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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
2章 今日も学園はゴタゴタしていますが、学園の外までゴタゴタしていて観賞しようとしてもどうやら無理な様です。
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 御土産は何が良いかな~と思ったけど、いくら考えても良く分からないのでシドニー姉さんの店では扱って居ない果物を幾つか購入した。妊娠中って酸っぱいモノが食べたくなると前世では聞いた事があるからなんだけど、こっちの世界ではどうなんだろうなぁと思って果物屋の女性店員さんに聞いてみた所、


「幾つか見繕ってみるけど、どう?」


 という事でお任せした。

 そして何故かまたニキ様が勝手に代金を支払ってしまった。

 む~…


「こう言うのは男の仕事」


 そして現在一切荷物を持たせて貰えて無い。それはそれでお貴族様に持たせるのはと思うのだけど、「恐縮しなくていい」とバッサリ切られたので有り難く甘える事にする。そうしないと先程のジーニアス兄さんとの事を思い出し、不機嫌に為りかねなかったから。折角機嫌を取り戻し、今は何故か上機嫌になっているから機嫌を損ねない為に黙って居よう。


「お姉ちゃん!」


「オルブロン?」


 そんな私達を店先で見掛けたのか、末妹が駆け寄って来る。

 慌てている妹にシドニー姉さんの旦那さんが経営しているライリー商店の店頭まで引き摺られると、店頭もそうだが奥の方も数人の者達がバタバタと慌しく駆け巡って居る。一体どうしたのだろうかと店の様子を伺って居ると、何時の間にか離れて居たオルブロンが奥の方から姉であるシドニーを連れてやって来た。


 ここでは何だからと店頭から奥の応接間へと案内され、ニキ様と二人通される。

 その際ニキ様は姉であるシドニー姉さんにお祝いの言葉と無理を為さらない様にと気遣いを籠めた言葉を述べた後、お土産の果物を渡していた。勿論私も兄から頼まれた品を渡したのだが。

 うん、ねーさんねーさん、シドニー姉さん。

 カッコイイのは分かったから。思わずニキ様見てぽ~としちゃうのは止め様か。そして「レナ、逃がしちゃ駄目よ!」っておーい。オルブロンまで「お姉ちゃんはニキ様で私はフォーカス様を射止めるわ!」って、こら8歳まだ早いぞ。と言うか年の差考えてくれ。

 我が妹ながら恐ろしいわっ。


「手紙?」


「ええ」


 シドニー姉さんから渡された封書を見詰める。宛先と姉の名前は確かにある。だけど他は一切何も書いて居ない。

 それ所か文字が随分と美し過ぎる。

 代筆でもして貰ったのだろうか。


 この世界では前世で言う昔の貴族のたしなみと同じで、文字の美しい人が確りとした教養を身に付けているという事で見やすく美しい文字が好まれている。


 封が切られている封筒の中を見ると一言。


『たすけて』


 これ以外何も書いて居ない。

 しかも封書に書かれている文字とは明らかに別人の文字。

 ハッキリ言ってヨレヨレ。

 もしかしなくてもこれで確定だろう。

 つい最近まで文字を書いたことが無い人は私の知って居る限りでは2名存在している。一人は私の傍で心配そうに伺って居る末妹のオルブロン。そしてもう一人、この手紙を出して来たと思われる人は次女のデュシーしか居ない。

 確たる証拠は無いけど、私が知って居る姉であるデュシーなら今迄は名前さえ書けなかったであろう。


 何も知らない、教えられて居ない筈の姉のデュシーが、少しずつでも学べる機会を得る可能性があるのは妾になり、落ち着いた環境になり、姉の状況を理解した周囲の人に恵まれたなら…。


 勿論別人の可能性もある。けど、姉シドニーが私宛で心当たりのある人物も次女のデュシーしか居ないと言う。その際、「あの子、文字が書けるようになったのね」等と言った言葉に複雑な気分になる。クソ親父め…。


「通いの仕入れ業者が今朝来てね、旅の者から渡して欲しいと届けられたのよ」


 もしかしたらこの手紙は複数の人の手を渡って居るのでは無いかと思う。商人とは違って旅の者からって事は旅の目的地に付き、其処から更に他の旅人へと受け渡して貰う事が多いから。この場合だと善意に頼りきってしまうので着くか微妙だし遅くなるけど、賃金が発生しないから比較的安く済む。封書と中の紙だけで済むしね。


「夫のライリーが、王都にあるロドリゲス家のタウン・ハウスに出入りをしている商人の所へ先程行って来たのだけど…」


 軽く聞いた話だと、二女デュシーは子供をロドリゲス領で出産の後に行方不明になったのだと言う。


「ロドリゲス家は探していないのか?」


 ニキ様が思案顔で尋ねて来るけど、シドニー姉さんは妊娠中なのでこれ以上負担を掛けたくないんだよね。そう思って居たら従業員らしき女性に「奥様これ以上はいけません」と止められ、姉は休憩する為に部屋を辞して行った。


「お姉ちゃん朝からずっと青い顔してたから…」


 オルブロン、そう言う事は先に言って欲しい。










 * * *









 姉夫婦の店から出てから足早に歩を進ます。

 先程オルブロンに頼まれていた事を兄であるジーニアスに伝える為だ。


 先程の手紙は今朝届いたが、もしかしたら逃げ出して既に此方である王都に来ているかも知れない。それならば騎士団に勤めている兄ジーニアスに事情を話して探して貰った方が良いだろうという事になった。


 その際ニキ様に「では」と挨拶をして別れようとしたのだけど、乗りかけた船だからと彼は問答無用で付いて来た。


「それに俺が居た方が騎士団に顔が利くし」


 その割には兄には効果が無かった様ですが?と言ったら、


「あれはなぁ…」


 と、私の前髪をグシャグシャにされた。

 む~何故だ。





「赤子を連れた16~7歳位の娘か」


 近場の騎士団の詰所(派出所みたいで吃驚)にニキ様の案内で相談に行くと、兄はここの詰所に所属しており、今は警備中だけどもう少ししたら帰って来るとの事なので待たせて貰う事になった。その際一人の騎士の方に事情を話し、今は簡単にだけど調書を作成して貰って居る。

 デュシー姉さんの特徴を話すと奥から別の騎士の方が此処1ヵ月程の記録簿を持って来て、目の前で調べてくれている。


「ああ、頼む」


 これ結構特権なんじゃない?と思って冷や汗を流していたら、事情を聴いて居た騎士の方が「迷子とか行方不明の方の捜索は我々が行って居るので御安心下さい」と落ち着かせるように微笑まれた。


 うう、有難う御座います騎士様。


 ですがその、とても気に為るのですが…

 背後に居る『迷子』になったと言うお子様を探して欲しいと来ている若いお母さまが、ハートマークを周囲に飛ばしてニキ様を見ているんだよね。勿論共に居る異分子の私には嫉妬の目線が。


 せめて部屋を移動して調書をして欲しかった。

 受け付けはここしか無かったのだろうけどね。


「レナ!」


「ジーニアス兄さん!」


 事情を聴いたのであろうか、焦った様に息を切らせて走って来た兄を見付けた途端安堵の吐息を吐く。いやだってさ、あの迷子を捜して欲しいって言う若いお母さまじーとコッチを眺めていて居た堪れなかったんだよね。そして兄が来た途端「きゃあ」って。あの、貴方のお子様迷子なのでは?とか思ってたら、兄と共に来た他の騎士様にそのお母さま追い出されていたヨ。


 何でもジーニアス兄さんのストーカーだとか…。

 兄さんお疲れ様です。そして同僚の方もお疲れ様です。お子様云々は毎度何度も言う虚言だそうで、そろそろお仕置きをしないと不味いかと本日奥様の住所の調書を取って居たのだとか。


「デュシーの事を聞いた。今調べているか「先輩、調べ終わりました」お、頼む」


 兄の後輩と思われる人が、記録簿には姉の特徴に似た人赤ん坊を連れた人は何人か居たが、皆身元が確りとしており該当者は居ないと告げる。


「恐らくまだ来ていないか、何らかの事情で足止めを食って居るか」


 ニキ様の言う通りかもしれない。

 最悪この手紙を出した後、即座にロドリゲス家に見付かって連れ戻されて居る可能性もある。


 それにしても何故失踪したのだろう。

 妾と言う事が嫌だったのだろうか。

 何も知らずにクソ親父によって借金の片に差し出されてしまったから。嫌な考えは浮かぶのだけど、その考えは頭から振り落す事にした。


「もしかしたら何かの間違いかも知れないしな」


「でも兄さん、デュシー姉さんが嫌がって逃げ出したのだとしたらどうする」


「意地で救う」


「でも、相手は伯爵様の跡取りだよ」


「う」


「家みたいな弱小男爵家だとどうにも出来ないよ」


 おまけに親父のせいで借金返済まだ終わって居ないみたいだし。どれだけ借金があるのやら。

 それに私が出たらゲシュウ・ロドリゲス伯爵家跡取りに借金のかたに連れ去られてしまうかも知れない。末妹のオルブロンの身だって危険だ。折角実家から逃げ出して来たのに、戻りたくないよ。


「私、妾にだけは為りたくない」


 あのゲシュウのイヤラシイ視線とニタニタした顔と舌なめずりには耐えきれないよ。


「わかってる、俺もレナを引き渡したりはしない。いざとなったら妹全員連れて隣国へ逃亡するさ」


 にこっと笑う兄に安心する。

 すると背後から咳払いをする音が聞え―…


「もしかしたらウチの領土で足止め食ってるかも知れないからな、実家に連絡する。だからレナは心配するな」


 とだけ言ってニキ様は私の頭をクシャクシャとかき混ぜる。

 兄のジーニアスが「ん?領土?ん?え?えーっ団長の息子様!」とか言ってニキ様の顔をマジマジと見詰め、


「やっと思い出したか」


 とニキ様に苦笑されていた。

もし宜しければ励みになりますので、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します

m(__)m




領民A「今日も働いたの~」

領民B「疲れたのぅ」

領民C「だの~」

領民G「おや、なにしとーと?」

領民A「おお、ジージ来たか。茶じゃ~」

領民B「よってかんか、一杯淹れるぞ」

領民C「井戸端会議ならんジジイ会議じゃ~茶菓子もアルゾ」

領民G「どれ、御相伴に預かるとするかの」

領民B「珍しいツマミもあるぞ、川で捕まえた沢蟹じゃ。嫁が炙ってくれたわい」

領民A「だがのーその前に」

領民C「何時ものやるかの」

領民G「だな。だが今日はお天道様に向かってやらんか?」

領民A「たまにはいいかもの」

領民CB「「よし、やるか」」


領民ABCG「「「「ハゲませんよーに!」」」」


何処からともなく儂がの~と言う声が響く。




領主「今日は拝まれてない…」

長男「(拝まれたいのか…)」

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