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闇の輝き  作者: ぴん
6章
48/53

愛してる

王様と闇裏士(ミルカ)さんは、俺たちに何を求めてるんだろう…あ!!



「おい!コロシアムで試合が始まったぞ!」


「ねぇマウちゃん、今はそれどころじゃ…。」



「いいじゃねーかよマリーナ。わかってるって。デリー!夕方って事は新人戦だよな?」


「うん。って、マウア…そうなんだけどさ…。僕もマリーナと同じ気持ち…「カッコイイ剣士、いるかしら!」


「えーー、リホりんまでー?」



「バカだなぁ、リホ。俺が人気ナンバーワンだっての!」


「そうだね!」



「ぼっ、僕だって…それなりに人気は…。」


「デリー!裏切ったわねー。もー、これじゃアタシのキャラじゃないじゃん!こうなったら…うりゃー!」



マリーナが後ろから俺の両目を手で隠した。



「うおっ!?なんだよマリーナ!見えねーだろ!」


「うるさいうるさいうるさーい!今のうちにマウちゃんなんか死んじゃえー!」



「だってしょうがねーだろ?頭使うの得意じゃねーんだよ。」


「頭はこうやって使うのよー。」


ゴチーン…


正面に来たマリーナが、勢いよく頭突きした。



「いってー!頭使うって頭突きかよ!」


「アハハ、マリーナったら。」


「いつもの調子だね。」



それを見ていた天士(リホ)暗黒剣士(デリー)に笑われた。



「マウちゃん、ツッコミの練習だよ!」


「激しすぎるだろ!」



「あ!悪気込めるの忘れてた。」


「そんなもん込めるなー!」



「アッハッ、お腹痛い…アハハ。」



あの日の約束…今度は四人でこの丘に…だったな。気がついたら、みんな揃って笑ってる。答えを考えなくちゃいけないのにな…。



「おーい、マウアー!」


「あらら、メルナさんまで来ちゃったよ。隣にいるのはミルカさんか?」



なんで、あの二人が一緒なんだ?



「はぁ、着いた。なぁーにマウア、へこんでないじゃない。つまんないの。」


「メルナさん、へこむどころかここ見てよ、ここ。」



俺は、マリーナに頭突きされたおでこを指さした。



「なにそのたんこぶ。あなたまさか…覚醒?」


「マリーナのツッコミ!」



「エヘヘ。やっちゃった。」



今、メルナさんマジ顔で覚醒って言ったよな…?



「そっか、ミルカさんと一緒ってことは、メルナさんも聞いたんだね?」


「まぁね…。」



「メルナさんつえーからさ、俺を倒してくれねーかなぁ。」


「あのねぇ…、私はニレイの城で、あの闘いを見てるのよ?覚醒してなくても、マウアには勝てないわよ。」



「覚えてないんだよなぁ。俺そんなに強かったの?」



闇裏士(メルナ)さんが、斜め上を見ながら顎に人指し指を当てた。



「そうねぇ…ほぼ見えないって言ったらどう?」


「そりゃ、速いな!」



「それに、あなたは何度もあの化物の攻撃を食らってたのよ?私には無理よ。」


「まぁ、俺魔王だからな。」



「調子に乗るな!!」



闇裏士(メルナ)さんに頭をはたかれた。



「てっ。」



俺は、今まで自分が闇士(やみし)だと思ってたからな。コロシアム剣士の試合も、バイラインの時も、護衛団長(ナイク)さんの時も、魔獣の時も、俺は魔王の悪気で戦っていたんだな…。


なんか、複雑…。


だから、悪気の武器が平気だったのか…俺そのものだからな…。



「あら?マウア。らしくないわねぇ。そんなにへこむ事ないでしょ?」


「いや、メルナさん。今までの戦い全てが魔王の悪気だったのかって思ったら、ついね…。」


「全て?」



クラレスの闇裏士(メルナ)さんが、ファイの闇裏士(ミルカ)さんを見た。つられて俺もミルカさんを見ると、ミルカさんは微笑みながら小さくうなづいた。


…違うって言ってるような顔してるけど…。



「それでマウア、解決法は見つかったの?」


「全然。」



「鈍感ねー、全く…。」


「なにそれ?じゃあメルナさん知ってるの?」



「知ってるもなにも、自分に聞いてみればいいでしょ?」


「俺に聞く?」



俺のことを??うーん…。



「ねぇ、ミルカ。やっぱり覚醒前にやっちゃう?」


「ウフフッ、ダメよ。マウア様、信じてますからね。」



「ふ~ん、うん。」



「じゃ、マリーナ、デリー!帰るわよー!」


「え?メルナさん、今来たばっかなのに、もう帰るの?」



「マウアはここで、正座でもして反省してなさい。」


「えー!」



「それとも、逆さ吊りの方がいいかしら?」


「勘弁してよぉ。」



「リホ様、私もお城へ戻ります。マウア様、リホ様をお願い致しますね。」


「ミルカさん、俺はいいけど…リホはいいの?」


「私はいいわよ。マウアが城まで送ってくれるならね。」



「ならいいけど、羽は隠さねーとな。」


「あ!そうだった!」



『アハハ』



「じゃ、天士様とクソ魔王様、まったねー!」


「マウちゃんまた後でねー。バイバーイ!」


「マウア。マウアならきっと出来る!」



「あぁ…。クソ?」



3人は手を振りながら帰って行った。



「リホ様、マウア様、それでは…。」


「はい。」

「ミルカさん、今日はありがとうございました!」



闇裏士(ミルカ)さんも帰り、俺は天士(リホ)と、また二人っきりになった。


う、う~ん。なんか、緊張してきたな…。



「あのさ、リホ…。」


「なに?」



「この丘で二人で話した時も、こんな感じだったな。」



辺りは、すっかり夜になっていた。



「そうね。今日も星がキレイ。」


「俺は、あの時の約束を守れたのかなぁ。」


「うん!」


「そっか…。」



「やっぱりウソ。」


「えー!?」




「だって、まだ終わってないもの。」



そう言った天士(リホ)は、覚悟を語ったあの日の丘とは違い、吸い込まれそうな程眩しい笑顔をしていた。


なんだろう。リホは二人の想いに気づいたのかな…。



「でもさ、魔王になった姿の俺の笑顔ってどうなのよ?絶対こえーぞ?」


「そうかなぁ。意外にかわいいかもよ?」



「じゃあ、一応笑ってみるわ…。」



そうは言ったけど、自信はない。俺自身、覚醒した後どうなるのか全くわからない。意識は保てるのだろうか?リホは、覚醒しても翼以外変わらないように見える。そういえば、あの記憶の小柄な者は、今のリホと同じような感じだな。細かい所まで思い出せるって事は、俺の覚醒は近いのかもしれない。だけど、あのデカイ体で、俺はリホを攻撃するのか…。あの鋭い爪でリホを…嫌だ!魔王なんかになりたく…



「ならないわ。」


「え?」



「マウアは魔王にはならない!私は信じてるから。」



今一番欲しい言葉をもらったはずなのに、不思議と涙は出なかった。確信めいたリホの目が、俺をそうさせたのかもしれない。



「リホ…。」


「この丘でマウアと初めて話したあの日、私は全てを知らなかった。お父様に封印の儀を行うって言われても、どうするのかわからなかった。私が知っていたのは言葉だけ。お父様に言われてやったことは、マウアを探すことだけだった。でも今は、全てを知ってる…。」


「そっか…。」



リホ。リホは、俺に運命を共にするのが俺で良かったと言ってくれたよな。俺も、リホで良かったって、本気で思えるよ。



「私はね、みんなが出した答えがわかったよ。」


「そう言うと思ったよ。」



「マウア?わかったのは、みんなの答えよ?でも、私は最初から…知ってたわ。」


「最初から?」



「うん、一目でわかったから。」



あれ?今背中の羽が少し光ったような…



「リホ、今羽が…「光ったの?」


「あぁ。」



「天の力が溢れてるのね…。」



リホが両手の手のひらを見てそう言った時、俺は懐かしい感覚に襲われていた。



あれ?この感じ…あの時リホに治療してもらった時の温かい感じ…。


視点の合わない俺を見て、リホが何かを確信したように俺を呼んだ。



「マウア…。」



「リホ、しばらく目を閉じてていいか?」


「うん。」



ルーヒ国王様とミルカさんが、俺たちを導こうとした答え…。俺も…最初からわかっていたんだな。




……きた。この違和感は、リホが放つ天の力のせいだったんだ。これが、俺の闘い…。



「リホ…。」


「うん?」



横に座る天士(リホ)を見ると、天士(リホ)も目を閉じていた。

俺も再び目を閉じた。



「待たせて…ごめんな。」




「始めるのね………封印の儀。」




「あぁ…………終わりにしよう。」




「うん………。」











「リホ…」




「…」














「愛してる…」

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