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壊し屋アモン  作者: イナナキゴロー
壊し屋アモン
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バブル

その海神教を信奉する僧侶が王宮を訪れたのは

ある晴れた日の午後のことであった。


王女が謎の病に伏せっているということを聞き

来訪したのだ。何でも病に良く効く秘薬を持っているとのことであった。


半信半疑な王であったが、藁にもすがりたい思いで

娘に秘薬を飲ませる。すると立ちどころに病は消え去り、

王女は元通りの元気な姿を取り戻した。


一人娘の全快に喜んだ王は

僧侶に褒美を取らせることにする。


僧侶が望んだのは、珍しい山の幸、海の幸。

俗に珍味といわれる食材の数々であった。


何でも海神教のドッコウという荒行の中に

全食材のキエ(一般でいう所の食べるという意味)というものがあり、

そのために協力して欲しいとのことだった。


すぐさま数々の珍味は取り寄せられ僧侶の下へと運ばれた。

僧侶も王宮にやっかいになっている間、持っていた秘薬の

調合法などを王に教え、しばらくその蜜月の関係は続く。


しかし、王が海神教のキエについて調べさせた結果、その食材の中に

人間も含まれていることが発覚する。王は僧侶に問いただした。

すると悪びれもなく僧侶は、その通りであると答えた。


それだけではない。ホトという性行を行なうために王宮内のメイド

および王妃にまで手を出していたことが発覚する。


王は激怒し、僧侶を王宮より追放。さらには刺客を3人送った。


刺客はいずれもプロのアサシンたちであり、腕に憶えのあった僧侶であったが

なすすべなく追い込まれることになる。


まさに絶対絶命。だが偶然通りがかった練兵所内の

水深の深いプールに飛び込んで逃げることに成功した。


周囲を囲むアサシンたち。

しかし、1分、2分たっても僧侶は出てこない。

それどころか、10分、20分たっても出てこなかった。


潜水に特化した身体を持つ

バンドウイルカの潜水時間が最長でも15分であることから

考えると、これは驚異的な数字である。


痺れを切らしたアサシンたちは、一斉にプールへと飛び込む。

そこには、ちょうど、プール底の中央で座禅を組むように佇む僧侶の姿があった。


『ようこそ』


『私のテリトリーへ』


僧侶は握り合う両の手に力を込めた。

と同時に生じる一瞬の閃光。そして遅れて響く小さな破裂音。


アサシンたちは一斉に絶命。プールの水面へと浮かぶ。


キャビテーション。

時速100km以上に達した水流がおこす流体との圧力差で発生する泡のこと。

その泡より生じる衝撃波は強烈無比。自然界ではピストルシュリンプという

甲殻類がこの泡の衝撃波を使って狩りをするという。


僧侶は、その殺傷力の高い泡砲でアサシンたちを同時に撃ったのだ。


だが、条件である時速100kmの水流を素手で起こすことなど

人間には到底不可能な芸当であり、一日に12時間の水行の果てに

僧侶だけが身に着けることができた神技といえた。


僧侶は思った。彼らを調教しなくてはならない、と。

キエもホトもまだ道半ば、これ以上の行の遅れを許すわけにはいかない。

私のためだけに動く者たちを調教し、作り上げねばと。


僧侶は、その足で王宮に取って返し、警護の兵数十人を血祭りに上げた。

そして僧侶は王に恒久的な食材の確保と行への全面的な協力を

約束させる。


王の受難は始まったばかりであった。


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