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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
2章 今日も学園はゴタゴタしていますが、学園の外までゴタゴタしていて観賞しようとしてもどうやら無理な様です。
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 すっかり慌しくなってしまったモイスト家の館を後にしたのは翌日の朝。

 早々に旅立ちたかったのだけど手持ちの保存食とか無くなってしまったので買い出しに行かなければ為らないし、洗濯されてしまった服が乾くまでと待って居たら夕刻になってしまった。

 これ、もしかして仕組んで無い?

 等と思ってグラシアさんを見たらついーっと目線を反らされた。


 …ヤラレタ。


「仕方ありません、正直言うと情報が足りなくて坊ちゃま達をこのまま旅立させるわけには参りませんので」


「私だけで行きます」


「それも無理でしょう。貴女様が旅立つとなると、ウチのニキ坊ちゃまは意地でも付いて行きます。例え貴女様が抜け出してみても姿を眩ませて遠くに旅立ってもね。坊ちゃまはそういう方です」


 それに一度惚れてしまった相手には意地でも食らいつく所がアルビオン様そっくりで困ってしまいます、等と言われてしまった。


 あ~…まぁ、ね。

 ここ数日の旅の最中とか諸々の態度とか、流石に気付いていたんだけど、第三者からそう言われるとね。色恋は他所でやって欲しいんだけどなぁ。出来たら乙女ゲームの攻略者達の恋を覗き見したかった身としては複雑な気分になってしまうんですよ。だって、私今は答えられないし。

 好きかどうかは分からないのよ。

 おまけに実家云々もあるし、更に姉であるデュシー姉さんの身だって心配なのだから。


 最もご当人であるニキ様が今此処に居ないからグラシアさんも話して居るんだなと思う。

 ニキ様は朝食の後、無くなってしまった保存食の確保をしに行くといって出て行ったし、ケイン様は何かが気に為ったらしく紙とペンを借りて借りた客間へと向かって行った。恐らく手紙を書くのだろう。


「大人しく館でお待ちして居て下さいね?」


 とくれぐれも頼まれてしまった。

 言われなくても大人しくはしてるけど…部屋で無くても良いよね?



 一応部屋付きなのかな?のメイドさんに庭を散策しても良いかと尋ねる、すると難なく許可を頂いたので屋敷から出て庭へ向かう。ん、だけど…うん。えーと、彼方側に一人、向こう側に二人。そして背後にはぴったりとメイドさんが二名付いて居る。


 …まさか逃亡すると思われて居ないだろうか。

 いやいやしないよ?だって手ぶらですし、何よりここからどう動けば馬車乗り場へ向かうのか道筋覚えてないし。確かに馬車に乗って来たけど、絢爛豪華な馬車の内装に圧倒されていたので正直外を見て無かったんだよね。はっ!もしかしてそれすらもグラシアさんの策略とか。いや、無いよね。

 …無いと言って欲しい。

 脳内のグラシアさんがニヤリと笑みを湛えている気がするけども。





「レナ!」


「はい?」


 何だか慌ててニキ様が此方へ走って来るけど、ハテ何かしましたか?もしくは何かあった?


「部屋に行ったら不在だったからっ」


 あ~…もしかして抜け出したと思った?

 メイドさん達にちゃんと理由を話して庭の探索をさせて貰っているだけですよ?と話すと、何だかグッと喉に詰まった声。これはあれですね、メイドさん方に聞かずに突っ走って探していたという事ですね?


「う、ま、まぁそうなんだが」


 やっぱりね~。

 と言うか私そんなに突っ走って探しに行こうとするタイプに見えた、と。幾ら何でも右も左も分からない土地でそんな暴走する事はないですよ?大体この屋敷から出られる気がしないし、私の周囲を見てくれませんか?ぐる~と数人の人が囲んで居るんですよ。幾ら何でも多過ぎでしょ。五人だよ?


「…七人いるな」


 ぶはっ!

 あと二人気が付か無かったんですが一体何処にっ!


「隠密が二名程」


 ニキ様が指さす方向を見ると一人が木の上から手を出して来て、もう一人がいきなり目の前に現れた。うは、凄い技術っ!全然気が付かなかったよ!


「最近はロドリゲス家が過剰に反応しておりますのでね、レナ様はお客様故特に厚く護衛させて頂いて居るのですよ」


 これまたヒョッコリと現れたグラシアさん。

 いやいやいや、何処に潜んでいたの!隠密か!忍者かっ!全然気が付かなかったよ!


「ふふ、ニキ様まだまだですね。八人でしたよ」


「お前みたいな変態の域にまで気配を殺している奴等見付けられるか」


「それはそれはお褒め頂き」


「褒めてねぇ」


 喧々囂々(?)と話し合って居るニキ様とひょっこりと顔を出したグラシアさん。

 何だか年の離れた兄弟みたいだなぁ。


「おや、それはそれは」


「ま~そんなもんだよな。実際幼い時から面倒みられてるし」


「ええ。何せおむつの時からの付き合いですからね」


「…。」


 オムツという単語で露骨に嫌な顔をし始めたニキ様。

 確かにちょっとそれはどうかなとは思うんだ。特に私達みたいな年頃だと微妙な気分になるし。思春期ですからね?そしてコレ、恐らく狙って居るんだろうなぁって思う。この短い時間でグラシアさんの性格を少しだけ見抜いた私がジーと見詰めて見ると、「おや?」と言った顔で見詰め返される。


「お嬢様のご年齢にしては中々敏い様ですね。これはこれは…ふむ」


 勝手に納得し始めるグラシアさん。

 確かに前世で亡くなった年齢は残念ながら記憶に無いのだけど、精神年齢は前世の年齢+今の年齢で少なくとも20代中盤は行ってると思うんだよね。とは言え今世の事は只今急ピッチに学び中なので、現在は只の知識不足のおバカさんです、はい。

 特に魔法関係はさっぱりですよ。


「良いですかニキ様」


 何故か急に真剣な顔付になったグラシアさんにニキ様が「ん?」と小首を傾げると、ガシッ!とニキ様の両肩を掴み、


「くれぐれもレッティーナ様を逃しては為りません。良いですね!?この年齢でこれ程の方は貴族子女では中々おりませんぞ!しかもかなりの魔力量、決して逃しませんようにっ!」


 そう言ってグラグラガクガクとニキ様の身体をこれでもか!と揺すり始めた。








 * * *








「あのやろ~…うぇ」


 がっしりと揺すった後スッキリとした顔付で、


「私は仕事がありますので。お二人はゆ~くりと庭を堪能して行って下さい」


 と言った言葉を残して去って行った。

 だが私の脳内では「では後は若い二人で。フフフ」と言う幻聴が聞こえて来たのだけど、多分これグラシアさんの本音だ。あの人結構わかりやすい性格してるよねぇ。

 そして残された私と揺すられた事により乗り物酔いに似た症状でぐったりしているニキ様。

 そそくさと周囲に居たメイドさんが水や薬を渡したりして居る辺り、もしかして頻繁にあるのだろうかこういう事。


 それって執事としてどうなんだ…。

 最も他の執事を見た事が無いから(高位の貴族だと学園の学生寮に居るらしいけど、私はまだ見たことが無い)分からないのだけど。ユウナレスカ様の場合は御付きの人であるニキ様達が周囲に居るし、ユリア様の場合は護衛の人とメイドさん、稀に取り巻きが数名と言う感じで執事は見た事が無いんだよね。


 ゲームでも出て来たことあったかな~…ああ、あった。

 確かアレス様の王都にあるタウンハウスでヒロインが訪れるイベントに出て来た気がする。確かまだ成人前の子が御付きとしているんだよね。そのうち見れないかなぁ、結構かわいい子だったし。ただ獣人だったから街中には出て来ないんだよねぇ。

 最もその獣人の執事が居る時点で実はアウトなんだけど。


 だってその彼は…この国で禁止されている筈の奴隷だったからだ。首には奴隷の証の拘束の首輪が嵌められており、魔法契約で簡単には解かれない様になって居る。そして―…


 駄目だ、この先はモヤモヤと霞んでいて思い出せない。


「は~…やっと治った」


「大丈夫ですか?」


「ああ、もう大丈夫だ」


 すっかり元の顔色に戻ったニキ様の顔を覗くとバッと後退するニキ様。

 近過ぎたかな?

 顔を真っ赤にしてしまって、これは一寸悪かったかも。

 しかしニキ様、分かりやす過ぎる。

 ゲームのニキ様もヒロインと親交を進めて行って、徐々に暗い雰囲気から元の明るい性格を取り戻した後、こう言ったスチルが…



 …


 ……


 ………うん。


 一年早い気がするけど、何処かの庭園でこんな感じのスチルがあったわ。

 真っ赤に染まってこう言うんだよね。


「ま、待たせたな」


 いえいえ。

 待って居た訳でもないけど、体調が悪い人、しかも知人をこの場に置いとく程冷酷では無いのですよ。なんて言えないから心の中でこっそり思うのだけど。


「声に出して居たらコッソリには為らないぞ」


 ガックリしながら言われてしまった。

 どうやら声に出して居た様で。何かスイマセン。


「まぁ良いか。折角だから案内してやる」


 やっぱり言った。

 あのスチルの場所が何処か良く思い出せなかったのだけど、恐らくニキ様の実家のこの庭園なのだろう。そしてニカッと笑ってニキ様は私の手を取り、連れ立って行く。


 本当ならこの手を離さなくちゃ行けないのだろうけど、何故かその時の私はニキ様の手を放すと言う選択肢が無かった。




 どうして、かな。

 姉を探している筈なのに、心配している筈なのに。

 少々胸がコトンと音を立てて高鳴ったのは何故なのだろう…。








 * * *








「月に吠えろ~!」


 等と部屋の窓を開けて外に吠える。

 うん、無意味な事ですよ。

 ですがナニカ?


「レナちゃん負けたからって窓開けて叫ぶのは女の子としてどうかと」


 言ったな?

 言っちゃったな?


 夕飯過ぎて旅の支度も済んで、今後の事とか明日以降の旅の行程とか三人で話し合って居たのだけど、その際「王都から出た時とは違って今度の旅は急いで行動しなくては為らない。だから市井の馬車は使わない」ってそれってどうやって行くの!?歩き・走り?とか思って居ると、


「モイスト家の馬車を使う」


 は?

 モイスト家の馬車って…。

 あの派手な奴!?


「気にしなくていい。モイスト家の家紋が無い一般向けの馬車を使う。内装はちょっと一般向けでは無いがな」


 ニキ様とケイン様お尻痛がっていたモノね。


「あれはちょっと無いなぁ…」


 ってケイン様。

 思い出したのかウンザリした顔付になっていますよ。

 でも馬車なんて私御者した事無いから出来ませんよ?


「それは大丈夫。幸いな事にグラシアが付いて来るそうだ」


 部屋の隅で控えていた(やっと執事らしい姿が見れた気がする)グラシアさんが此方を見てニコリと微笑む。


「それともう何人かね~」


 一応何かあった時用にと護衛を一人、それとメイド兼護衛を付けるのだそうで。

 って、メイドで護衛?


「出来れば傭兵も雇いたい所ですがね」等とグラシアさんの声が聞えて来たが、モイスト家にある一般向けの馬車には余り多くの人数は乗せられないそうで。

 つまり護衛とメイドさんと私達三名にグラシアさん、合計六名か。


「その分の荷物はもう用意してある。後は明日朝食が済み次第、王都付近の近隣の町まで強行突破かな」


「道すがら村や町には入って情報得た方が良いね。スタンピートの件もだけど、レナちゃんのお姉さんも流石に王都付近まで来れば魔物達の事は耳にするだろうし、皆誰しも止めるだろうしね」


 ふむ、と頷くニキ様。



 そんな事が先程あったのです、ハイ。

 そしてこのままの状態だと不安でしょうと、半ば無理矢理強引にグラシアさんの提案で急遽『ババヌキ』(流石乙女ゲームの世界、トランプあったよ…)やら大貧民やらポーカーやらをグラシアさんとモニカ様を混ぜてやり始め、大貧民で何度やっても…な結果に陥りました。


 くそぅ、何て事だよ攻略対象者。

 こんな事まで上手いなんて流石だよ攻略対象者。

 そんな最中に混ざっても悉く勝ち抜くグラシアさんの手腕も恐ろしいよ!


 で、ムシャクシャしたので吠えました、ハイ。


「うわーんニキ様のばーかー!」


「なっ!」


 ハイ、先程ババ抜きでもニキ様に勝てなかったからなんですが、もうね。ニキ様鬼か。視線誘導とか何とかあるんじゃない?って程勝てぬ。お陰でババ引いちゃったじゃないかっ!ぐぬぬぬぬっ。


「あのなぁ、俺のせいじゃないからな」


 あの額の端っこに生えてる髪の毛一本抜いてやろうか。


「何か怖い事考えてる?」


 ケイン様それ正解。

 禿げろとは言わないけど一本ぐらい抜いても罰は当たりませんよね?


「何を考えて居るのか分からないが、頼むから止めてくれ。心臓に悪い」


 え~。でも一本のみ凝視してやろう。

 そこんとこ抜けろ~抜けろ~。


「その台詞さ、真夜中寝てる時に聞こえて来たら怪談っぽくて怖いよね」


 其処から何故かケイン様の独壇場になった。

 何故だ。

 何故そこで怪談になるのだ。深夜、海辺から浮かんで来る白い手に顔、そして足が無い…以下略。




 ぎゃああああああ!


「足が無い烏賊って怖いよねって、あれ、レナちゃん?」


 かるーく意識飛ばしてしまったのは、頼むから内緒にして下さい。


こんなんでも面白いよ!と思って頂けたら、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します

m(__)m





領民D「何かの~」

領民E「どないした?」

領民D「おらほの嫁こさ聞いたんだけど、最近領主様変なんやと」

領民F「ほう?」

領民D「何でもおら達が集まってるとの、「拝まれんかな」とか言うてるらしいのぅ」


領民EF『それ、わ(俺)も聞いたのぅ』



領民D「ABCG達のせいかの」

領民EF『んだの』

領民D「わも祈るかの」

領民E「せば、わも祈るじゃ」

領民F「わも混ぜてけ」


領民DEF『せーの、儂らがハゲませんよーに』




領主「…( ´∀`)」

長男「(親父嬉しそうだな…)」

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