封印の儀の結末
side-天士リホ
マウアが完全に魔王を圧倒してる…。私に残された力はわずか。マウアの…逆転のマウアの最期の一撃に、絶対に合わせる!
「ハァ~」
ひどく疲れてるはずなのに、背中を押されてる感覚がある。闘ってるマウアの姿が、私に力を与えてくれてるんだわ。でも不思議…なぜか懐かしくも感じる。あの姿…戦うマウアの姿。いつもあの丘から、私は見ていた。あなたに夢中になっていた…。
「グオォッ、こっ、小僧、許さん!」
「うっ…!」
「マウア!」
「うおぉぉぉ!」
大丈夫!マウアは負けない!
戦いは長引いた。マウアがいつ繰り出すのかわからない一撃を、私は一瞬も逃さずに待っていた。
はずだった…。
ある違和感が、私を襲った。
何かが…何かが違う…。圧倒していたはずなのに、マウアは予想以上に苦戦してる。疲労から魔王の攻撃も受け止める回数が増えてきた。輝きを放つ逆転の一撃が出せないの?
「はっ!?」
ようやく私は、その違和感の原因に気づいた。
ごめんね、マウア…。あなたは必死に闘い、何度も何度も逆転の一撃を繰り出そうとしていた…。こんなにキズだらけになっても、私を信じてタイミングを計っていた。私が攻撃するタイミングを。何度倒れても立ち上がって…。待っていたのは私じゃなくて…、
マウア…だった。
あなたの試合を全て見ていたのに、今になって気づくなんて…。マウアの狙いは同時攻撃。マウアが叩き込もうとした時では、私の攻撃が遅れる事がわかっていたんだ。この見覚えのあるリズム。あなたが剣を振るうタイミング。私は覚えてる。目では遅れる…。
私は目を閉じた。
次のタイミングで…全てを…。
まだ…。
違う…。
来た…。
3…。
2…。
1…。
私は目を見開いた!天の力を放とうとした瞬間、記憶にない記憶が脳裏をよぎり、手を止めてしまった。
「ぐわぁ!」
「さすがのお前も限界が近いようだな。止めを刺してやる!」
…今見た記憶は何?私の記憶じゃない。でも、闇を輝かせる程の一撃だった。もしマウアが同じ絵を見てるなら…。
私は、再び目を閉じて集中した。
やっぱりそう。この記憶は、コロシアムでのマウアの戦い方と重なってる。上段から着地して下段…。もう一度下段から縦に上中段へ振り抜きながら上へ飛ぶ。そして上段から剣を右手一本に持ち変え左からがら空きの中段へ…。
「ハァーーーー!!」
ジュバーーーン……
「グオォッ、オワァァァァ!」
やった…のね…。
バタン…
「リホ様ー!」
「お、おの…れ…わしは…わ…まだ…がはっ!」
ドーン…
「終わった…のか…」
バタン…
「リホ様…マウア様…。くっ。ミラ、私に力を…ハァッ!」
「ミルカ、浄化…お疲れさま…。全て、終わったのね…。」
「メルナ…、はい…。」




