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壊し屋アモン  作者: イナナキゴロー
ロリュー争乱編
58/78

バイク ☆

挿絵(By みてみん)

【使用素材】

GATAG <http://free-illustrations.gatag.net/>

その他

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軍用バイク『テンエックスナイン』

ロリュー軍が当時新興企業であったワダツミ社に依頼、発注した

次世代バイク。


オフロードバイクのような軽快さ。

小型バイク並の取り回し。

2.1秒で100kmに達する脅威の加速力。

エンジニアの父クラーク・ペイチェに

"世界中どこでもこれで走れる"とまで言わしめる走破性。


まさに最強のバイクといっても過言ではなかった。


だが発注元の軍の要求レベルの高さをはるかに上回るその性能に

乗りこなせぬ者が続出し、死亡事故も頻繁に起こる。

そしてついには正式採用を見送られた曰くつきのバイクでもある。


のちにこのバイクはこう呼ばれた"ナイトメア"と。


その曰く付きのバイクに跨り、レイベッカはドイの前に姿を現した。

レイベッカの得意分野は"乗ること"である。


幼少期から、乗ることが大好きで、缶ぽっくり、竹馬、一輪車、三輪車、自転車、

バイク、ホッピング、果ては馬や牛などにも果敢に挑戦し、

何とマンモスにまでのってしまうという豪快な経歴を持っていた。


その中でも、もっとも好きで得意だったのがバイクである。

新兵時代には、カブ乗りレイベッカの異名をつけられるほどに

四六時中練習用のバイクに乗っていた。


彼女はここが好きだった。

この一人になれる座席。この空間が心地よかったのだ。

そしてそこに戻ってきた。

あの地獄からここに戻れたのだ。

これは奇跡。これは運命。

ならばもう恐いものなどあるはずがない。


彼女はドイに突撃するべく、エンジンを吹かせた。

ドイはここ中庭と外とを繋ぐ廊下上にいる。

このまま突っ込めばかわしようがない。


だが、ドイはにたりと笑い

ひとさし指を曲げ、レイベッカを誘った。

彼にとってこの状況は願ってもない事態であった。


獲物が自らその口の中に飛び込んできたのだ。

これで喜ばない生物などいない。


ドイは両手を少し前に差し出し腰を落とした。

それはレスリングに似た構え。

彼のベースは柔道だが、その異常に発達した前腕の握力を

活かすスタイルがこの構えであったのだ。


レイベッカのナイトメアは疾り出した。

アクセル全開でそのスピードは

すでに、130kmを超えている。


ドイに迫るナイトメアという名の鉄塊。


しかし、冷静にドイは動いた。

狙いはバイクのフロントフォーク。

バイク本体と前輪とを繋ぐバーの部分だ。


高速度で近づくバイクのハンドルを正面から押さえるのは

さすがのドイでも危険すぎる。

ゆえに横からつかみやすいフロントフォークを狙ったのだ。


一度、掴んでしまえばこちらのもの。

人間離れした握力とより楽しむために修めた柔道の技術が

あればどんなにスピードが出ていようとコントロールができるだろう。


ドイのその考えは正しかった。

もし掴めていれば勝負はこれで終わっていただろう。

しかし、掴もうとした瞬間、バイクがフロントアップしたのだ。

前輪を浮かせてかわしたのである。

そう、レイベッカはドイの動きを読んでいた。


レイベッカは見ていた。バイクに乗って逃げようとする仲間が

そのバイクごと投げつけられる様を。

その時に、ドイが掴んでいた部位がフロントフォークであったのだ。


くるのがわかっているのなら、素人でもかわせる。

それも手足のようにバイクを操れるレイベッカなら

なおのことである。


かくして、バイクの前輪はドイの体をまともに捕らえた。

真横に吹き飛ぶドイ。


ドアガラスを突き破り外へと転がり出た。

それとほぼ同時にナイトメアも外へと出てドイから数十m離れた位置に止まった。


普通ならばこれで終わりである。

重量250kgのバイクの130kmを超える高速チャージを

まともに受けたのだ。

即死級のダメージに加え、なお、お釣りがくるほどの衝撃力。


だが、ドイは立った。

ゆっくりと立ち、口元の血を拭う。


尋常ではない耐久力である。

そしてそれぐらいのことはレイベッカもわかっていた。


第4特務部隊の巨凶集団。

大戦中パレナの一般市民を虐殺しまわった者たちである。

パレナ人なら誰もが知っている者たちである。

男の放つ禍々しい殺気がレイベッカにそのことを悟らせた。


ならばこの男をこのままにしてはいけない。

この男はここで倒さねばならない。


これはもはや勇気の問題ではない。

これは人の尊厳の問題である。


この悪魔は、ここで倒す。

レイベッカは再びアクセルを吹かした。


ニヤリと笑って再び先刻の構えを取るドイ。


レイベッカvsドイ。

佳境に突入する。


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