表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊し屋アモン  作者: イナナキゴロー
壊し屋アモン
5/78

ブレード

ゴウラという巨躯の侍がいた。


この男の性質、豪快にして無頼。

そして数多くの逸話を持つ剣豪である。


数多の決闘を制し、斬り殺した者の数、実に98人。


巨牛の両断、9ツ胴の達成、鉄板の切断など

試し斬りにおいてもその名を残す男。


だが、そんな剣士としての実績以上にこの男を

有名にさせたのは、産まれた直後に母親を孕ませたという

とんでもない噂話からもわかるその劣悪な気性であった。


この男、実際に十代の頃、母親を犯している。

母親との剣術の稽古中、昂ぶる感情を抑えきれずに

およんだ蛮行であった。


だが男に反省も後悔もない。


母親でさえもただの穴だと断ずる圧倒的雄度。

それを嗜めた父親も一刀の元に斬り捨てている記録からもわかる

圧倒的邪悪さ。


それがこの男の本質であり、この男の強さの根源でもあった。


そんな男がアモンと出会った。


ある港町。

通りの奥に軍船の黒い船体が見える軍港近くの通りである。


ゴウラは歓喜の笑みを浮かべて刀を抜いた。

そしてゆっくりと近づく。

アモンを斬るためだ。


無論アモンとは、顔見知りでもなければ因縁のある間柄でもない。

しかし、アモンの持つ獣性とその究極ともいえるほどに張り詰めた体を見て

自分の"獲物"であると感じたのだ。


目前の獲物を逃す獅子はいない。ゴウラの言葉である。


その言葉通りゴウラは戦場での敵、尋常の立会いでの相手を

獲物と称し一刀の元に斬り伏せてきた。


しかしそれはお互いが納得ずくでのことであり、

街で通りすがっただけの男を斬るなど正気の沙汰ではない。


だがだからこそやる。それがゴウラという男の性であった。


その殺意に気付いたアモンは

自らもゴウラに向かって歩を進める。


ゴウラの間合いまで後、数歩。

剣の達人同士なら間合いの読み合いで

足が止まっている距離である。


しかし、両者は止まらない。

何がどうなろうと、誰がどうしようと

間合いに入れば


即、斬る。

即、打つ。


二人の気性は似かよっていた。


刹那、動く両者。

アモンの拳はゴウラの顔面へと走り、

ゴウラの剣はその拳を捕らえた。


兜合斬り(トゴウギリ)


ゴウラの特技、必勝の剣である。


機先を制しながらも、相手の先を抑えて

それごと叩き斬るという豪快かつ、高度な見切りのなせる

繊細な技。まさに神技ともいえる剣さばき。


もしこれが技の勝負ならゴウラの勝ちであったろう。

しかし、その剣は思惑どおりにアモンの拳を捕らえながらも

切り裂くことができなかった。


アモンの拳を形容するなら鋼鉄の真球。

それも図抜けた硬度と弾性を併せ持つ合成鋼。


何とゴウラの剣はアモンの拳に2cmほど食い込んで止まっていたのだ。

そしてソレをそのまま振り抜かれる。


骨が砕ける歪な破壊音。

吹き飛んだゴウラの体は50m先の軍船の船体に

突き刺さってやっと止まったという。


勝敗を分けたのは、二人の生き方でも心根でも戦術でもなく、

シンプルな体の性能差。


それも図抜けたフリーク級の筋肉を持つアモンならでは

の技ならぬ荒技の所業であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ