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闇の輝き  作者: ぴん
1章
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訓練場での戦い2

訓練生(アクマ)の小さな体がみるみる膨らんでいく。突き刺さった矢は勢いよく太ももから飛び出し、腹の傷も同時に塞がっていった。そして雄叫びを上げた瞬間、鋭い爪の生えた両腕を同時に降り下ろした。



「グワァァァ」


「きゃぁー!」



闇士(マリーナ)の悲鳴が訓練広場に響いた。俺たちの方へ背を向けて歩いていた闇士(マリーナ)は、気づくのに遅れ風圧だけで壁に叩きつけられてしまった。俺は、交差した両腕で風圧から自分を守るのが精一杯だった。


くっ。まだこんな力を残していたのかよ。

回復したってことか?



「ハッ!」


あれは…何だ?



「これは!!…チッ。」



ナイクさんが身を引きながらがく然としてる。


あれも悪魔だって言うのか?確かにバイライン(悪魔)も信じられないくらい筋肉が盛り上がった。でも、訓練生(あいつ)は筋肉どころか体が3メートルはあるじゃないか!


さらなる危機を感じた俺は、すぐさま闇士(マリーナ)の救出へ向かった。



「マリーナ!しっかりしろ、マリーナ!!」



ダメだ、気絶してる。



「マウア!奴が完全に魔人化する前に、マリーナを連れてそこから逃げろ!」



魔人化!?



「グワァァァ」


「うおっ…。」



すげぇ圧力。動けねぇ…。



「早くしろ!」


「はっ、はいっ!!」



「くそっ、嫌な記憶がよみがえるぜ。」



俺は、なんとか闇士(マリーナ)を背負って走った。


バイラインの時は、魔人化なんてなかったぞ…。リホがいたから?わからねぇ…。今はとにかくマリーナを…。




「本当に最悪になっちまった…。シフ団長、見守っていて下さい!」



走りながらナイクさんを横目で見た俺は、ナイクさんがあの剣を抜いた姿を目にした。



「くっ、やはりこの剣はキツいか…。だが俺が…片付けるしかない!」


「グオォォァァァ」



「チッ!長くはもたねぇな。」



「ナイクさん!俺もやります!」


「なっ!?」



闇士(マリーナ)を訓練生に任せた後、俺は再び戻った。


ナイクさんの覚悟を無駄には出来ない!俺だって、やれるはずなんだ。



「お前、なぜ戻ってきた!その剣では通用しないぞ!」


「…。」



「聞こえてないのか?ダメだマウア、止めろ!!このバカヤロー!」


ブシュ



「なにっ!?奴の左手から出血だと?…信じられん。本当に傷をつけやがった…。」



どうやったんだ?また記憶がない…。でもいける。この化物相手でも、俺は闘えるんだ!



「プッ、アハハ。相変わらず無茶な奴だ。マウア!魔人の弱点は尻尾だ。俺が援護する。お前はその隙を狙え!」


「はいっ!」



「いくぞマウアー!」


「うぉぉぉぉ!」



俺はジャンプして魔人の腕を上へ誘導した。すぐに下からナイクさんが魔人の両足首に素早く斬りかかり、魔人が一瞬怯んだ。着地した俺は、その隙に背後へ回り込んだ。すかさずナイクさんめがけて魔人の両腕が降り下ろされる。しかし、ナイクさんは狙い通りとばかりに両の手のひらへ剣を刺し貫いた。



「よし!動きは止まったぁ!今だマウアー!」



ナイクさんの合図と同時に、俺はしっぽを確認した。勢いそのままに斬りかかる。


しっぽ…



「グッ、グオゥァァァ」



やったか?


俺の目に、地面へ落ちたしっぽが映る。


よし!やった。やったよナイクさん!



「ナイクさん!」


反応がない。ナイクさん?


「ハッ!」


俺の目に、魔人の足元に大量に流れる血が映った。



「ナイクさーん!」


叫びながら正面へ回ると、魔人はナイクさんの剣から右手のみを引き抜き、鋭い爪でナイクさんの胴体を貫いていた。俺はすぐに魔人の爪を斬り裂き、血まみれのナイクさんを運ぼうとした。


急げ!出血が多い…爪を抜いたらさらに血が…くそっ。



「ナイクさん!しっかり…、ナイクさーん!!」


「いいんだ。よくやった、マウア…。」



「ナイク…さん…」


「この剣を抜いた時から、俺は死を覚悟していた。この剣は…うっ、普通の人間が使ってはいけない。なっ、7年前…、マリーナの父シフ団長も、それを知りながら…闘った。この世界を…守る為に…うぐっ。これでやっと、シフさんに顔向けできる。あの時止めてくれた恩返しが、少しはできた…か…な。」



「何言ってんだよ。全然足りねーよ。俺とだって、また勝負してくれるんだろ?勝ち逃げなんて…許さねーよ…。」



涙が止まらねぇ…。



「ばっ、バカヤロー。ちゃんと…教えただろ?敵を確実に倒す時は、力なきものが援護に…回れと。」


「そんなの、納得…できないよ…。」


「うぐっ。後は頼む。この国を…みんなを…頼んだ…ぞ。」



ナイクさん?



「うわあぁぁぁぁぁ!」

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