フーリエン
パレナの南にフーリエンと呼ばれる
大地に無数に伸びる深いクレバス地帯がある。
古の神々にまつわるエピソードを数多く持つ
パレナ人にとって神聖な場所。
そこでアモンとザケルは向かい合う。
あのブルーザーとの一戦から、さらに数試合を経て
人気、実力ともに不動の地位を築いたザケルが
ついにアモンとの決戦に臨むことができたのだ。
すべてはスタジアムのプロモーターである
商人ワンのお膳立てであった。
端正な顔立ちが功を奏しザケルは女性を中心に
爆発的な人気を博しており、これまでの数度の興行、
関連商品の販売でワンの得た利益は、年間のバトルスタジアム収益を
軽く上回るものであった。
ゆえに、その返礼としてザケルの切望であったアモン戦を
今回企画したのだ。
それもただの試合ではない。
無数に走るクレバスの底は、まさに底なしの深さであり
落ちればまず助からない。
そんな場で戦うということは自然、互いに命を
賭けたデスマッチになるということである。
これもザケルの望んだシチュエーションである。
最高の戦いは最高の場でやるべきとの主張。
たしかにこのフーリエンは神々の聖地であり、
神々が覇権を巡り幾度となく戦ったと言われる場所。
男二人が雌雄を決するのにこれほど相応しい場所はない。
しかし、格闘試合はあくまで格闘。
結果的に命を落とすことはあっても
それが目的の死闘になってはならない。
ワンの必死の説得もザケルは主張を変えず
今回の運びとなった。
これも強き者に敬意を表すパレナ人の気質。
戦士がそれを望むのなら
もはや何も言うことはない。
クレバス脇にはこの世紀の一戦を見ようと
たくさんのギャラリーが詰めかけていた。
ナザレ初め魔道士会の者たち。
パレナ戦士団の面々。
シオンの漁師たち。
ロリューの軍人たち。
特例で外出できたマシラ。
フィナ初め大学研究員たち。
ジーコニア女性団体関係者。
やや離れた場所でアギー初め妖精族など。
本当に多くの者たちが、この一戦のためだけに集ったのだ。
そしてこれは、パレナ・ロリューの代理戦争でもある。
国と国の威信を賭けた戦い、見ないわけにはいかなかった。
アモン、ザケルは互いに簡単なあいさつを済ませると
一定の距離を置いて立つ。
そして試合開始を告げるドラは鳴らされた。
アモン対ザケル。
究極の力vs神域の技
果たして勝負の行方はいかに。




