第1話
『ようこそ新たなる冒険者よ。 これより先は、君だけの特別な冒険が君を待っているだろう。 さぁ、冒険の準備をしたまえ』
塔の扉を潜った瞬間、僕の頭の中に塔の声が響く。
そして、僕の目の前にゲームのような選択画面が出現した。
一番上に名前の欄があり、何処で知ったのか僕の名前が既に登録されている。
その下には、種族という文字が表示されていて現在は|人間≪ヒューマン≫が選択されている。 種族の部分を意識すると、他の種族の一覧が画面に表示され、エルフ・ドワーフ・獣人といった定番の種族から龍人・巨人・虫人といった変わった種族まで、実に多種多様な種族が存在している。
種族を選ぶ上で大切な事は、この後選択することになるジョブとの兼ね合いだ。
例えば、今選択されている人間だと種族的に大きな特徴を持っていないがどんなジョブとも相性がいい万能種族だ。 これがエルフやドワーフになると、エルフの場合魔法系統のジョブと相性が良く近接戦闘系のジョブと相性が悪くなる。 反対にドワーフは、近接系のジョブと相性が良く魔法系のジョブと相性が悪くなる。
相性の悪いジョブに就くことも可能ではあるが、相性が悪い分その系統のスキル成長速度が著しく遅くなるというデメリッドが付いてくる。 スキルの選択は、ジョブとの相性が良いものを選択するのが良いとさている。 それは、ジョブとの相性がいい程スキルの成長速度が速くなるとされいるからだ。
なので、一般的にスキルの成長を遅くしてでも愛称の悪い種族を選択する者はいない。 これが本当のゲームなら、そういう縛りをつけてプレイする者も中にはいるだろうが、これはリアルであってゲームではないのだ.......ここでの選択一つが、これからの自分を形成する大切な要素になるのに、それを無駄に使うことなどありえない......。
僕は種族を人間で選択する。
無難だが、それだけ安定した種族であるのは確かだ。
種族を選択したので次はジョブだ。
ジョブを選ぶ上で大切な事は、種族の時には話した相性だ。
種族を選択したことで、それぞれのジョブの横には◎・〇・△・×と相性が表示されている。
人間を選択したことで、全てのジョブが〇か△で表示されていて◎と×は一つもない。 正直、◎と×は倍と半分の違いが出てくるが、〇と△に差は殆どなくて○の方が気持ち成長が早いかな程度の違いである。
良くも悪くも、人間は何でも出来ることを売りにしている種族だ。
その中で僕は、この後のスキル選択の事も考えて幾つかジョブの候補を絞る。
近接系・遠距離系・生産系と一通り候補を挙げえ見るが、やはりどの系統も本職には劣ってしまう。
それならば、いっその事どれでもない場所で自分のスタイルにしようと考え、僕は相性が〇で尚且つ近接でも遠距離でもないであろう中距離ジョブの鎖使いを選択した。
鎖の主な攻撃手段は、先の尖った部分で刺すか突くか......あるいは、鎖を叩きつけるか相手の身体に巻きつけて動けないするかだが、近接ジョブほど威力のでる攻撃はないし遠距離ジョブほど射程も広くはない。
まさに、特徴のない人間が就くには持ってこいのジョブだ。
最後にスキルの選択。
スキルには、メインとサブの二種類が存在しメインにセットしているスキルは行動によってレベルが上がる。 反対に、サブにあるスキルはセットされていない状態だと経験値が入らずレベルも上がらない。 レベルを上げるには、メインのスキルと付け替えてセットする必要がある。 また、塔の内部での行動によってスキルは新しく習得が可能となるが、習得するにはスキルポイントが必要であり、スキルポイントはレベルアップで増えていく。 レベルが20上がる毎にスキル枠が一つ増え最大で12個のスキルをセットすることが出来る。
初期の現在は7つのスキルをセットすることが出来る。
また、初期のこのスキルを自由に選択する事が出来るのは今回だけだ。
塔の内部でスキルを得ようとすると、中々手に入るものではなく、ましてや欲しいスキルを手に入れることはさらに難しい。
なので、自由にスキルを選ぶことの出来る今回はとても貴重だ。
それと、ジョブで鎖使いを選んだことでジョブスキルとして【鎖術】が選択されているが、これはジョブ専用のスキルなのでスキル枠に影響はない。
それを踏まえてスキルを選択していくとこうなった。
【鎖術】 【付加術】 【投擲】 【土魔法】 【彫金】 【調合】 【錬金術】 【鑑定】
戦闘でも生活でも皆の支援を目的にスキルを選択して見た。
と言うのも、他の5人はそれぞれ得意な分野が決まっているからある程度のスキル構成の予想はついたから、僕は皆の支援にまわるべきだと思ったんだ。
スキル選択を終えると、僕の目の前には選択した全ての情報が反映された画面が現れた。
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木之本 悠真 Lv1
種族 人間
ジョブ 鎖使い
ステータス
HP 100/100
MP 100/100
AP 10
DP 10
スキル 【鎖術Lv1】 【付加Lv1】 【投擲Lv1】 【土魔術Lv1】 【彫金Lv1】 【調薬Lv1】 【錬金Lv1】 【鑑定Lv1】
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木之本 悠真って言うのが僕の名前だ。
どうやって僕の名前を知ったのか分からないけど、間違いなく僕の名前だ。
後は設定したとおり反映されていると思うけど、ステータスについて説明しておこう。
ステータスは、見ての通り体力を現すHPと魔力を現すMP。
ここらへんは説明しなくても判るだろうから、APとDPについてだけど、アタックポイントとでフェンスポイントのことだ。
普通なら、力とか防御・敏捷といった各分野の能力値を設けるところなんだろうけど、ここではそれを一括してAPとDPに纏められている。
APには力、魔法、敏捷、装備品の攻撃力といった相手に与えるダメージの強さが反映されていて、当然この数値が高ければ相手に与えるダメージは大きくなる。
反対にDPは、防御、魔法、敏捷、状態異常といった防御に関するものだ。 この数値が高ければ相手から受けるダメージが低くなるのは勿論のこと、状態異常耐性のスキルを持たない状態ではDPの数値が抵抗値となってくる。 DPが高ければ状態異常になりにくいし、仮に状態異常になったとしてもDPが高ければ状態異常の効果が軽減されるようになっている。
APとDPの初期の数値は種族とジョブによって決定され、以降はレベルアップ毎にスキルポイントと同じくステータスポイントとしてポイントが貰えるので、それをどちらかに振って能力を上げていく仕組みだ。
他にも、装備品の能力で数値は常時変化するが基本の数値はレベルアップで得られるポイントでしか成長させることは出来ない。
他の余分の数値が存在しない分かなり分かりやすい感じにはなっている。 実際に、成長させるポイントは2つしかないのだからあまり悩む必要もないだろう。
後、レベル的なことを説明しておくと、個人レベルに限界はない。
スキルの方はレベル表記がされているがそれで効果が変化するということはなく、一定レベルスキルのレベルが上がると上位の効果を持ったスキルに進化することがある。 上位のスキルに進化させるには、スキルポイントを必要となるがその効果は確実に上昇する。
ちなみに、能力アップや耐性系には微・小・中・大の四段階があり、それぞれの上昇率は下から0.25%.......最大で二倍の効果を得ることが出来る。
『準備は整った。 さぁ、行くがいい無限の冒険が待つ世界へと』
塔の声に導かれるようにして僕の意識は塔の中へと吸い込まれていった。




