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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
2章 今日も学園はゴタゴタしていますが、学園の外までゴタゴタしていて観賞しようとしてもどうやら無理な様です。
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「うひゃぁ~」


 背後からそれって女としてどうなんだ?って苦情が来るけど気に為りません。

 だって、うわあああああ!って本当は絶叫したかったのを堪えたんだもん。それ位ニキ様を迎えに来た馬車は凄かったのだ。これぞ『ザ・お貴族様の馬車』って感じるぐらい。


 王都で一度乗ったニキ様の馬車は、華やかな装飾より実質的なモノを取った感じで頑丈に作られていたのでそう驚かなかった。外観だけならユウナレスカ様の馬車やユリア様の馬車のがとても豪華絢爛って感じだったし。学園で貴族の送り迎えで時折見る馬車は派手さはある。あるけどこの国の第二王子であるユウナレスカ様やその婚約者であるユリア様の両名に対し、遠慮しているのかやや抑え気味だった様に思えた。


 何名か違う人も居た気もするけど、それはまぁ…結構な役職に付いて居る人達だったか、空気が読めない痛い人位だったしなぁ。


「レナちゃんはこういうの初めてだろうしね~」


「そうです。全く坊ちゃまは気が利かない」


「俺、集中攻撃!」


 ケイン様と執事のグラシアさんの二人がドンドンとニキ様に刺さる言葉を告げるって、グラシアさん目が怖いんだけど。ケイン様はニヤニヤしてるし、多分ニキ様で遊んでるのかな?


「デリカシーが無い」


「むしろ皆無」


「いっそ溝に捨てた」


「元々無い」


「いや、産まれ持って無いだろうねぇ」



「其処までいう!?」


 ニキ様が文句を言い出す。

 確かにちょっと言い過ぎかな~。

 でもこれって軽いじゃれあいみたいだから、私は大人しく沈黙しています。初見でこの内容に付いていけないだけだけどもね!


「走っている馬車の中で立ち上がるなんて行儀が悪いですよ、これは是非後程主に告げて躾をし直さないといけませんね」


 等とグラシアさんに言われてしまい、ニキ様は「ぐげ」とか妙な声を出して着席した。


「グラシア、今回の訪問はレナちゃんのお姉さんの捜索だからね。それが終わってからなら良いけど、それまではお預けにしてくれないかい」


「仕方ないですね、ケイン様がそうおっしゃるなら」


「俺の拒否権は…」


「「あるわけない」」


 ひでぇ…って呟いてニキ様遠い目をし始めちゃったけど、大丈夫なのかな?


「あはは、グラシアのニキ弄りは昔からだからねぇ」


 ってケイン様が言うけど、程々にした方が良いと思うよ?多分。庇って貰って言うのも変だけどね。






 本日二度目。


「うわー…凄い、豪華~」


 二度目にわたって豪華な光景を目にしたのはモイスト領の領主館、門の前。


 つまり入口。

 おおお、凄い。

 門から家が見えません。


 と言うか何処へ続くの?って感じに道があるのだけど、その道の両脇に薔薇園やらガゼボやら、しかも道のずーーーーと先に見えるのは噴水ですか?ってあったのか噴水。王都で見た事無かったから無いのかと思って居たけど。もしかして貴族街にはあるのかな?

 そして噴水の先にも続いている道。


「この道を少し右に行くと御母屋で、左側が使用人達の屋敷だな」


 ほうほう、分けてあるんですか成程~。

 お金持ちは違うねっ!

 規模がでかすぎてワケわかんないよっ!


「真っ直ぐ行くと領主館だな」


 三つあるのか建物。


「領主館の左側にはお客様用の館があります。本日はお疲れでしょうからお客様用の館へと向かいましょう」


 四つあるのか、凄過ぎる。

 実家の領地との違いと領主館の違いに圧倒され過ぎて疲れて来ちゃったよ。でもさ、もう叫ばないよ?


 …口は無意識に半開きになっちゃうけどね。


「そうそう、伝えて置くのを忘れておりました。レッティーナ様」


「私の事はレナでお願いします」


「分かりました。ではレナ様、昨夜当方で最新の情報を掴みました」


 なに?とニキ様が前のめりになる。


「お姉さまのデュシー様はこの領地に居た様です。ですが私共は困惑しておりまして」


 困惑?


「はい、私共の情報ではデュシー様は栗色の髪の色と瞳だったと伺っております。それにロドリゲス家の妾であると」


 一旦グラシアさんが私の方を真っ直ぐに向いて、


「ですが私共が掴んだ情報では、『旦那様とご一緒であった』という事、それと『白髪』であったと言うのです」



 ―は?







 * * *








 あれからお客様用と言うこれまたケンランゴウカ~としかもう言えないよってな部屋に一泊し、この世界初のフカフカフワフワなベッドで眠った。のは、イイ、ノダケド。


「…(絶句)」


 昨日まで着ていた服は何時の間にかお屋敷のメイドさん方に洗濯に出されてしまい、代わりにと出された服はどう見ても私のサイズ。


 うん、何故?

 ニキ様は兄弟に女性は居なかったし、話に出て来て居ないから一人っ子で無いかなって思うんだけど。ゲームの設定でも一人っ子だった筈だし。だとしたら、モイスト領に来るであろう私の為にわざわざ設えた、とか。

 どう見ても新品だけど。

 いや、まさか…まさかね?


 オカネモチコワイ。



 上質なドレスと言う訳でないけど、裕福な商人の娘の様なワンピースっぽくてとても肌触りが良い。

 …タ、タカインジャナイノかなこれ。

 ひぇぇぇぇ。


「お似合いですよ」


 と、今も三名のメイドさんが部屋にいて。一人は私の髪の毛をとても丁寧にブラシを掛けてくれて、もう一人は着替えの手伝いをしてくれて、最後の一人は髪飾りやアクセサリーをどれになさいますか?とニッコリと微笑んで差し出して来る。


 き、気絶しそう…っ!


「こ、こここ、こんな高価なモノをお借りするわけには!」


 今も手持ちの服を問答無用(それもそれで凄いが)で洗濯されてしまったからとお借りしたのだけど、これだって相当高価な筈!うっかり汚してしまったら弁償など出来ない。と言うか、アクセサリーとかこれ以上は私のゲシュタルト崩壊の危機!


「何言ってるんですか、これから朝食を食べに行くのですからキチンとした服装を致さないと」


 朝食頂くのにキチンとした服を着るのか。

 流石お貴族様デスネ!

 私も貴族な筈なんだけど、貧乏過ぎなのと規模が違いすぎてもう、圧倒されるだけだわっ!


「皆様待っておりますので」


 等と高過ぎる品の数々に意識が遠退いて居て、気が付いたら今迄付けたことも無い様な髪飾りやらネックレスとかあ!髪に飾られてるしぃー!何時の間に!メイドさん侮りがたしって、


 ぎゃーっ!


 ふ、ふぉぉ、ネックレスなんて前世で付けたことあったっけ?って位記憶が無いんですが、お、重い気がするっ。髪型もすっかり何時もの私では無く、アップにされてるし!ついてるアクセサリー可愛いけど!これきっととんでもなく高価なんじゃ!

 それに薄っすらと化粧………



 だ、誰コレ!?


 鏡の前でボーゼンとしていると、部屋のノックが鳴りケイン様の声がする。


「おはよ~準備はいい?」


 開けていい?と言われてメイドさん達が返事をしてから扉が開く。


「レナちゃ…」


 あれ?

 ケイン様がドアの前で固まって居る。そしてその背後に居たニキ様が同じく固まって居るけど顔が真っ赤って、ん~?


「お早う御座います。あの、お、可笑しいですよねやっぱり」


 うう~私だってこんな風にされたの初めてなんだ。鏡見て誰!?って思った位に。だからそうやって固まってないで何か言ってー!


「あ、うん。これは予想外と言うか、うん」


 やっと固まって居た状態から解れたケイン様。

 でも目が彼方此方泳いでいて、


「レナ、すげ、似合ってる」


 背後にいたニキ様も固まって居る状態から再生されたと思ったら、変な言葉を言い出した。

 お世辞は要らんですよ。固まってしまうぐらい変なんでしょ?とガッカリして居たら、ケイン様とニキ様の二人がヒソヒソと話し出して居て、


「ニキ、悪い。僕ちょっと本気になりそう」とか「てめえ」とかゴソゴソ話し込んでいる。

 …そう言うのは出来たらヒロインでお願いしたいなぁ。

 私はコッソリ覗き見して、表舞台には出ないで悶えてキュンキュンしたいんですよ、うん。








 * * *






「ようこそいらっしゃったアレイ家、モーリー嬢のご子女よ!」


 食堂に入ったら上座って言うのかな?奥に居る母様と同い年位の…いや、母様年のわりには見た目が若いからちょっと違うかも知れないけど、ほぼ同世代かな?な男性が両手を広げて大歓迎!っていう風体で席から立ち上がって…


 こっち駆けて来…って、ひえっ!?

 多分ニキ様のお父様であると思うんだけど、その人が私に抱き着きそうになった途端、執事のグラシアさんがご当主の顎にアッパーカットを綺麗にクリーンヒットさせ、ドゥッと言う音を立てて駆け出して来たニキ様のお父様らしき人は見事に床に沈んだ。

 …何だろう、これって。

 朝からコテコテで濃厚な吉○漫才劇場だろうか。

 そしてニキ様、ご自身のお父様を呆れた様に見下し(?)、


「何してるんだよ親父」


 と冷めた目で見つめているし、ケイン様は苦笑して肩を震わせているし、撃墜させた執事のグラシアさんは何事も無かった様に…あ、違った。両手をまるで汚い物に触れてしまったと言った風に懐からハンカチを取り出し、綺麗に丁寧に拭って居る。

 それ、主に対してする態度じゃないよね?

 良いのか執事なのに…。


「は、ははは、ついな。いや、女性に対してする行動では無かった。申し訳ない」


 深々と私に対して頭を下げられてしまい狼狽する。

 いやいやいや、伯爵様であるご当主様がそんな簡単に頭を下げるなんて!と慌てると、


「良いのですよレナ様。この場合は主が悪いのですから。うら若い女性に、幾ら初恋の人の面影があるからと突如抱き着きに行こうだなど、神が許してもこのアーノルド・フレッチーノ・ドードルグラン・ブロジア・グラシアーノが許しません」


 おぅ、相変わらず長くて覚えられない素敵なお名前をペラペラと流暢にっ。と言うか、もしかしてニキ様のお父様、未だにウチの母様引きずってる?

 あれ。だとしたらニキ様のお母様は…?


「俺も許さねぇ」


「はーい僕も~」


 腕を組んで仁王立ちして居るニキ様は兎も角、軽やかな筈の声を上げているケイン様まで便乗して笑いながらだけど目が、目が普段にこやかな目がちょっと怖いンデスケドーッ!

 そしてそんな男性陣が修羅場(?)っている最中、まるで何事も無かった可の様にメイドさん達や使用人の方々がさささーっと周囲を片付け、朝食のセッティングをして居るんですけどっ!


 もしかして毎度の事なのですか!?

 こんな雰囲気が凍り付いて居ると言うのにっ!

 スルースキル高過ぎるよっ!


 そんな使用人と男性陣との何処か違う空気の最中、衣擦れの音を立てて一人の淑女、年の頃は二十代後半かな?な女性が軽やかなドレス姿で颯爽と室内に入り、男性陣を一目見て口元に軽快な笑みを浮かべてから此方をゆったりとした動作でもって見詰め、


 こっちいらっしゃい。


 と、言う感じで右手でおいでおいでをして来る。

 そしてメイドさん方や使用人の方がササーッと席を用意してくれ、私がその座席に座る様に席を引いてくれた。仕方ないとその場へ移動し、用意された座席へ座るとその女性が微笑みながら挨拶をしてくれた。


「お早う、そして初めまして。遠い所ようこそいらっしゃいましたレッティーナ様。昨晩はよく眠れまして?」


 未だ凍結状態、もしくは拮抗状態な男性陣をしり目に微笑んでくる女性。

 えーとニキ様のお母様かな?似てるような似て無い様な…

 目元を見ても輪郭を見てもちょっと分からない。もしかして違うのかしら?


「あら、私まだ名乗って無かったわね。私はモニカ・モイスト。其処の貴女に抱き着こうとしたロメイン王国騎士団の変態団長の、とても残念ながら血縁者で妹ですわ」


 残念とか変態ってと思って居ると、


「確かに変態団長ですね」


「変態だよな」


「だね~」


 グラシアさんにニキ様、最後にケイン様に止めを刺されてぐったり項垂れてしまうニキ様のお父様。って、皆完膚なきまでに抉って来るなぁ。そして誰も主である筈の伯爵様を弄るだけ弄って救わない。これももしかして何時もの事?


「いや、何時もの事では無くてな。まぁなんだ、私がつい猪突猛進してしまった時にこうなる」


「自覚してるなら直して下さい。毎度毎度貴方がやらかす度にストッパーになるのは私なのですよ?」


「ははは、すまんグラシア」


「笑い事ではありません。本来ならこの様な主に対して冒涜とも取れる行動は『執事』としては失格なのですからね?解って居ますか?」


「お、おう」


「全く。主を諫めるのも『執事』の仕事とは言え、私とて嫌々やっているのですからね」


 何だろう。嫌々と言う部分で一斉に皆が首を横に振った幻覚が見えた気がする。

 兎に角ニキ様の御実家は賑やかなのでしょうね。


こんなんでも面白いよ!次も宜しく!と思って頂けたら、作者のやる気が上限突破しちゃうかも?そんな訳で良かったら、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します。

m(__)m



領主「また拝まれなかった…」

長男「(それ以前に今日は悪天候で誰も外に出てないだろ…)」


領民ABCDEFG「うん?」

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