ブロンド ☆
【使用素材】
GATAG <http://free-illustrations.gatag.net/>
紳士向けマキちゃん立ち絵 <http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im5951627>
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ケイヤ南にあるバリツ教教会。
そこにミーチャ・カーツェルンはいた。
ミーチャは元ロリュー軍の兵士である。
大戦後のパレナとの小競り合いで華々しい戦果を残し
十代にして将校にまで上り詰めた
稀代のマーシャルアーティスト。
そんな彼女は今、この寒空に裸にパンツ一枚という
いでたちで立たされていた。
周りを囲むロリュー軍の兵士たち。
彼らはこのバリツ教会に非難していた子供たちに
乱暴狼藉を働こうと乗り込んできた者たちであった。
その蛮行を防ごうとミーチャは、単身、男たちと交渉し
このような事態になったのである。
少し前ならば上官である自分の一喝で済んだ話であるが
今は、ロリューを離れパレナの支援部隊の一兵士となっている身分。
むしろ誰もミーチャの顔を知らないことが幸いしていた。
男たちはミーチャの胸や尻を無遠慮に鷲掴む。
彼女は黙って男たちの好きにさせた。
タイミングを計っているのだ。
この場にいる男たち全員を引き寄せ
一息に倒せるタイミングを。
そして動く。
拳、足、手刀、肘、膝、頭。
ミーチャのありとあらゆる箇所が駆動し技を繰り出していく。
男たちは次々と昏倒させられていった。
並の女性格闘家ならばこうはいかない。
人は打撃に耐性のある生き物である。
たとえ急所を突こうにもある程度の力が求められるのだ。
ゆえに力の弱い女性は本来格闘に不向き。
だが彼女は違った。
先天性の異常により
全身の筋肉がすべて白筋なのだ。
白筋は瞬発力を担い、赤筋は持久力を担う。
つまり彼女は瞬発特化型の体躯を持っているということだ。
これにより彼女は大型肉食獣並のパワーを有していた。
さらには、婦長ハンナの手ほどきにより
効率的な体の運用法もマスター。
白筋の弱点である持久力の問題も克服し
ここにいる数十人の男たちを倒す程度の運動量なら
何の問題もないほどにまでクンフーを高めている。
数分も掛からずに男たちをすべて制圧したミーチャ。
その流れるような鮮やかな動きに子供たちから
感嘆の声がもれる。
だが彼女は警戒を解いてはいなかった。
こちらに接近しつつある禍々しい気配を感じていたからだ。
ミーチャは子供たちを先導していたシスターに
隣のブロックまで避難するよう促す。
そこにはミーチャの仲間である支援部隊のメンバーが
待機しているのだ。
そこまで行けば彼女たちが部隊の駐屯地まで連れて行ってくれる。
ミーチャはシスターと一緒に子供たちを路地裏へと誘導した。
その際、何人かの悪童に胸を触られたり、尻を叩かれたりしたが
それは気にしなかった。
気になるのは、通りの向こうからこちらへと迫る何か。
自分はアレをここで食い止めねばならない。
もしそうしなければ後ろの子供たちにも
そして部隊の仲間にも多数の被害が出かねない。
そんな禍々しく、そしてわかりやすい殺気を
ソレは周囲に放っていたのだ。
子供たちすべてが路地裏に消えた後、通りの角から
ゆっくりとそれは出てきた。
それは異質であった。
それは異常であった。
手首に、足首に野太い鎖を打ち込んでいた。
その太いチェーンの先に10kgはありそうな鉄球がついている。
幾本かに束ねた長い髪の先にも同じようなチェーンと鉄球が
結わえ付けられていた。
女である。
女ではあったが女性の持つ柔和な雰囲気や
やさしい物腰は皆無。
その目は狂気を孕んでいる。
生きとし生ける者を殺さずにはおけない
殺人狂の目。
女はミーチャを視認するとニタリと笑い
チェーンを振り回す。
そして消失するチェーンと鉄球。
本当に消えたのではない。
あまりのスピードに消えたように見えるのだ。
建物の外壁、ガードレール、電話BOX、車、街灯、街路樹、ゴミ箱、ポスト、自動販売機。
女の周りから、ありとあらゆるモノが消失していた。
振り回されたチェーンに、鉄球に触れるものすべてが
削られ、吹き飛ばされ消失しているのだ。
それは形容するなら破壊球。
どんなモノでも飲み込み破壊する鉄のブラックホール。
すべては女の図抜けた身体能力が魅せる脅威の荒技。
ミーチャは女の禍々しさと、破壊球の尋常ではない
威力に恐怖した。産毛が逆立ち、乳首が立った。
しかし、闘志はいささかも衰えてはいなかった。
軽いフットワークでブロンドの髪を揺らす。
そして迫る破壊球。
次回、ミーチャvs鉄球の女。
