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遅くなりましたm(__)m
「お願いやめて!アレクサ様は私の命を掛けても死なせない!」
ん!?
どゆこと!
「クソッタレ!やっぱりなっ!」
準メリーの方を見ると、ジーニアス兄さんが急に剣を抜いて表面が凍って居る大地に向かって滑りながら走り、無理矢理騎士団共通の支給されて居る盾で飛んで来た魔術―…明らかにアレクサ様を狙ったと思われる火炎魔法を弾き飛ばした。
「ニキ!」
「あいよっ!」
ケイン様が咄嗟に呼んだ瞬間、ニキ様が石礫らしき魔法を展開して狙った相手を次々と潰していく。そしてその場から駆け出して行く。
「ケイン!レナ達は任せた!」
「OK~任された!」
そして何故かケイン様が私の右手を握り―…
「え?」
驚いてしまった私に、ケイン様がニッコリ微笑み、
「ニキに頼まれたからね~♪んじゃいっくよ~!」
「え、え、え、…ええええええええええええっ!」
私の手を取ったケイン様がツルッツルッの地面をスケート宜しく滑りこみ、私がこけない様に左手で私の腰を支えて突っ走る。と言うより滑っていって居ると言った方が良いのかも知れない。
「ひゃっほー!」
そして次々とニキ様の攻撃を掻い潜った魔術に向かって風魔法を展開し、盾の要領で防いでいく。
「てめ!ケイン!何レナの腰にっ!」
「え~だってニキに任されたし~っこんぐらい役得無いと結構辛いんだよ~魔術を防ぐのって。って、ニキ目を離すと危ないよ~」
辛いと言いつつ私がこけない様にさり気なく添えられているだけなのにね。
意外と紳士なんだな~ケイン様って、普段茶目っ気があってお話し好きの可愛い少年って感じなのに。ゲームとはすっかり別人と化してしまっているなぁ。
「げえええええっ!?」
危ないと言われたニキ様は今度はニキ様にも標的を定めたのか、刺客からも次々とニキ様にと強烈な魔術が狙い撃ちにされていく。勿論合間にアレクサ様へも魔術が飛んで来る辺り、刺客は一人二人では無く、何十人も居るのでは無いだろうか。
そうして次々と何重と向かって来る魔術に、ケイン様はアレクサ様や準メリーに当たらない様に魔術を展開させる為に接近する。
ちなみに私には魔術を避けるのは要らないと言ったら(吸えばいいから平気)、「ん~ニキと約束したし、一応僕も男だからちょっとだけ格好付けさせてね~」と言ってキチンと私の分も対処してくれた。
うん、ちょっと格好良い。
「ケイン様!?」
驚いた顔でケイン様を見詰める準メリー。
ちなみに私には『誰?』って不思議そうな顔をされたけど、多分覚えていないんだろうな~。何せ乙女ゲームには一切名前が出て来ないただのモブですからね。
うん、覚えなくていいよ?
モブはモブらしく裏方に徹しますから。
今はちょっとだけ表舞台に躍り出てますけど、只のモブなので気にしないで下さいね。
―…なんて、口に出して言えないけども。
「一先ず障壁展開してるから~氷の魔術解いてくれない?僕の足が冷たくて悲惨なんだけど」
見るとケイン様の足元が本当に悲惨な状態、つまり凍り付いて居る。
これ、凍傷とか大丈夫なんだろうか?
ちなみに私には一切障害が無い。
今でも準メリーの氷魔法は私の足元まで来ているけど、途中で止まってしまう状態になっている。
…うん、勝手にちょっとだけ彼女の魔力を私に影響が無い様に吸っているからなんだけどね。そうでもしないと私まで凍り付いちゃうし。
「ご、ごめんなさい。私上手く操れなくて…」
つまり止められない、と。
よく見るとアレクサ様も微妙に凍って無い?辛うじてお顔の部分は大丈夫そうだけど、手足の先が少しだけ霜っぽいのが付いてる様な気が…ま、まぁ死ぬより良いよね。
ミナカッタコトニシヨウ、ウン。
凍傷?
…シランガナ。
死ぬよりましデショ?
「仕方ないな~レナちゃん補佐宜しく~」
「ええっ!」
「出来るでしょ?僕の足元だけでも頼むよ」
「うっかりしてケイン様の魔力吸っちゃうかも知れないんですけど…」
「ん~それはそれ、かな。取り敢えず魔術展開して防いでる方を吸わないでいてくれると助かるかな」
うん、それぐらいなら出来るかな?
最近はデュシー姉さんを探していて、魔力の扱い方とか少ししか訓練して無かったから上手くやれるか不安だけど、うん、よし。
魔術を展開し始めたからか、腰から離れた手の方、ケイン様の左側に立って準メリーと倒れているアレクサ様の前に移動し、アレクサ様の霜焼け防止の為とケイン様の足元に覆っている準メリーの魔力を吸う。
「え…」
その際気が付いたのか、準メリーが「あの時の」と小声で呟いた声が聞えて来たけど後ろを振り向かずにスルーして、ケイン様の足元の氷の魔力を全て取り除く。
「あ~助かった!これで集中出来るね!」
良かった良かった、どうやら無事に準メリーの魔力だけ引き受ける事が出来た見たい。
どうでも良いのだけど、乙女ゲームの中ではヒロインは聖女と為る筈だったから氷系統の魔術だけでは無く、聖魔法も後に使える筈なんだけど。時期尚早だからまだ使えないとかなのかな?
えーと何時使える様になったんだったっけ…?
それは兎も角、無事出来てホッとして居ると、
「でもね~悪いんだけどレナちゃんにアメリーちゃん、魔術は防げるけどあの数は流石に無理そうだなぁ~僕」
あはは~と若干引き攣った声で笑っている先に見える魔物の数。
それらがジリジリと一点のみ見詰めて向かって来る。
「アメリーちゃん、其処にいる隣国の王子様ってば変な匂いしてない?」
「え?」
「あ~血とかじゃなくてね。さっきからちょっと臭うんだよねぇ、薬剤の匂いがプンプンと。何か撒いた?」
「いえ、私はなにも」
ブンブンと首を左右に振って否定する準メリー。
「という事は馬車に乗って居る時からかもねぇ~」
アレクサ様当人に振り掛けたモノなのか、それとも彼が持って居る品にそう言った物があるのか。準メリーに探って貰う事にして彼の事は任せる。
何だか探る時顔を真っ赤にし、「こ、これはあくまでも任された事であってぇ」って何だか上擦った声が聞えて来た気がしたけど、うんキコエナイ&キニシナイ。
プルプル震えながら「ふわゎわゎゎ、お、お肌が白いぃぃ~」とか鼻血が出ていた様な気がしたけどキニシナイ。
気にしたらダメだ、多分。
本来の乙女ゲームの純情可憐(?)なヒロインのイメージが完全崩壊しているけど、スルーしよう、是非ソウシヨウ。
「レナちゃん~僕がある程度魔術を防ぐけど、流石にあの魔物達の数は無理。魔力が持たないや。何か案は無い?」
「ええと、私が飛んで来る魔法を吸い尽します」
「出来る?」
「此方に来るぶんだけなら何とか」
「そか、んじゃ僕ちょっと頑張ってみるよ」
ニッと悪戯っ子の様に笑うケイン様。
う~んこの表情、スチルで見た気がする。
この表情がゲームでの彼、ケイン様のスチルにとても多いんだよね。愛らしいんだけど癖がある、それでもって悪戯っ子が悪戯が成功した時の様な、そんな笑顔。
言葉悪いけど、前世の言い方をするならばクッソカワイイ。
カワイイは正義ぃっ!
それとは対照的に、ニキ様とジーニアス兄さんの二人は何時の間にかコンビを組んで居る様で、アレクサ様を狙って来る刺客の人達を次々と切ったり殴ったり魔術で応戦して倒していっている。
何時の間にか例の後輩コリンさんも戻って来て居て、怒涛の蹴り技を繰り出して居るので魔法が飛んで来る事が減り、ケイン様の負担も一気に減ったので私に頼んで来たのだろう。
うん、なら大丈夫。
私だってやれるんだからね。
アレクサ様を狙って時折飛んで来る魔法を吸い、その場で消失させて行く。
すると魔術を放った魔法使いや魔術師らしき人々から驚いた声が上がり、上がった途端場所が分かるのかジーニアス兄さんが撲殺…じゃなかった、剣の柄で殴りつけ意識を奪って行く。
刺客って言うぐらいだから姿を隠すのが上手いみたいだけど、驚いた時に出る声や息遣いで兄はドンドン見付けて行く。
その様子を見ていたニキ様が、「うわあ、えげつねー」と言いつつも同じ様に次々と倒していく。
えげつなさは正直同じにしか思えません。
背後から人にとっての急所に的確に攻撃し、意識を刈り取って行くところとかね。
その様を見てコリンさんが「さっすが先輩!」と言いつつ、今度は此方に向かって来て居た魔物をコリンさんが担当し始めて次々と蹴り殺していく。うん、この人なんで騎士団に入ったんだろう。もういっそ武道家でいいんじゃないだろうか。手にしている剣、軸にして360度一蹴して居る辺り、騎士の戦い方じゃ無いよね。
いや、とても有り難いですけども。
…それにしてもジーニアス兄さんとコリンさん、結構凶悪コンビなんじゃないだろうか。
おまけにニキ様も居るから悪化してるとかかな。
なんとな~く後から駆け付けて来た騎士団の人々が遠巻きに…あ、違った。兄が意識を奪った人を縄で縛り付けて行ってる。そして次々と担いで運び去って居る辺り、流石なのかな?
「ケイン様ありました!」
後ろを振り返ると小袋を片手に満面の笑みをする準メリー。
って、え。
その袋を掲げている小袋に向かって、いや、アメリー準男爵令嬢に向かって一羽の大型の鳥の様な魔物が急降下し―…
「危ないっ!」
気が付けば身体が動いていた。
【駄目じゃない、これではあの時見た光景と同じ】。
そんなような声が耳に聞えた気がしたけど、でも、私は何度も同じことをする自信がある。人が目の前で切り裂かれようとしていたら、それが例えあまり接点の無い人でも。私はあの乙女ゲームのヒロインが好きだったんだもん。憧れていたんだもの。
なら、助ける。
背中が酷く熱い。
うわぁ、やだなぁ。この服移動用だけど先月買ったばかりで結構したんだよ?丈夫で長持ちしますよって言う事で私のお給金の十分の一もしたんだからね。ああ、繕ったらもう一度着れるかな?う~ん私なんで自分の身体より服の事を心配しているのだろう。身に付いた貧乏性って奴かな。
はは、やだな~みみっちぃかも。
直ぐ計算しちゃうあたり、身に付いた貧乏性はどうしょうもな無いね。
「きゃああっ!」
準メリーの悲鳴が聞こえた途端、背中が先程よりも一気に熱くなり、喉から何か熱い液体がゴポリという音を立てて上がって来て口内を圧迫する。
抗いにくい嘔吐に似た衝動に眩暈を覚えた途端、全身が硬直して崩れ落ちる感覚を覚えたと同時に、思い出す。
「え…?」
徐々に視界が暗転していく最中、遠くからニキ様の悲鳴のような絶叫とジーニアス兄さんの叫び声が聞こえる。
「「レナぁぁあぁっ!」」
身体から熱が一気に冷えて行く。
外に溢れていく魔力。
これ、私の中にある魔力だ…
そして思い出す。
ああそうだ、このイベントは―…
「今助けるっ!」
アメリーの声が聞こえ、急激に逃げて行った私の魔力がナニカに押し戻されていく。
冷たい冷気と聖なる魔力。
あれ、アメリー準男爵令嬢…聖魔法使えるの…?
ねぇ、それって二年の時に使える様になるんじゃなかったっけ…?
柔らかい包み込むようなモノに覆われて行くのと共に、一気に押し戻されて行く魔力の流れに私の意識は其処でオレンジ色の色彩に包まれ、暖かい魔力と共に閉ざされて行った。
後1話あらすじをUPしたら2章目は終了となります。次の3章目は暫く時間が掛かります。1週間か10日程を予定しております。
暫く掛かりますが、この後もどうか宜しくお願い致します。
m(__)m
↓
領民A「のうB」
領民B「なんじゃA?」
領民A「暑くて死にそうなんじゃが」
領民B「確かに暑いの。川にでも釣りに行くか?」
領民A「ええの、それ。川に足を入れれば少しは涼が取れるしの~」
領民AB「「では行くか」」
領民AB「「……………」」
領民A「のうB、儂目がおかしくなったかの」
領民B「大丈夫じゃ、儂も同じもん見とる」
長男「親父、額にタオル乗せて風呂みたいに入るの止めてくれないか?」
領主「良いじゃないか、節約だ」
長男「(向こうでAとBが驚いているんだが…)」
相変わらず本編以外だとノホホンとしてる…




