巨獣2
"敵襲"という言葉を聞いたリティルは、急ぎ一通りの身支度を終わらせ与えられた部屋の扉を少し開けて外の状況を確認していた。
「急げ!」
「負傷者は救護区へ搬送!」
「工兵!組立いそげ!」
扉の隙間からは、周囲がさらに激しく喧騒している状況というのが尖った耳へと入ってきていた。
その言葉の後、地震といえる振動とズズンと地鳴り音をリティルも感じ取っていた。
「(なにが・・・?)」
突然に起きたその衝撃音に、何が起こっているのかが解らない状況のまま、とにかくこの場所に居続けるのが最善なのかどうかを悩み始めていた。
下手に彼らの方へいけば、逆に支障をきたす恐れもあるからというのもあったのだが、勝手知らない土地がら、どこに向かえば良いのか?という知識を持っていなかったからというのもあった。
「何が起きた?!」
「わ、わかりません!」
「斥侯!確認に出ろ!」
リティルの思惑とは関係なく、事態は刻一刻と変化しているという状況だけは理解できた為、まずはどう動くべきかの指針となるモノを探すべく、リティルはその部屋を後にし外へと向かった。
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裏路地ともいえる場所、その路地の隙間から見える先には、先ほど屋根の上から見えていた巨獣の胴体もいえる物が見えた。
巨体からなのか、それとも破壊活動を行っているためなのか、その隙間から見て取れる範囲だけでも、その歩みはそれほど俊敏性を持っているとは到底思えない物であったが、その歩みの遅さに本堂は少しだけ間に合ったという認識をもった。
当初は、正面に降り立って対処する様な事も考えていた本堂だったが、質量の絶対差からくる一撃により、建物があっけなく粉砕されるというのを目撃したことで、その方針は無しとし、奇襲とも呼べる方法で迫ろうと画策した結果、この場所に潜んむ格好となっているのである。
(さて、どうしたものか・・・)
路地からその姿を確認すればするほど、その存在の大きさというものに驚いてもいた。
なにしろ、二階建ての家々よりも、さらにその上にまでその胴体が届いているのである。四足となる部位に関しても、かなりの筋肉量が見て取れ、ベースを虎か獅子か、またはそれに準じたモノにして改造した結果ではないか?と推察するのみであったが・・・
(おっと・・・)
その巨体が通る場所は、少し狭いのか無理やり建物を潰し、そのガレキと化した後を進むという形であっり、その飛び散るガレキが、飛散してこちらにまで飛んで来たものを避けては弱点でもないかとその巨獣の状況を観察していった。
(こういうのは、頭なり心臓なりを狙うべきなのだろうが・・・)
その巨体にまで改造されているであろう巨獣である。
そういった弱点などは、怪人においてもある程度強化されている場合が多い。
その為、直接的にその部位を狙うのではなく間接的に狙うか、またはその強化されている耐久値をも超える一撃を加えるかによって、破壊する方向としていたのだが・・・どれほどの強化がなされているのかの見当が付きあぐねていた。
(仕方がない、まずは足を止めるか・・・)
そう判断した本堂は深く屈みこみ、その足を3回ほど叩くと、その姿をその場から消した。
と同時に、本堂がいた場所とは反対側、その地揺れと衝撃音と共に巨獣が大きく倒れ込み、その巨躯の上に本堂が乗る格好で姿を現していた。
本堂が行ったのは最大跳躍を生み出すその脚力を利用した突撃ともいえる攻撃であった。
その速度をも使った威力により、その巨獣はバランスを崩す様に反対側へと崩れる様に倒れ込んだのであったが、
(だめか!堅い!)
しかし、本堂が思ったのは、その一点集中ともいえる攻撃に対しても、その肉体に対して何らかのダメージが入っていない事であった。
ふと視線を変えた先には巨獣がこちらを認識した事で足場としていたその体躯から急ぎ離れる様に飛びのいた。
(想像以上に硬すぎる!)
起き上がった巨獣は、本堂という存在に対して怒りの表情を向けたかと思えば、どこにそんな機敏な動きがという動作で、向きを変えるや否やその前足を本堂めがけて横薙ぎに振るう
その質量差のある攻撃をまともに受ける訳にも行かない、と、咄嗟にさらに後方へと飛びのいたのだが、危険という直感ともいえる物が、本堂の防御とする姿勢を取らせていた。
(うぉ・・・)
その直感からとった行動は、まさに正解であった。
その振るわれた前足の後には、まるで暴風ともいえる突風が通りすぎ、その瞬間アクタースーツが被弾した際にでる火花と四条の線ともいえるいえる傷が刻まれ、さらに本堂の身体をはるか後方へと吹き飛ばしていた。
(カマイタチ・・・とでもいうのか?)
まるで、先ほどまでの火を噴いている動作とは異なる・・・と思ったが、その壊していた建物のガレキとなっている部分の断面をちらりと見ると、確かに斬る事による破壊とでもいうぐらい、綺麗な断面をしていたのである。
(その大きさで・・・質量やパワーだけではない・・・のか!?)
まだ初撃だったから良いのか、さらに同様に攻撃を受け続けていけば、さすがのトライヴの防御性能でもいつまで耐えれるのかは疑問でもあり、次に同じ行動を行われるのであるならば、回避を優先させるべきであろうと判断する。
しかし当の巨獣といえば、先ほどの攻撃で仕留めたと思っていたのか、その放たれたカマイタチの攻撃の中から、五体満足ともいえる状況の本堂を見て、警戒を強めるといった雰囲気、いや姿勢ともいえる行動をしていた。
(知恵もあるのか、厄介だっ・・・)
これと言った決め手が思い浮かばないまま、巨獣の前へと躍り出る恰好となった本堂にとって、内心ではどうしたモノかと思案し始めた時、巨獣はさらに追い打ちを掛けんとばかりに、こちらへと"走り"出してきた。
一応、次からが三話目となります。
(一つの章を、30分番組の一つの話としています。)
ネタをつなげるため、しばらく方法をひねり出すためにかかるかと思います。




