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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
6章 今日も隣国はゴタゴタしておりますが、隣国だと乙女ゲームの舞台を鑑賞させて頂けないので萎えています。
109/110

83.3


「ねーねーおねーさん、そちらとお話中申し訳無いけどこっちのお姉さんが言っていたその赤いのとたーめにゅっくとコリ何とか?と、クミンを下さい。勿論そちらのお客さんの用が終わってからでお願いしますね」


 等と一部言葉が言い難かったのか、『たーめにゅっく』『コリ何とか』と喋ったのは何と狐獣人のドミニク君。その彼がニコニコと笑みを浮かべて「辛いのかな?」「美味しい?」「楽しみ」と小声で喋っている。

 そんな彼は耳を隠すように帽子を深々と被り、ピンで固定して風が吹いても飛ばされないように抑えている。更には尻尾を隠して居るらしく、つい先程見た時には出ていたフサフサ尻尾は残念なことに隠されて居た。


 かわいい顔をしてドミニク君って意外と辛党?と思って凝視してしまって居たら、ドミニク君の目線がチラチラと動く、動く。…うん。やーっぱり犯人と言うか、ドミニク君をお使いに出した辛党っぽいのはこの人だよね?


 ドミニク君の視線の先には半透明に見えるアレス様が、私の方を見てニヤリと不敵に笑った。


 うう、その笑顔流石攻略対象者、見目麗しいです。


 でもとっても怖いっ!


 乙女ゲームの惨殺シーンのスチル…何故あるのかって突っ込みをいれたくなったのは数知れず。勿論殺傷シーンなんて残酷なスプラッターな映像は隠されていたけどね?

 その変わり音が[ビシャッ]って、それってドウイウコトよ!?血飛沫飛んだよね?画面は真っ暗だったような気がするけど、[ビシャッ]って音必要だった!?乙女ゲームなのに殺伐とした音いらないでしょう~!?

 いやスプラッターじゃなかったのかな?うう~ん、記憶があやふやだわ。

 とにかく某掲示板のファン達でさえ、「ヤバい。あの鋭い視線超怖い」「瞳が異様」「流石殺人鬼」「冷ややかな視線が堪らん」「キレイな顔にあの視線、死ねる」と言われていたのを思い出したよ!後半は殺人鬼な彼でも好きって言うコアなファンからの台詞だろうけど、前半は同意見かな。


 ただまぁ、今のアレス様の瞳は冷たい感じは無いのだけど、どちらかと言うとレスカ様が悪戯を思いついた時の表情に似ている気がする。

 意外と悪戯っ子なのですよね、乙女ゲームではそんな気配等全く無かったけれど。それを言ったらケイン様もだし、ニキも。

 乙女ゲームの設定だとニキは特に暗く沈んでいて、悪戯するような気配等微塵も無かったし、それを言ったらレスカ様も婚約者であるユリア・ブルックストン侯爵令嬢に対して振り回すようなこともしていなかった。それが今ではユリア様に対して愛情表現を精一杯出し尽くし、それでも時折「何処の子供か」と突っ込みたくなるような場面を度々見せ付けられ、『これが現実か…』と頭痛が襲って来ること暫し。



 第二王子ってなんだっけ?



 と、脳内で葛藤したことの多いこと、オオイコト。

 もしかして王族と言う柵で長年押さえつけられていた「何か」が噴出してしまったのかしらね?等と、最近では悟りを開いている。

 オマケに、ニキとその…き、キスをしたと知ったら、対抗するようにユリア様とキスしちゃっているし。天真爛漫過ぎませんかね?

 それでいて抑える所は確りしているのだから、突っ込むことが出来ないという。

 おっと、今はそんなこと思い出している時じゃなかったわ。


 アレス様、相変わらず半透明のままで此方を見て楽しそうですよね、って何故じゃぁ~!


「ふーん、ターメリック?チリ?赤い色の変わったピーマン?旨いのかレナ」


 そして何故か普通に私の横にいるアレクサ様。

 ちょっと距離開けていいですかね、アレクサ様や。近くない?そりゃね、人がひしめく(犇く)市場ですから通路が狭くてぎゅうぎゅう詰めなのはわかるけど。

 てか、近いちかい~。

 そしてアレクサ様の横にいるジン様。おぅ、この人もアレクサ様に近い。

 ちょっと拝みたくなったのは腐女子心がほんのチョッピリ湧いただけで、実際にはしていませんよ?でもなんだろうな~マリエルさんがジン様とアレクサ様のお二人を見てニコニコしている。

 もしかしてマリエルさんって前世腐女子ですか?それとも貴腐人?


 …駄目だ、頭を切り替えよう。


「美味しいに決まっているさね!このチリを細かく砕いたりして、粉にして野菜炒めや汁物等の料理に混ぜてごらん。ピリッとした味わいに変わるのさ!ああ、でも辛いから気をつけなよ?最初は少しだけにして、後は自分の好みの量を調整して入れるといいさね!」


 おお、オバちゃん張り切ってトーク始めた。

「イケメンだね~!オバちゃんもうちょっと若かったら口説いていたよ!」とか大笑いし、その台詞に引き攣った顔をしたアレクサ様に苦笑するジン様。

 …あ~…画面横でニヤニヤしているアレス様は半透明だからスルーしよう。と言うかさ、香辛料購入してどうするって言うのかしら、アレス様。もしかして知っているのかな?

 カレーが出来る最低限の香辛料だって。

 もしかしてこの世界にもカレーってあるって言うのかな?


 とか思っていたら、「美味しいの?」「ほう」「辛味があるのか」等と何人もの人達が此方を振り返って来る。


「これは早々に買ったほうが良いね」


 といい、有り難いことにオバちゃんが「まけとくよ!」と言う威勢の良い台詞と共に私の手には香辛料が入った袋が。

 勿論料金はジン様が確りと払ってくれた。何せ私、着の身着のままで隣国に強引に連れて来られたから…いや、誘拐?ん~何か違うな。拉致かな?人質か。まぁそんな状況でビタ一文も所持していない。悲しい…。

 だがしかし!今私の手の中には大事な香辛料ぉぉ!


「荷物は私の方で持っておきますね」


 マリエルさん素敵!

 そして何故かマリエルさんから確りと金銭が入った小袋を頂いた。

 なにか困った時には使って下さいね?と一言添えて。


 あれ?私って人質じゃなかったっけ?


 









 ニコニコニコと物凄く嬉しそうにしている半透明の人を尻目に(問答無用で視界の端にいるし…あれ、絶対に私に見えるようにしているよね?と言うか、あんな顔出来るのかが解ってちょっとショックだわ。やはりこの世界乙女ゲームとは違った世界ってことかなぁ?と言うか、もうね、視界の端に映るとかさぁ、ある意味暴力だよ…色々心臓にキツイわ~)、狐獣人であることをどうやら隠しているらしく頭に帽子を被ったドミニク君が小声で、


「やったーこれでやっと!味の幅が出来る~」


 と喜んでいる。

 声は小声だが態度は喜びに満ち溢れていて、香辛料に期待しまくっているのかその目がキラキラと潤んでいる。

 きっと今隠れている狐耳と尻尾が出ていたらぷるぷると震えているか、それともボワンッと毛が膨らんでいることだろう。

 何となく帽子がぷるぷると震えているから多分前者か、いやいや毛が膨らんでいるのか。もしくは両方かも知れない。


 うう、可愛い。


 想像してみるだけで可愛い。

 見ることが出来たられたら良いのになぁ、きっとふわふわ毛で可愛いのだろうなぁ。出来たら尻尾の先ぐらいは触れないだろうか。

 もう少し話などをして仲良くなったら少しぐらいは…ああでも、番ぐらいしか触れなかったら駄目かも知れないから、その辺りを詳しく聞いてから許可を得られたら是非触りたい。

 土下座したら触れないだろうか?

 それぐらいで触れるなら是非お願いしたい。

 プライド?そんなものなどソコラの(トイレ)に放り投げたわ。


 …そう言えば船旅の途中彼等…ドミニク君とアレス様の食事風景って見ていない気がする。お茶をしているのは何度か見てはいるのだけど、その際焼き菓子かスコーンが食器に乗っていたような。しかもほぼ同じ種類。

 もしかしてこの二人、他には口にしていない?

 私が目にしていない時に何かしら食事をしていたのかも知れないが、余りにも細い体型のドミニク君を見て心配をしてしまう。髪の毛だってちょっとパサついているように見える。先端に幾つか枝毛?が見えたような、そうで無いような。

 成長期の大事な時期だと言うのに、二人共栄養状態が悪いのでは無いだろうか?


 アレス様も暗殺者とか殺人鬼とか言われている割には、今現実で目にしている彼は細い方なのよね。お肉とか果物とかもしかして摂取していないのでは?


 余計なお世話だろうが、ついつい二人の腰の辺りを見比べてしまう。

 ついでに手首とか首筋とかも。

 うひゃ、ホッソイ。

 アレス様は兎に角(流石攻略対象者と言うべきなのかな?補正とか入っていたりして…)、ドミニク君が。



 えーと少し前にアレス様は確か忽然と姿を消したとか何とか聞いたような気がするのだけど、その辺りと関係しているのかしら?って、出来たらアレス様達の事情を知りたくないし巻き込まれたくは無いのだけれど。政治的な理由とかだったらもっと嫌だし、何より怖い。悪寒がするのよね…嫌な予感って言う感じで。

 やだ、フラグ立ったりしないよね、ね、ね??それでなくても隣国に人質?拉致?されて連れて来られたのに、余計にややこしくは無いたくない。

 一刻も早くウィックロー国に帰りたいし、兄さん達や家族…実家の問題児である父と長男は除いて…会いたいし。これ以上放置すると何か仕出かしそうなジーニアス兄さんのことも気になるし、国境辺りで問題起こしそうだし。それにユリア…ユリア様も心配掛けて申し訳無いし。

 巻き込まれてしまっただけだから不可抗力だし、私の力だけではどうにもならなかったけどもね?でももっと嗚呼すれば良かったとかは、今は思いたく無い。

 前向きに考えたいからね!



 何処を見ているのだ?と思ったのか、アレクサ様がキョトンとした感じで此方を見た瞬間ー…


「!!」


 キラリと鋭く光ったモノが目の前を過ぎった。





個人的には「たーめにゅっく」がお気に入り(*´﹃`*)

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