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闇の輝き  作者: ぴん
6章
42/53

変えたはずの運命

「は!?」


目覚めた俺は、混乱していた。


生きてる?そんなはずは…あれは夢…だったのか?ここは…俺の部屋。わからねぇ。ニレイでの封印の儀で、魔王アーサが倒れた姿は覚えてるけど…。いや、あれだけのダメージを負ったのに、俺の体に怪我らしい怪我は何一つない。やっぱり、夢か…。


いつものように食堂への階段を降りていると、聞き覚えのある鼻歌が耳に入った。



「フフフンフフーン!」



ヤンさんの鼻歌?ってことは、夢じゃないのか!?


階段を降り終えると、テーブルに座る元裏士(リーナ)さんの背中が見えた。



「おはよう、リーナさん。」



俺の声を聞いた瞬間、元裏士(リーナ)さんが信じられないといった顔で俺を見た後、スッと席を立った。



「マウア!あんた、何時だと思ってるんだい。もうお昼よ、お昼!」


「リーナさん?」



「あんたまだ寝ぼけてるの!

全く…ならあたしが一発…。」



まだ訳がわからない状況の俺に、元裏士(リーナ)さんが怒鳴りながら近づいてきた。俺は、思わず目を閉じた。



「えっ?」



気がつくと、俺は元裏士(リーナ)さんに抱き締められていた。



「マウア…おかえり…。」


「リーナさん…。」



泣いてる…。



「本当に、よくやったよ。」


「うん…。」



俺、生きて帰ってきたんだ…。


涙が自然に溢れた。



「うっうっ…。」



「リーナ様、マウアをいじめるのは私の役目ですよ?」



この声は、闇裏士(メルナ)さん?


元裏士(リーナ)さんから離れた俺は、テーブルに座る3人を目にした。



「マウちゃん泣かないでよぉ。泣かない…マウちゃーん!よかったぁー!うわぁぁぁん。」


「マリーナ、お前の方が泣いてるじゃねーかよー。」



「だって、だって、嬉しい時は泣くのーー!」



マリーナが勢いよく飛びかかってきた。俺はマリーナを受け止めた。



「わかった、わかったからさ。これじゃまた、二人してまぶたメイクになっちゃうぜ?」


「アタシはかわいいからいいのー!」



「あははっ。」



涙を袖で拭うマリーナの肩を元裏士(リーナ)さんと押しながら、闇裏士(メルナ)さんと暗黒剣士(デリー)の座るテーブルへと歩いた。



「マウア、もうダメかと思っていたよ。でも、奇跡が起きたんだね…。」


「あぁ。」



涙を流すデリーと、熱く握手をした。


奇跡か…そうかもしれない。俺は、誰も変えられなかった運命を変えたんだよな。



「怪我はもう、大丈夫かい?」


「あぁ、大丈夫だ!」



やっぱり怪我していたんだな。あれからどれくらいの時間が…。



「みなさ~ん、お昼は感謝感激雨あられチャーハンで…マウアさーん!?」


「やっぱりあの鼻歌はヤンさんか。」



「もう大丈夫なのですか?」


「今ちょっと頭痛が…。」



「ダメじゃないですか!まだ寝てて下さい!」


「いや、怪我じゃなくてね…。」



「そうよ、ヤン。その頭痛はお仕置きなのよ。」


「メルナ様?お仕置きですか?」



呆然とする暗黒団長(ヤン)さんを見て、思わず笑ってしまった。



「アハハ、そうだよヤンさん。」


「はぁ…。ですが、本当に無事でよかった…。」



ハンカチで涙を拭いながら、暗黒団長(ヤン)さんは料理をテーブルに置いた。



「ねぇリーナ様、このチャーハン味見してみて下さい。おいしいですよー!」


「クラレスの国は色々あるわねぇ。」



そういえば、ヤンさんとマリーナがそんな約束してたな…。



「あら、これもおいしいわ。」


「でしょー!」



「メルナ様、(わたくし)が!作ったのですからね?」


「さぁ、私たちも食べましょう。」



「えーー!無視ですかぁ?メルナ様ぁ。」




「わぁ、メル姉おいしー。」


「うん、ヤンさんは料理上手だよね。」



あの戦い、あの騒動が嘘みたいな雰囲気だ。みんなも無事でよかったよ。



「マウア、あなたも食べなさい。元気出るわよー!」


「うん。」



取り分けられたチャーハンをメルナさんから受け取り、スプーンで食べ始めた。



「おー!マジでうめー。」


『アハハ』



みんなの笑顔…平和な空気…本当に終わったんだな。封印の儀が成功したんだ。


食べ終えた俺は天士(リホ)たちの事が気になり、あの場にいたメルナさんに聞いた。



「ねぇ、メルナさん。リホと裏士の…「ミルカ?」


「そう、ミルカさん!二人は…?」



「ファイの城に戻ったわよ。」


「そっか、無事でよかったよ。」



それから俺は、気を失ってからの一部始終をみんなから聞いた。

封印の儀が終わり、コロシアム騒動も片付いた後、ニレイの国はめちゃくちゃになったらしい。特にまずかったのは、裏士がいないことだったようだ。だけど、今のニレイの裏士(うらし)が、あのちっちゃいニコと言われたのにはびっくりした。闇裏士(メルナ)さんを目標にしていたぐらいだから、実力的に問題はないのだろう。裏士(ニコ)の側にいた、暗黒団長(ヤン)さんの部下であるクラレス暗黒団も残ったらしい。コロシアムで自然浄化されなかった悪気の排除を考えると、妥当な判断だ。

王様には、アーサ国王と険悪だったらしい弟が王座に就き、一応形にはなったようだ。あの王と険悪なんだから、まぁいい人かもしれない。傑作だったのは、覗き店ロウのおっちゃんが王様の側近ってことだった。緊急だし国中を知り尽くしてるから、適任と言えばそうなんだけど。


こうして混乱を治めるのに3日。気を失っている俺とリホを馬車に乗せて、ファイの国へ帰ってきたのがおとといだったようだ。天士(リホ)は昨日目覚めたらしい。

天士(リホ)の話が出た途端、元裏士(リーナ)さんが思い出したように言った。



「そうよマウア!あんたが目を覚ましたら、城へ来るようにミルカに言われてたんだわ。」


「そうなんだ。俺もリホやミルカさんにお礼が言いたいし、行ってくるよ。」


「アタシもリホりんに会いに行くー!」



「マリーナ、リホも目覚めたばかりだし、呼ばれてるのはマウアだよ。」


「お母さん…。」



「マリーナ、そんなにショボくれるなって。リホによろしく伝えておくからさ。今日は一人で行くわ。」


「はぁ~あ、つまんないの。」



「じゃ、行ってきます!」



俺は店を出て、一人ファイの城へと向かった。


剣を背負わずに街を歩けるなんてな。


城へ着き、門番に事情を話すと、壁にある電話で中へ伝えてくれた。中へ入ると、入り口に闇裏士(ミルカ)さんが立っていた。



「マウア様、お待ちしておりました。」


「ミルカさん!おかげでなんとか…。」



「話は奥で…、こちらです。」


「あ、はい。」



闇裏士(ミルカ)さんの表情に、妙な緊張感があった。三階まで階段を上ると、廊下を少し歩いた所で闇裏士(ミルカ)さんが足を止めた。



「こちらです。」



闇裏士(ミルカ)さんが扉を開けた。周りに人は誰もいない。



「どうぞ、お入り下さい。」


「どうも…。」


闇裏士(ミルカ)さんに一礼して先に部屋へ入ると、白い丸テーブルが置いてある椅子に座る天士(リホ)と目が合った。




「お!リホー。」



うん?リホ…?

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