ホワイト
ロリュー南端の街ササ。
昨年、パレナよりロリューへと返還された街である。
この街は今、職人たちのデモで騒然となっていた。
古の昔から職人たちの集う組合の力が強く
大戦時にはパレナ側に組するレジスタンスとして
奮戦した実績もある。
そんな経緯もあり、返還後派遣されてきたロリューの役人たちとの
折り合いがつかず、今回のデモ騒ぎとなったのである。
デモ会場に乗り付けた一台の高級馬車。
引き扉にはロリューの国章が入っている。
それを囲む黄色いメットの職人。
彼らは手に手に武器を携帯していた。
数日前にもそれで、役人を散々に叩きのめしたばかりであった。
交渉とは名ばかりの凄惨なリンチ。
パレナとの軋轢を恐れ、強い態度に出れないロリュー側の役人は
ただ黙ってやられるしかなかったのだ。
だが今回は違った。
馬車より降りてきたまだうら若い一人の女将校に
逆に返り討ちにされたのだ。
女は舞うように男たちの間を駆け、次々と男たちを打ち倒していく。
拳で、足で、肘で、膝で、頭で。
徒手空拳が彼女の得手のようであった。
だが多勢に無勢、しばらくして大柄の男に組み付かれてしまう。
しかし、彼女は平然とそのクラッチを腕力で引き剥がし男を蹴り倒した。
彼女は先天性の異常により特殊な体を持っていた。
通常、白筋、赤筋でモザイク状に分布するはずの筋肉が
すべて白筋となっているのだ。
白筋は瞬発力をつかさどり、赤筋は持久力をつかさどる。
そのどちらもが重要な筋肉であり、俊発力に特化した肉食獣ですら
10割が白筋になることなどない。
だが彼女はその獣をも凌駕する
完全に瞬発力に特化した体を持っているのだ。
パレナ人の3割にも満たない白筋の出力では彼女を捕まえて
置くことなどできなかった。
彼女は男たちを打ち倒しながら、服を脱いで全裸となる。
10割の白筋の出力熱にたえず体が侵されているのだ。
服を着たままでのこれ以上の戦闘は不可能であった。
動くたびに大振りの乳房がふるふると振るえ、
彼女の精細な動きを阻害した。
そこへ叩き込まれた男の振るう棍棒。たわむ乳房。
女はそれでも動きを止めず男を倒す。
女の強さは圧倒的であった。
だが、ただでさえ疲れやすい体に疲労が蓄積され、
かわし損ねた攻撃が次々と体への傷を増やしていく。
だが彼女は止まらない。
彼女には強靭な意志と信念。
そして勝利への道標が見えていたのだ。
打つよりも打ち据えられる回数の方が増えて、
動きが鈍ってくる女将校。
その時、デモの壇上で爆発音がした。




