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壊し屋アモン  作者: イナナキゴロー
壊し屋アモン
32/78

カウンター

アモンとザケル。


それは例えるなら

類稀なる筋肉に恵まれし雄熊と

類稀なる才能に恵まれし雄鹿の戦い。


両者の性質はまったくの対極であった。


ドラが鳴ってすぐ

二人は、まっすぐに歩き出す。


様子見もフットワークもない。


当然のことである。

これは言うなら力の比べ合い。


どちらがより強き雄なのかを決めるための

男の比べ合い。


そこに探り合いなどという

軟弱な思想の入る余地などはない。


あるのは近づいて倒す、ただそれだけ。


アモン、ザケル、両者は互いの間合いに入った。


刹那、唸るアモンの剛拳。

刹那、疾るザケルの速拳。


アモンの拳の衝撃は大地を走りザケルの後方の岩を砕いた。

ザケルの拳は正確にアモンの顎を捉えた。


交差法。

ボクシングで言う所のカウンターである。

受けの動作がそのまま攻撃へと繋がっているのだ。


相手の前に出る力を利用しているため

その打撃力は通常時の比ではない。


プロボクサーでもまともにもらえばダウンを

覚悟せねばならない必殺の一撃。


ザケルは相手の出方もわからない最初の接触で

冷静にこのカウンターパンチを成功させたのだ。


すべては彼の予知眼ともいうべき、見切り能力の賜物である。


ギャラリーは息を飲んだ。


曰く壊し屋。曰く荒神。

アモンの噂通りの力に感嘆し。


そしてスタジアムの猛者を子供扱いする

ザケルの技の美麗さに酔いしれた。


一瞬の交錯ではあったが、観客たちはその瞬間が

まるで永遠のように感じたという。


そしてアモンのダウンを確信する。

それほど鮮やかにザケルのカウンターはアモンの顎を打ち抜いたのだ。


あの巨漢の男ブルーザーでさえ一撃の元に沈めたザケルの拳。

そのカウンターがまともに決まったのだ。

格闘家であるならば想像もしたくない状況であろう。


アモンが倒れる。

観客たちがそう思っても不思議はなかった。


しかしアモンは倒れない。

微動だにすらしていない。


それどころか次の拳を打つべく

左腕を振り上げた。


まさに荒神と呼ぶに相応しい人間離れした耐久力。

だがザケルも負けてはいなかった。


振り下ろされた左拳をかわしつつ、

さらにカウンターを入れたのだ。


これも渾身の当たりであった。

プロでもダウンするであろう必倒の当たり。


それでも止まらないアモン。

拳を次々に繰り出す。


そしてザケルも終わらない。

アモンの拳一つ一つにすべて合わせ

カウンターを決めていく。


ここでギャラリーは大きな歓声を上げた。


これはただの格闘試合ではないことに気がついたのだ。


これは人知を超越した超人vs超人の

互いのプライドを賭けた戦い。


まさに神々の大地フーリエンに相応しい

神話の戦い。


激しく打ち合う両者を前に

観客のボルテージもうなぎ登りに上がっていくのであった。


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