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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
3章  今日も学園はゴタゴタしていますが、何故か苗字が変わってしまってコッソリ鑑賞出来にくくなる様です。
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34

 その日の午後。

 お昼過ぎ。


「こーーんにちわー!」


 見知った声が聞こえて来る。

 でも私が居る場所は庭なのだけど、それに大声で叫ぶって。

 玄関先から結構遠いから、ここまで声を通すって?と思いつつ声が聞えた方に向かう。


「レナねーさーん!いるー?」


 やっぱりここか。

 庭に見える少し高い壁。その辺りからオルブロンの声が聞えて来る。


「門番らしき人が通してくれないの~!」


「いや、だから身分証を」


「そんなの、こーんなチッコイ子供が普段から持ってるワケないでしょ~?」


「ですがっ」


 うーんこの門番らしい人の声って昨夜名前を教えて貰ったけど、なんて名前だったかな…


「(この声は恐らくゴルボーンですお嬢様)」


 こそっとパーシャさんが小声で教えてくれる。

 助かった~!と思いつつ、


「ゴルボーンさん、その声は恐らく妹のオルブロンです。すいませんが今向かいますので玄関まで妹の案内をお願いできますか?」


 何か「おおおぉ~お姉ちゃんがお嬢様してる!」とか言う声が聞こえて来るんだけど、今の服装お嬢様な姿じゃないんだけどね~。

 以前市井で買ったちょっと良いワンピースだし、貴族のお嬢様が着るには安っぽすぎるよねぇ。








「お~レナお姉ちゃんお嬢様スタイ…うん?」


 あれ、予想と違う?とキョトンとして居るオルブロン。やっぱりこの服装だとそう思うよねぇ。


「あのね、昨日爵位を得たばかりなのに幾ら何でも無理よ」


「そう言えばそっか」


 てへーと嬉しそうに笑うオルブロン。

 そしてキョロキョロと周囲を見て、


「うん、確かにガランとしてるね」


 オルブロンが通って来た玄関も、そして今居る居間もまだまだ家具や装飾品が揃っては居ない。


「これから徐々に揃える事になりそうなのよね」


 一体どれぐらいお金が掛かる事やら。

 お金の桁を少し考えると背中から冷や汗が出て来て、末恐ろしくなる。

 きっと私が今迄稼いで来たお金なんて一瞬で吹き飛ぶ金額なんだろうなぁ。


「趣味の悪いモノは揃えて欲しくないなぁ…」


 うん、それは私もそう思うよ。

 良く分からない剥製とかは全面的に拒絶したいし、生き物の皮を剥いだ剥製とかも出来れば避けたい。


「お姉ちゃんやけに具体的じゃない?」


「ははは…さっき一騒動あってさ」


 少し前、コリンさんがこの殺風景な玄関を見て「先日のスタンピードで倒した魔物を幾つか剥製にしております。見目良いモノを此方に飾りましょうか?」と聞いて来たので全面的にお断りとさせて頂いた。

 だってスタンピードの時を思い出すじゃない?あんな怖い思いをした時の魔物の剥製なんて、毎回玄関に降りる度に見る等心臓に悪い事をしたくは無いのよ。

 そう言ってジーニアス兄さんに言うと、「わかった。俺もあの時の事は余り思い出したくは無いな」等と何処か遠い目をしていた。

 もしかしたら、先日多分問答無用でついてしまった二つ名の事でも思い出して居るのかも知れない。


「成程ね、それなら尚更趣味の良い品のが良いかもね」


 それにジーニアス兄さんも一度自覚すれば酷いのは飾らないでしょと話すオルブロン。


 しかし、何故…

 オルブロン、フォーカス様と手を握って居るかな?


「だって貴族街、私みたいな子供だと通してくれないんだもん」


 この王都の貴族達が住む街は貴族街と言って、一般人とかが住む場所とは門が置かれていて隔離されている。

 まず王都の中心に王族が住む城があり、次に城を守る様に高位貴族の家が囲う様にあり、公爵や侯爵次に辺境伯や伯爵、その次に子爵最後に男爵のタウンハウスがあると言った形になっている。

 ちなみに準男爵はほぼ貴族街には無い。

 何方かと言うと、貴族街の直ぐ横にある裕福な商人達が住む方に家を持って居る事が多い。


 そして我が家であるガルニエ家のタウンハウスは、男爵家なのに何故か伯爵家相当の場所に館を構えて居る。おまけに館の大きさも子爵から伯爵並みの広さ。


 新興の貴族だからきっとやっかみとか凄そうだな~…って思っております、はい。


 うん、頭痛いね!


 今朝も遠くからとか、門からウチの方を覗く人がチラホラ。

 その度に門番をしているゴルボーンさんが顔を覚えて居て、ジーニアス兄さんやメイドさん達に「あの方は〇〇子爵の関係者です」「あの方は男爵家の使用人ですね」とか教えて居たし。ただ直接の手出しは今の所は無いだろうと、先日レスカ様が言っていたので取り敢えずは傍観をしている状態だ。

 貴族は何よりも醜聞を嫌うからね。

 現に高位貴族と言われている伯爵相当からの偵察は無い様だし。


 それはさて置き。

 オルブロンここは室内だし、何時までもフォーカス様と手を繋いでいる意味は無いと思うけど?


「あ、これ?罰受けてるの、フォーカス様は」


 はい?罰?

 どうでも良いけどフォーカス様、挨拶以外口を開かないなぁ。とか思って居たら、


「…此処に来るまでにシリトリをしていたのだが、三度負けた…」


 何をしているのやら。

 そしてフォーカス様、すいません妹がご迷惑をお掛けして。

 そう肩を落とさないで欲しいなぁ。意外と負けず嫌い?


「いや良い。私も挨拶をしたかったしな。ただ学園が大変な状態になってしまっててな、修復するのに手が離せなくて見舞いにも行けずすまんかった」


 いえいえ、大変だったと聞いて居ますのでってオルブロンなに得意げな顔をしてるのかな?


「ふっふーん。だって~今日連れて来なかったら、多分フォーカス様はお姉ちゃんが学園に来るまで会えなかったんじゃないの?」


「それは確かに」


「ふふふ~フォーカス様私に感謝だね!」


 えっへん!と胸を反らしている妹の頭にフォーカス様は手を置き、グシャグシャと搔き回す。


「うぎゃー!何するんですか~!」


「ははは、お詫びだ」


「何処がですか~!」


「ははははは」


 …えーと何時の間にこんなに仲良くなったのですか二人共。

 確かにここ暫くオルブロンは頑張ってフォーカス様のお手伝いと称し、学園の修理の手伝いをしに行っていたのは知って居るけど、こんな風に為るものなの?


「それはなぁ…」


「ふふふふ~連日押しかけ女房しに行ってるんだもんね!」


「何が押しかけ女房だ。押しかけ掃除婦だろうが」


「え~年齢的に言って掃除少女?うーん八歳って幼女?」


「少女で良かろう。幼女だと世間体が悪い」


「あっはっはー確かに!」


 ええとーつまり、二人が言っている事を無理矢理訳すとこうなる。


 何とオルブロン、フォーカス様のお父様が学園に訪問しに来た時に、「フォーカス様のおとうさま!私にフォーカス様をお嫁に下さい!」等と言ってしまったそうな。


 それってどうなの…

 そして如何にオルブロンがフォーカス様を好きか、自分はまだ小さな子供だけど本気。そして後八年等あっという間だと熱心に説得。呆気に取られていたフォーカス様のお父様、それを聞いて大いに感激し、


「この変わり者にこんな小さいながらも見事な説得を出来る婿がー!」


 等と言って大いに喜んだ、と。

 いやいや嫁と婿立場が逆だろう。等と突っ込んだら、


「え~フォーカス様生活能力無いよ」


 ぶふっと咳き込むフォーカス様。

 ええ?いや、だって用務員って事は率先して働くから手先器用だよね?


「うーんそれは仕事だよね。フォーカス様ってば洗濯物は乾いたら乾いたでほっとくし、学園の掃除は確りやるのに部屋の掃除はあまりやらない。料理も自分で出来ないよ?」


 そう言えばフォーカス様、ほぼ学園の食堂カフェテラスに顔出し、毎食食べて居たような。


「だからここ暫くフォーカス様の掃除洗濯は私がしてるの。料理は流石にまだ腕が良くないけど、掃除と洗濯は実家で一通り出来る様に母様に教えられているしね。だからフォーカス様の服に皺が無いでしょ?」


 言われてみれば皺がほぼ無い。

 そりゃ座ったりしたら多少は付くけど、それ以外が綺麗に洗われ整えられていて見栄えが良い。


「オルブロンには感謝している」


「えっへっへーだったら私との結婚考えてね!私はお得だよ~?こーんなに可愛いんだから。しかも一途で甲斐甲斐しいよ!」


 積極アピールする我が妹。

 物凄い肉食系…?いや、この場合積極アピールか。

 そしてフォーカス様、了承してるの?


「それはまだ待てと言っている。流石に八歳の未成年相手にどうこうとは思えんからな」


「えええ~」


 ぶーぶーと文句を言うオルブロン。だけどそれが普通だと思うよ?


「ま、おとうさまには許可得たし。私は私で頑張る!」


 いやいやそれってどうなの。


「だっておとうさま言ってたもん。「こんな変人が結婚出来るなど奇跡!寧ろ天使!いや救世主!いっそ女神!結婚したら是非孫の顔を見せてくれ!いや、フォーカスを絶対に逃すな頼む!」って」


 フォーカス様のお父様、末息子に苦労し過ぎて居ないか?そしてこの台詞の後、「今晩はお赤飯だー!」と謎の言葉を残して去って行ったと。

 お赤飯ってどこの言葉よ…。



「兎に角今回は新しい御家を見に来たのと、お姉ちゃん達の顔を見に来たの。それとフォーカス様の事を報告にね」


 だから連れて来たって事なのね。

 成程。

 そして手を離さない様にする為、あざとくシリトリをしたな我が妹よ…


 恐ろしい子っ!









 * * *








 嵐の様な一件が過ぎ去り。

 今は午後のお茶の時間。

 前世で言うならばおやつの時間の様なものだ。

 そして私はと言うと、とある一室の机に突っ伏す。

 因みにジーニアス兄さんにディラン兄さんまでもぐったりしている。


 オルブロンの爆弾(?)宣言も中々だが、今後の事を考えて三人で頭を抱えて居る最中だ。


「ははは…あ~そう来るか~」


「まぁそんなもんかも」


「親父とカイデン兄さんだもんね」


 私達三人が頭を抱えて居る理由。それは三人が囲んでいるテーブルの真ん中にある手紙にある。


「無視でいいよな」


 じとっとした目でジーニアス兄さんが白い封書を睨み付ける。

 既に封は切られており、三人とも中身に目を通した途端一気に疲れが襲って来た。

 寧ろたった今、昨日の爵位授与の疲れが出て来た様なモノだ。


「賛成」


「私も」


 中に書かれて居たのは本当に予想通りの言葉だった。


「金を寄越せ」


 父からはコレ。

 呆れたけどこれはまだマシだった。


「三男の癖に男爵当主等生意気な。正当な長男は私だ。だから寄付として此方に寄越せ。それが正当な長男に対する礼儀だ。それとレナとオルブロンを返せ。ロドリゲス家に申し訳無いと思わないのか」


 これがカイデン兄さんの文の内容。


「親父のは兎も角、カイデンは籍を外れた私とレッティーナにとってはもう長男でもなんでもない。だがオルブロンがこのままだと危険かも知れない。今後の事も考え、後程許可が降り次第私の養女とする。そしてこの手紙は今後の為に証拠として押さえとくが、異論は無いな?」


「うん、兄さん無いよ~」


「自分はまだアレイ家だけど、もうこの文の内容だけでウンザリだよ。家抜けられないかな」


 真剣な眼差しで何処か遠い目で呟くディラン兄さん。


「しかしこの手紙って事はもう連絡が付いたのか、予想外早いな」


 どうやら実家に連絡を入れたのはディラン兄さんらしい。


 そしてディラン兄さんに帰って来いと一度も書いて無い辺り、実家は金の亡者だな。それだけ領地経営が火の車なのだろうか。


 一先ずこの件は後程ジーニアス兄さんの上司に相談、もしくは騎士団長に相談する事となった。何かあった際に迅速に対応出来る様にして置きたいしね。





オルブロン「狙った獲物(推しメン)は逃さない!」

レナ「恐ろしい子っ」



フォーカス「…。」


↑こう言う対応は初めてなので、どう対応したら良いのか分からない。以外と絆されやすい人だったと言う裏設定。

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