表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MJ(工事予定地)  作者: にわとり
英雄小話
3/8

小話01 : 真昼 ーまひるー

リファイン予定のMJでやる予定のない小話です。

酒場を出ると、夜風が心地よかった。

安酒の酔いと、久々に親父殿と語った余韻が、足取りを軽くしている。


「いやぁ、今日はいい酒だったな……」


マイアヒーは伸びをしながら、人気のない裏路地へ足を向けた。


――その瞬間。


空気が、変わる。


背後、左右、前方。

五つの殺気が、示し合わせたように立ち上がった。


「……あ?」


軽い声。

だが次の瞬間、路地を埋め尽くすように現れたのは、武装した五人のヴィランだった。


黒い装甲服。

手には淡く光る刃――

分子結合を分解する新型・光刃ブレード。


「おいおい、マジかよ」

リーダー格の男が笑う。


「元・英雄機関の看板が一人歩きだぜ?

 平和ボケしたか? 」


「五人同時なら、神でも切れる」


マイアヒーは、ため息をついた。


(……楽しい気分に、水を差しやがって)


静かに、怒りが沈殿していく。


「……やれ」


五人が一斉に踏み込み、

光刃が同時に振り下ろされる。


――だが。


止まった。


金属でも、結界でもない。

マイアヒーの身体で、

光刃は“触れたまま”、微動だにしない。


「……は?」


次の瞬間、焦ったヴィランたちは距離を取り、

サブマシンガンを乱射した。


「バラせ! 肉片も残すな!!」


爆音。

粉塵。

硝煙。


だが――


煙が晴れた先に立っていたのは、

服の焦げ一つないマイアヒーだった。


「……しらけるな。」


声が、低い。

酒場での軽口とは、まるで別人だった。


「弾と、技術と――」

視線を細める。

「命の、無駄だ」


ヴィランの一人が、震えながら叫ぶ。


「な、なにを……!」


マイアヒーは、ゆっくりと歩み寄り、

その男の鎧に、指先をそっと滑らせた。


――音もなく。


空間が裂けたように、

男の身体は肩口から腰まで、綺麗に分断される。


血が噴き出すより先に、

“結果”だけが確定した。


「今の俺の人差し指はな」


マイアヒーは、淡々と言った。


「『不変』だ」


空気が、凍りつく。


「どんな現象よりも、

 どんな法則よりも、

 どんな運命よりも――優先される」


彼は指を、空中で軽く振る。


シュッ、と。


指の軌道に沿って、空間そのものが裂ける。


線の先にいたヴィランが、

紙細工のように解体されていく。


「や、やめろ……!」


残った者たちは、武器を捨て、泣きながら膝をついた。


「た、助けてくれ……神様……!」


マイアヒーは、冷たく言い放つ。


「――もう遅ぇ」


指先が、たおやかに動く。


「神を切れるなんて滅多なこと言うんじゃないよ。」


心底鬱陶しそうに、髪を掻いて動かなくなった敵を見据える。


それは戦闘ではなかった。


ただ、指先ふへんが、いずれ滅びゆく定めの者の身体を通り過ぎただけ。


やがて――

ヴィランたちは二度と動かなくなった。


静寂。


マイアヒーはしばらく、その場に立ち尽くしていたが、

やがてスマホを取り出し、通話を繋ぐ。


「……ああ、親父殿?」


血の匂いが漂う中、

声はいつもの軽さに戻っていた。


「なぁ、呑みなおさねぇか」


『――嫌じゃ』


即答。


「えー、あんた偶には後輩の我儘を聞く度量を見せろよ」


『……やれやれ』


通話を切り、マイアヒーは踵を返す。


路地に残されたのは、結果だけ。


そして夜は、

何事もなかったかのように、静かに流れていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ