にも出すな。貴族令嬢としてはまだまだだな)」


 うへぇ、ほっといて下さい。

 と言うか男爵家三女なんてほぼ庶民ですから。しかも実家が超絶貧乏でしたから、どう転んでも庶民でしょうに。


「(…)」


 何でそこでダマルデスカ。

 何か私に言いたい事でもオアリデスカ?

 何故じっと凝視するかなー!?





「アメリー、お前は学園に復帰したばかりだろうが」


 おおぅ、此方が妙な状態になっている間に彼方ではユウナレスカ様がお二人を叱ってますよ~。イケイケ、ユウナレスカ様。喧嘩してた準メリーとモネ様の二人を成敗してやって下さい!


「ですがユウナ様」


 ぶふぅ、ちょ、この国の第二王子様であるユウナレスカ様を略しちゃってるよー!私でさえしてないのにー!


「(お前は略し過ぎだ)」


 って、ニキ様何言っちゃってるんですかー!略するの脳内だけならOKなんですよ!


「(レナはそう言って準メリーの名を広めたと聞いているが?)」


 おうふ。

 何処から聞いたのですがその渾名。と言うか冤罪だー!確かに学内で浸透して行って居るって聞いてるけどっ!


「(俺が聞いたのは、レナがポロッとカフェテリアの厨房で漏らしたのを聞いた厨房のおばさん達が面白がって職員達に洩らし、それが徐々に浸透していったと聞いたが?)」


 なんですとーっ!?

 そんな話聞いて無いよ私!

 てっきり自然発生したのかと思い込んでたよ!


「(どう考えても準メリーなんて名前、レナ以外付けないだろうが)」


 えええー!?

 だってだって、準男爵だよ!?しかも名前がアメリーだよ?なら合わせてミックスっていうか合体させて準メリーでしょう?


「(その謎の三原則噛ますのがレナらしいがな)」


 うぇぇぃ。

 何故か憐れんだ顔で頭ナデナデ頂きましたよ。って、何故じゃー!一個年下ですからかね?ヨクワカラン。



「私を略す呼び名を許可した覚えはないが?」


 ジトリと睨むユウナレスカ様。

 うんうん、略す名前を異性に付けて呼ぶなんてこの国だとよっぽど仲良くないと出来ないし、まして婚約者がいる身なら尚更だ。

 婚約者以外の女性がその名で呼ぶなんて、どうみても窺わしい関係だと疑われてしまうからね。

 あのユリア様ラブなユウナレスカ様がその呼び名を準メリーに許可する筈無いよねぇ。


 しかもユウナレスカ様って、その略し方毛嫌いしてるんだよね。

 以前ユリア様とお話ししている時に偶々教えて貰ったんだけど、「レスカはね、”ユウナ”って呼ばれるのが嫌いなの。「女の子みたいだからイヤだ。レスカって呼べ」ですって。おかしいでしょ?」なんてとても嬉しそうにユリア様が頬をバラ色に染めて仰っていたんだ。

 あの時のユリア様があまりにも幸せそうだから、私もつい美少女の福顔キター!至福の時キター!なんて浮かれてたけど、遥か遠くから背後にギンギンに貫く殺気に気付いて血の気が引いたんだよね。ユウナレスカ様、ユリア様のストーカーか!こえええわ!



「ですがユウナ様!」


「二度と言うな」


「そ、そんなっ」


 準メリーがウルウル瞳を潤ませて懇願の眼差しで見詰めるけど、ユウナレスカ様が一刀両断に断ってしまった。

 おお~あの目は「面倒くさい」「黙れ」「ボケ」が含まれている侮蔑の目ですね。Mっ気が無ければ大凡受け入れにくいですよ。ちなみに私、ユウナレスカ様が嫉妬のあまり「ボケ」を頂いております。その発言直後、傍にいたユリア様に激しく叱られてしまい顔面蒼白でションボリしていた姿は未だに忘れておりません。

 あの時のユウナレスカ様、尻尾が下に下がってピルピルしていた幻覚を見てしまいましたよ。

 ちなみにユウナレスカ様は人間です。

 時折犬の尻尾と耳が生える幻覚が私には見えますが、まごう事無き人間です。ですがユリア様にさえ「わんちゃんっぽい」と言う称号を得てますが。


 ちなみに「二度と言うな」と言われた準メリーは兎も角、モネ様が勝利!と言う顔をしてニンマリと笑っております。ですがね、こう言った時のユウナレスカ様はコワインデスヨ。

 確実に叱咤が落ちます。だって喧嘩は二人以上居ないとおきませんしね?


「さてキャムデン辺境伯伯爵令嬢」


「は、はい!」


 下の名前を呼ばれて歓喜!と言う顔でユウナレスカ様の方を見るモネ様。でもね、次の瞬間顔付が変わるの早いわ~。そりゃそうだよね、だってユウナレスカ様はこの時間恐らく愛するユリア様との逢瀬の貴重な時間帯の筈だから。第二王子様とは言え彼は成人後にこの国の家臣として降格して働く事を誓っていて、今からその為の商会等を起こして居たり領地予定地の下見等諸々忙しく過ごして居ると聞いてます。書類も沢山あって、その合間にユリア様に会いに行っていると仲良くなったユリア様から直接伺っているんですよ。


 そりゃぁ、アアナルヨネ。

 わーぉ、血管が額に浮いてるね。

 と言うか親衛隊に入って居るならそれ位の情報ぐらい得て居なよ。

 普段自分の都合のいい事しか目に入って居なかったのかなぁ。


「私は・非情に・忙しい。言って居ることは分かるか?」


「はいぃ!」


 おおう、ビクビクと怯えてますね。涙目ですよ。

 そして準メリーは顔を上げろ。そして盛大に反省しろ。


「荒らしたここの清掃を二人で、いいか、ぐれぐれも”仲良く”しなさい」


「「え、で、でもっ」」


 おお~ユウナレスカ様流石!

 でも二人っきりにすると喧嘩始めると思いますけど?


「フォーカス殿に監視して貰うからな。後どうせ二人では終わらんだろうから、其処にいる厨房のおば様に協力を頼んで貰え。だが、ちゃんと二人で反省して清掃する事。これが罰だ」


 有無を言わさずと言う迫力で言うユウナレスカ様。

 でもね、清掃ぐらいなら罪が随分と軽いと思いますよ?


「ああ、それからメメントリー準男爵」


「え、あ、はい!」


 おろ?今までアメリーと呼んでいたのに名前ではなく苗字の方に変わった?よっぽど怒らせたのかも知れないなぁ。


「(ああ、やっと俺の忠告聞き入れたのか)」


 ん?何ですと?


「(準メリーを名で呼ぶと余計付け上がるから止める様にって何度も告げてたのさ。案の定ドンドン勘違いしていってしまって、面倒になったんだろう。良い機会だから他の令嬢と同じ様に今後接するだろうな)」


 ひょーこれは準メリー逆ハーレム形成失敗ですね。

 ほうほう、って事は…。


「(は?逆ハーレム?何だそれは)」


 うんうん、やっぱりニキ様、それにユウナレスカ様は逆ハーレム失敗なんですね、成程。

 だとしたらアレス様とケイン様の二名で逆ハーレム形成しているのかも。…ラベンダーの植木鉢の謎はあるけどね。


「(ケインからラベンダーの植木鉢貰ったのか?)」


 何だかえらい食い気味に来たけど?


「(え、はい。先日女の子にって貰いましたよ)」


 可愛いは言わない。

 だって多分先日の言葉は"ラベンダーの鉢"が可愛いって意味だと思うんだ。実際可愛いらしかったしね。


「(アイツ…)」


 んん?

 何だか苦虫を嚙み潰したよう様な顔付になったけど、はて?


「君はつい先日、カフェテリアの一件で謹慎を喰らって帰って来たばかりだよね?しかもその謹慎中に行儀見習いをさせられて来たと言うじゃないか。なのに何だい、もうトラブルを起こして」


「で、でもっ」


「言い訳は許さん。いいか、今回の事は学校側とも協議の上で罰を下す。だがそれまで君は、ここの掃除を終えたら自宅謹慎だ。いいですね、フォーカス様」


 ユウナレスカ様が背後を向いて顔だけだして事を伺って居た用務員のお兄さん、もといフォーカス様に伺う。

 ってフォーカス様居たのか。大方第二王子であるユウナレスカ様の手腕を見て居たんだろうなぁ。


「(いや、単に面倒だから傍観者貫くつもりだったと思うぞ)」


 ぶ。

 フォーカス様ってそう言う性格してるのか。


「(あの人は昔から唯我独尊だからな。お陰で結構ユウナレスカは苦労した)」


 ありゃ~。意外と苦労人何ですねユウナレスカ様。

 そして「何故こっちに投げる」って顔付で見詰めるフォーカス様。あー…イケメンが台無しだよ。ちゃんとこれも用務員の仕事ですぜって誰か言ってやって。そうすれば多分ヤル気出るから。


「フォーカス様。これも用務員の仕事ですよ」


 おおお、ユウナレスカ様が言っちゃったら颯爽とって言うかキビキビ歩いて来ちゃいましたよ。って、あの人どんだけ用務員の仕事大好きなんですか。

 ふっ、天職か、って何だか呟いたけど?


「ああ、構わん。と言うか本来は罰は学校側が伝えるのだがな、まぁ良いだろう。アメリー・メメントリー」


「は、はい」


 ブルブルと小刻みに震え出す準メリー。

 背後のざわめきが大きくなって来た気がするけど、恐らく誰か学園の先生を呼んで来たのかな?「先生コッチです!」って言う声が聞えて来たよ。

 そして動き出す厨房のおば様清掃戦士達。


「はいはいどいてー!」って、颯爽と箒やら清掃道具やら取り出して行ってるよ。

 あ、頭のボサボサな保険の先生、え~と確か名前がクリス・リストファー・クリスタル様だったかな。その保険の先生が先程倒れた業者さんを担架に乗せ、側に居た男子生徒と共に運搬して行った。後で業者さんのお店に連絡取らないとなぁ。後程保健室にも様子伺いに行かないとね。


「ここの清掃が終わったら速攻で自室で謹慎だ。沙汰があるまで大人しくしてろ」


「はい…」


 すっかり覇気が無くなった準メリー。それとは対照的にニヤリと口元を歪めるモネ様。嬉しいんだろうね~準メリーが居なくなれば自分の派閥をもっと大きくさせる事が出来るからね。でも多分そうは問屋が卸さないよ(これ二度目)。


「キャムデン辺境伯伯爵令嬢」


「はい」


 びくうっ!とその場で飛び跳ねたモネ様。

 呼ばれるとは思って無かったんじゃないかな~って、結構この人こうして見ると小物臭がするなぁ。『烈火の乙女』って言うより『劣化の』って改名した方が良いんじゃない?


「(あのなぁレナ、お前が言うと妙な名が定着するから口に出して言うのはやめろ)」


 って、あら~つい口に出しちゃった。


「(その口調もカフェテリアのおば様方みたいだから年相応にしろ)」


 って。

 えー、何それ無理。

 そもそも前世の記憶あるって辺りから今の年齢プラスって感じなんだけど、そもそも前世の年齢が幾つだったのか。そして死因が何だったのか思い出せないんだよねぇ。何故か乙女ゲームの内容ばかり思い出しちゃって、正直幼い時に『おお!?成り上がりチート!?それとも内政チート?もしかして無双チート!』と期待していたのに、結果は親父の搾取。


 クッソおやじぃいいいいいい!


 はぁ、虚しい。

 なんて思っていた事がアリマシタヨ。今は全くそう思いません。

 んが、禿げろおおおおおおおおおおおおおお!

 って言う呪いは時々飛ばしておきます、はい。


「キャムデン辺境伯、現当主に連絡する」


「え、そ、そんな」


「恐らくキャムデン辺境伯伯爵令嬢の境遇は落ちるだろう。それと自室で謹慎だ。確りと反省する様に」


「はい…」


 後でニキ様に聞いた所、シモーネ・キャムデン辺境伯伯爵令嬢様…あ~長っ!モネ様は実の父親とほぼ同じ年の男(五十代前半)を結婚相手として宛がわれ様として居たらしい。それを嫌がったモネ様は学園で良い男を見繕って来ます!と啖呵を切って反対する父を説き伏せて学園に来た。…のだけど、すっかり目的を忘れてしまったのか。婚約者がいる第二王子のユウナレスカ様に見惚れて親衛隊に入り、熱を上げていたのだそうだ。


「(これに懲りて大人しく為れば良いのだがな)」


 どうかなぁ…。まぁ自身の未来が掛かって居れば冷静に為るかな?だけど実家の境遇が境遇なんだよね。はぁ、何処の貴族の親もクソばかりか。


「(キャムデン辺境伯の場合は特殊だからな)」


 何でもキャムデン辺境伯の領地周囲はウチの実家の境遇とは違った意味で苛酷な地だとか。実家は国境付近に面しており、周囲は高位魔物が溢れる森で覆われていて、その最奥に魔物が住むダンジョンがあり、定期的に討伐しないとスタンピート、つまり魔物が溢れて領地の街に溢れて来てしまい被害に遭うのだそうだ。おまけに隣国の盗賊団が国境を越えて近くの街や村に旅人や商隊を襲うので気が休まらないのだとか。


 その為に跡取りは常に普通の男では向かず、戦える最強の強い者が望まれていると言う。


「(その為にキャムデン辺境伯伯爵令嬢は烈火の如く修業したと聞く。今は若干腑抜けになっているがな。だがこれで目が覚めるだろう)」


 ウチの実家も大概だったと思ったけど、上には上がいるんだなぁ。それにしても強い者で50台の伴侶は無いだろうに。十年も身体持たないんじゃない?この世界の事は良く知らないけど、って意外と長生きだなこの世界の人。前世の江戸時代の人達だと平均寿命が短かったと言うのに。魔法があるから比較的長生きなのかなぁ。


「(俺もそう思うがな、大方先方の…まぁ、そのな。キャムデン辺境伯伯爵令嬢が結構強いから、両親は子が、つまり孫が欲しいんでは無いか)」


 あ~…。

 ぶっちゃけ夫はどうでもいいって事かな。戦力になる男なら尚良しって事ですかね。

 だから50代でも特に気にしてないってワケか。

 モネ様頑張れ~。自分に被害が無い程度なら応援しますぜ。


「(ちなみにモイスト家も昔婚約の打診があったんだがな、親父が速攻で断ってた)」


 ん?何で?


「(親父曰く、「あの女狐の血筋の子等いらん」だそうだ。キャムデン辺境伯の女性は代々下手な其処らの男より強いからな。学生時代大層迷惑を被ったと言ってたな)」


 お疲れ様です…。



 ん?

 今一瞬何だかネチャっとした粘着質みたいな奇妙な感覚のある視線を感じた気がした。

 でも視線の先には下駄箱があるけど誰も居なくて。

 人が居るとしたら廊下の方でおば様達がせっせと…あ、やば。


「手伝います!」


「レナちゃんコッチ頼むわ」


「はーい!」


 おお、ニキ様までおば様達箒持たせて酷使してるって強いなおば様方。お貴族様相手なのに。ニキ様も悪い気はしてないのか、苦笑しながら周囲の氷の排除をし始めているし。


「レナ、氷は取っとくから魔力の撤去頼む」


「はい~!」


 おば様方がせっせとお湯を掛けたり散らかった箇所の片付けを仕出して、気が付いたらユウナレスカ様までせっせと雑巾がけをしてて。それまで傍観者をしていた生徒達も第二王子が率先して掃除をしていたものだから、慌てて手伝い出し始め出した。

 勿論準メリーとモネ様の二人も青い顔をしながらも黙々と片付けをしていって、あっという間に掃除は終わった。


楽しかった!次も見たい!と言う方は作者の励みになりますので、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します

m(__)m



領民A「なんかさー」

領民B「何だ何だ」

領民A「レーちゃんどうしとるとね~と思っての」

領民B「ああ、わかるの~」

領民A「昔みたいに領主が背中向けた瞬間、口パクで「ハゲろ」ってのがまた見たいのぅ」

領民B「ああ、わかるの~。こーんな田舎だから特に娯楽が無くって、よくレーちゃんの領主の罵りが日に何回かって賭したなぁ」

領民C「お前達集まって何してるんだ?」

領民A「いやーレーちゃんの想いで話さ。どーしとるかなってな」

領民B「例の領主への賭け事もな」

領民C「あれなぁ。懐かしいなぁ」

領民A「そーいやあの話知っとるか?」

領民BC「「何を?」」

領民A「領主様んとこの末っ子ちゃんが等々逃げたってさ」

領民BC「「おっしゃーーっ!」」

領民A「お、おお?」

領民B「こうしちゃ居れん、祝いじゃ祭じゃ!」

領民C「んだんだ!」

領民A「だが領主様や長男にばれたら…」

領民B「んなもん俺達だけで祝えばいいんじゃ!あのロリコンから逃れられた祝いじゃ!これが祝えないでおられるか!後で飲むべ!」

領民C「んだんだ!「なーに言うとるか、儂らも混ぜんかい」DにEにF!」

領民DEF「「「かーちゃん達も混ぜないと五月蝿いたろうからさ、俺達で祝いじゃ!」

」」


領民ABCDEF「「「「「「だな!」」」」」」



領主「何だか今晩はやけに領民が嬉しそうだな?」

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