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闇の輝き  作者: ぴん
6章
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真実の産声

「マウア!気がついたのね!

もう…平気?」


「あぁ、大丈夫だけど…リホ、少し雰囲気変わったか?」



「え?そうかなぁ…。」


「なんかさ、大人になったというか…そんな感じ。」



リホが一瞬下を向いたが、すぐに笑顔で俺をテーブルに招いた。



「私、昨日15才になったからね。」


「マジかぁ!おめでとう…あ、ごめん。プレゼントないや…。」



「いいのよ、気にしないで。

それより何か飲む?」


「コーヒーごちそうになっていいか?いつかの約束だけどさ。」



「そうね!じゃあ、私いれてくるから、ちょっと待っててね。」


「うん、ありがとう。」



リホは部屋を出て行った。扉付近で立っていた闇裏士(ミルカ)さんが、リホと入れ代わるようにテーブルへと来た。



「ミルカさん、リーナさんに聞いたんだけど、話って何ですか?」



闇裏士(ミルカ)さんは、相変わらず冴えない顔で俺に接した。



「マウア様、今のリホ様のお姿を見て、どう…思われますか?」


「うーん、さっきリホに言ったけど、大人になった感じかな。」



「他に何か感じませんでしたか?」


「他に?」



どうしてそこまで聞くんだ?そう言われてもなぁ…。



「ごめん、ミルカさん。よくわかんないよ。俺にはいつものリホにしか見えない。」


「そうですか…。」



闇裏士(ミルカ)さんが気を落としてる?俺に何かを期待していたとしか考えられないけど…。


ガチャ


「ん?」



リホが嬉しそうにコーヒーセットを持って帰って来た。



「おまたせー!はい、マウア。ブラックでよかったわよね?」



元の席に座った天士(リホ)が、カップにコーヒーを注いでくれた。



「あ、あぁ。」



やべっ、忘れてたわ。…まぁいいか。



「頂きます。ん…?うまい!!これ本当にブラックかよ!」


「ウフフ。ほんのり甘味があるでしょ?」



「ああ!これならブラックでも全然いけるよ!」


「え?」


「あ!アハハ、ごめんリホ。

実は俺、ブラック苦手なんだ。あの時は…、その…見栄張っちゃってさ…。」



「もーう、それくらい言ってくれればいいのにー。」


「でも平気だよ。これ本当においしいから。」



「だから言ったでしょ?自信あるって。」


「だな。リホには敵わないや。」


『アハハ』



明るく笑う天士(リホ)を見ていると、封印の儀をやり遂げ生き残った自信みたいなものを感じる。運命から解き放たれた!そんな感じ。闇裏士(ミルカ)さんの求めた答えって、これだったのかな?



「マウア?どうしたの?」


「いや、嬉しくてさ。リホに命を下さいって言われて、封印の儀の約束が守れたからな。」


「そう…だね。」



リホの顔が一瞬曇った?今の…なんだったんだろう…。



「マウア様!」


「え?」



再び、闇裏士(ミルカ)さんが鬼気迫る表情で俺を呼んだ。



「今日マウア様をお呼びしたのは…。」


コンコン!



ノックされた扉を見ると、そこには天士(リホ)の父ルーヒ国王様が立っていた。



「邪魔する。よいかな?」


「お父様!」



天士(リホ)が急に叫んだからなのか、ルーヒ国王様が突然来たからなのか、俺の中で一気に緊張が高まった。



「国王様!」


「ミルカよ、わしの口からマウアに話させてくれ。」



国王様が俺の名を知ってる?なぜ…。



「わかりました…国王様。」



ルーヒ国王様が、闇裏士(ミルカ)さんの肩をなだめるように叩き、側の椅子に座った。手のひらを組みじっと見つめた後、覚悟を決めたように話し始めた。



「リホ、そしてマウアよ。よく聞くがよい。そなたたち二人は、これから復活の儀に挑まねばならぬ。」


「復活の儀!?」



俺は、その言葉で思わず立ち上がった。


復活の儀って、終わったじゃないか!なら…あれは一体…。


泳ぐ俺の目を止めたのは、ルーヒ国王様の力強い目差しだった。



「マウアよ、リホの姿を見て、違和感を覚えたであろう。リホは、天士として覚醒を果たした。それは、いずれ訪れる封印の儀に備える為だ。」


「では…。本当にまた復活の儀が…。俺はもう一度リホと共に戦うという事ですか?」



「そうなるな。だが、その戦う相手はマウア、そなた自身であると言えよう。」


「えっ?」



俺自身…?俺が…俺と戦う??国王様は、何を言ってるんだ…。



「マウア、そなたは今いくつになる?」


「もうすぐ、15になりますが…。」



「そうか…。」



ルーヒ国王様は立ち上がり、窓際へ歩を進めた。城下を見つめながら、静かに口を開いた。



「その日…、そなたも覚醒が始めるやもしれん。」


「俺が…覚醒?」



頭の中で、天士(リホ)闇裏士(ミルカ)さんの態度がよぎった。悪い予感しかしない俺は、ガクッと椅子に座り込んだ。振り返ったルーヒ国王様が、少しうつむきながら話を続けた。



「マウア。そなたは世界を支配する魔王として、残念だが覚醒するであろう。」



魔王?俺が?国王様、悪い冗談だろ。何言ってんだよ…。そんなこと、急に言われたって理解できる訳な…。


俺の目に飛び込んできたのは、落胆する天士(リホ)の姿だった。


リホ…そっか……覚醒したリホにはわかるのか…。俺が魔王だって。それなら…。



「国王様…。今すぐリホに封印の儀を…。じゃなきゃ俺は…。」



世界を救えない…。


堪えきれない涙を流しながら、俺は国王様へ訴えた。



「リホよ。」


「はい、お父様……覚悟はできています。」



力ない天士(リホ)の声から感じた優しさが、心にしみた。



「マウアよ、わしはそなたを今すぐ封印するつもりはない。」


「どうして…ですか?俺だって、リホと約束したあの日から覚悟は出来てます!だから…。」



「フッ…。」



国王様が微笑んだ?



「わしは、二人の覚悟を見守ると決めたのだ!もちろん、これは世界の問題でもある。失敗は許されん…。だが運命を決めるのは、そなたたち二人であってほしい。わしはそう信じておるのだよ。」



国王様の両手が、俺と天士(リホ)の肩に、それぞれ置かれた。



「そうですか…。」



リホに感じた違和感は、天士の覚醒じゃなかったんだ。俺が…魔王だったんだな…。

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