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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。
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45 ユウナレスカ・アナジスタの思惑

「やっと行ったか」


「うふふ、レナちゃん人気者ですわ」


 ニコニコと微笑む婚約者を見詰めて居ると、胸の奥が温かくなってほんわかとした柔らかい様な気持ちになるな。

 対してニキとケインの二名はしかめっ面。

 露骨過ぎるぞ。顔をもっと引き締めんか。


「そんな事言ってもさ~レスカ~」


 ムスっとして明らかに不機嫌状態のケインに同意するのか、コクコクと頷くニキ。

 どうでも良いがニキ、お前さっきレナからサンドイッチ貰ってただろ。その上まだ食うのか。「足りない」じゃないぞ。


「いいな~ニキ、レナちゃんはちゃんとニキの為に作って来るんだもんなぁ」


 そう言うケインもチャッカリ貰ってただろ。


「でもさ~僕のはニキみたいに好物じゃないもん」


 それはお前が教えて居ないからでは無いのか?


「あ、ホントだ。でも僕好き嫌い特に無いや」


 だろうな、お前どんなに黒焦げでも食える奴だしな。


「あはははは、まーね。従妹の子の真っ黒な料理とか自分でも長らく良く食ってたな~って思うよ」


 あれは地獄だった。

 丁度一年前、ケインの誕生日に「手料理を持って来ました!」とケインの従妹が私達に『真っ黒に焦げた炭もしくは何か怪しい物体(異物)』を持って来て、ニコニコと笑いながら「食べて下さい!」と。

 何処の岩か魔物の毒かと思ったぞ、あれは。

 当人曰く「ケーキです」だそうだが、岩より硬い炭以外無かったし。

 それをケインがニコニコしながら「ありがとね~」と"何事も無く"口に入れて全部処理してくれたのだ。それ以前から此奴は悪食だと自身でも自負していたが、成程と納得してしまった。


 ちなみにそれ以降そのケインの従妹には会って居ない。

 私やニキやケインに執拗に言い寄って居たのだが、年が違う事と学園に入った事で疎遠になったのかと思って居た。だがその一件が理由で従妹の父親が(ようやく)叱り付け、私達に会わせない様にしてくれたらしい。

 今でもケインには時折手紙が来るらしいがな。


「あの子は今でも炭を作って居るらしいね、克服しようとしてるみたいだけど根本的に無理じゃないかな~」


 一体どんな材料を入れたらああなるのやら。


「いっそ炭職人のが向いてると思うけどね」


 それは言ってはいけない奴だ。

 と言うか材料が木材とかの類なのだろうか…。

 もし仮にまた同じような事があれば、次は人が食べる物を持って来て貰いたい物だ。


 ガルニエ家の執事であるアイオロスがレナを追っかけてニアスの方に向かったのを確認し、この場にニキとケインそれにユリアと私と言った四名になってから馬車の中へと移動する。

 護衛には休憩するからと伝えてから「少し話し合いもするので誰も入って来ない様に」と言い、表に騎士団の数名が護衛に付いたのを確認してから馬車の扉を閉める。

 更には簡易のだが結界を掛けて周囲に声が漏れない様にする。


「ん~こんなもんかな~」


 ケインが黙々と座席の裏や馬車の屋根の部分に仕込まれた小型の魔道具を見付け出し、次々と外していく。外したものはニキが少し調べてから分けて袋に入れて行く。


「多いな」


「だね~」


 私の隣にいるユリアは袋に入れられた魔道具に手を翳し、次々と『二度と作動しない様に』処置していく。


「レスカ、幾つかは隣国の製品ですが一部は我が国のモノですね」


 処置した魔道具を袋から取り出し、ユリアが次々と検分していく。

 その様をケインが見詰め、「製品番号の記号が違うの?」と質問している。

 ユリアは実はこう言った魔道具の事に造詣が深い。

 父親が外交官をしているからか幼い時から屋敷に魔道具が『外交的な敵』に仕掛けられたりしていた為、自ずと学んで対抗できる知識を深めて行った。その事が切っ掛けで私の婚約者となったのだが、まぁそれは今は置いて置く。


 ユリアを私は愛してるからな。

 決して知識だけではないのだ。


「製品の番号と言うのは我が国ですと統一していますわ。ですがこの番号は私、見た事が無い番号ですの。…表向きはですわ。裏では隣国のウィックロー国がこの番号を使用しておりますわ」


 裏か、決していい記号では無いな。

 何でもウィックロー国の裏組織が制作した場合、この記号が記載されて居る事が多いのだとか。


 ちなみにこの国と周辺国の魔道具はほぼナンバーが記載されている。

 不正を防ぐ為と言うのもあるが、番号を入れた際により精密な魔力を扱う事が出来て暴走しにくくなる小型の魔法陣が数十年前開発され、それ以降全ての魔道具に採用されている。また魔法陣にも同じように番号が記載されており、『旧式』以外は全てに番号が掲載されている様になった。

 最も『旧式』等今は使う者等非常に少ないだろうがな。

 何せ術式が安定せずに魔道具に仕組んだ魔力も月日と共に周囲に拡散されてしまう事が多く、その為に消耗しやすいのだ。


「やだなぁ…」


 珍しく、いや最近はニキとの抗争もあるからそうでもないのか?まぁそれは置いて置いて、ケインがとても嫌そうに呟く。


「どうした」


「盗聴器とか隣国の製品さぁ~何でかレナちゃんが居た場所に集中してるんだよね。しかも一つ何故かアナジスタ国製品のだし。何か意味があるのかな~てね」


 ちなみにレナが座ったのは決められた席では無い。

 偶然では無いのか?


「そうとも言えるけど~幾つかは多分だけど魔術で飛ばされて来た形跡があるんだよね。しかも馬車が走り出してからっぽいんだよね~。幾らアレクサ様が傍に居たからってちょっと変、と言うか妙過ぎるんだよね~」


 これは偶然か?それとも意図的か?


「それにさ~ユリア様も気が付いた~?」


「…はい」


「ケイン勿体ぶるな」


 ニキが嫌そうな顔をして急かす。

 はぁ、と一つケインが溜息をつき、


「番号の横にワザとらしく『A』なんて記載されているんだよね~今は行方不明のアイツしか考えられないよね~。何してるんだよアイツは」


 語尾で真顔になったケインに即思い当たる。


「…アレスか」


「うん、他には居ないよね~。魔術で飛ばして来たのはアレスだと思うけど、何を意図しているのかまでは分からないよ。でもまぁ一先ず生きてるって事は確かだね~」


「何をしてるのだ彼奴は」


 責務を置いて、とは言わない。

 恐らく今回アレスが姿を消した事はウィックロー国が深く関わって居るだろうから。

 アレクサ・ロー・ウィックローが今回我が国に亡命同然で来た事も、その件を未だに誤魔化して真実を話そうとしないアレクサ自身にも、恐らくアレスは関わって居るのだろう。


 チラリと横を見る。

 ユリアが心配そうに此方を窺って居る。

 その手にそっと片手を触れてから握るとほんのりと嬉しそうに表情が和らぐ。

 うむ、ユリアに心配を掛けてはいけないな。彼女には出来るだけ隣に居て微笑んでいて欲しい。

 ――憂いを与えてはいけない。


「この『A』が記載されている魔道具の発信地点はわかるか?」


「少なくとも王都からじゃないよ。でもこの中継地点じゃないと思う。そもそも中継地点のこの場所は村人全員地域密着型となっているからね、全員顔見知り所か何をしているという事まで把握されてしまうって所だから、余所者が来ると即分かるらしいし。そう言う所はアレスなら潜まないよ~僕ももし潜む事が必要となるなら中継地点は選ばないし~。うーんこれ以上は僕はわからないな~」


「となるとやはり終着地点の港町カモーリに潜伏しているってか」


 ニキがうーんと唸って黙ってしまう。

 此奴は思った事を深く考えずにそのまま口に出すが、決して悪い奴では無い。

 少し脳筋だが。いや、大分か。

 猪突猛進な所がニキの父親である騎士団長のアルビオンにソックリだしな。

 当初レナがその事を知らずに少し戸惑った事があるが、今は理解しているらしく気にして居ない様だ。つまり、時折何も考えずに発言するという事。

 だがそれがまた、的を射ている場合があるのだ。


「周囲の林とか森とかに潜伏してるって説はやっぱなし~?」


 ケインが一応考えて居る様だが、でも違うかな?と唸って居る。

 訓練を積んで居ない貴族の子が森や林等に潜伏など、普通は出来ないからだ。

 …ただアレスなら出来そうな気もするから否定出来ないが。


「無いんじゃね?俺はてっきりアレスの親父の宰相が『探さなくて良い』って言ってたからウィックロー国にでも行ってると思ったけど、それにしては違うような気がしていたんだよな。只のカンだけど。でだ、それなら近場じゃないかって思って。スタンピードの影響で交流が以前より途絶え気味なカモーリなら丁度いい場所じゃねって、ついさっき思った」


「人を隠すなら人混みの中っていいますわ」


 ユリアが感心したように呟く。


 確かに港町カモーリならここ中継地点の様な地域密着型とは違い、多種多様な人々が溢れていて身を隠すならその中のが一番いいだろう。

 その場合、王都の方が人が多い筈だ。

 ただその分王都ではアレスは貴族達やその関係者達に顔バレしており、それこそ人相を変えるか何かしないと身元がバレやすい。


 それにしても何故アレスは『隠れる』必要があると言うのだろうか。

 身の危険を感じて?

 だが何故だ。

 彼奴はアナジスタ国の宰相の息子だぞ。確かに政敵と言うモノは居るだろうが、微々たるものだ。むしろこの国の第二王子の私の場合のが立場的にも多いだろうし、我が兄のガーフィールドも何だかんだ言って面倒な相手が居るには居る。

 それにスタンピード以後姿を消したという事は、その前までは安全であったという事だろう。


 …駄目だ。

 考えても情報が少な過ぎる。


「ケイン」


「ん~?」


「以前頼んで居たアレスの屋敷で何か分かった事は無いか」


「一応今もまだ調査中。ニキのおば様のモニカ様にも依頼してるんだけど、残念ながら中々ね」


 僕も忙しいし。

 小さく呟かれた言葉に頷く。

 父親の魔法大臣が宰相が居なくなった事で仕事が倍増し、フラフラと真っ青な顔をして居たのを思い出す。私自身は妾であるキャメロン対策で住まいを王宮の隣の離宮へと移動したので忘れて居た。


 …今度何かお詫びの品でも持参しよう。


 ただ歩いて居るだけでも王都の情報が手に入ると言われている情報網持ちのモニカ殿でも掴めないのか。いよいよ何かありそうだなバーンド家。おまけに気に為る事もあるしな。



 それにしても困ったものだなキャメロンは。兄のガーフィールドだけでは無く、最近私にもチョッカイを出そうと切っ掛けを探して居るらしく、先ず手始めにとユリアをターゲットにし始めようと画策して来たので接触させない様に王宮から居を移した。

 隣の離宮なので場所は近い。

 だがキャメロンは入って来れ無い様に厳戒体制が敷かれて居る場所なので便利なんだよな、あの離宮は。元々は父上と母上が王位を継ぐ前に住んで居た場所で、幼い時私も過ごして居た場所なせいで居心地も良い。

 何よりこの離宮だと厳重な結界が張り巡らせているせいで清涼な空気が流れて居り、高貴なユリアが益々輝く。


 …時折煩悩が霞めて悶える羽目になったので困ったモノだが。



「そうか」


「でもね~一つ掴んだ情報で気がかりな事があるんだよね」


「む?」


「アレスの子飼いのまだ幼い執事候補が共に行方不明って事」


しまった!

8時に更新設定するの忘れてた!←


すいません<(_ _;)>

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