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闇の輝き  作者: ぴん
1章
4/53

始まりの終わり4

「ただいまぁ…」


「…」



リーナさんもマリーナも、もう寝てるよな…。


二人を起こさないように、俺はそぉっと階段を登って自分の部屋へと入った。



「ふぅ~。」



やっと部屋に帰って来た気がする。デリーが入院して、一人で寝るのもかれこれ1週間か。デリーにあんな態度を取ったけど、本当は凄く恐い。俺があんな奴らと闘えるのか?剣士になって、やっと一人前になれたと思ってたのに…。

この世に悪魔がいて、俺が世界を救う?これが現実…あれっ、何泣いてんだ。リホの力になりたいけど…どうして俺なんだ…特別な人間ってなんだよ…。


その日、眠りにつけたのは朝方だった。



-翌日



「ふわぁ、おはようリーナさん。」


「マウア、おはようじゃないわよ。もうお昼よ。」



「え?昼?疲れてたのかなぁ。スゲー寝ちまった。」



「寝てる場合じゃないわよ。悪魔が出たんじゃないかって、噂が広まって街じゃ大騒ぎよ。確かに、一部のコロシアムの観客は見てしまったからね。護衛団の発表だと、悪魔ではなかったって言い続けてるらしいけど。」


「そうなの?話が違うじゃん。」



「当たり前でしょ。この街に悪魔が出た!なんて事になったら終わりよ。みんなが街を出て行ったら、国が崩壊してしまうわ。アンタ、まだ寝ぼけてるならアタシが一発…。」


「わぁー、待った待った。起きてる、起きてるって!」



それにしても、リホの件といい悪魔騒動といい、リーナさんは冷静だよな。歳のせいか…?って、まだ30半ばか。デリーと一緒で、知っていたのかな?



「とにかく、これ食べ終わったら訓練団に顔出してきな。」


「訓練団に?」



「行けばわかるわ。そうそう、娘も一緒に行くから、ちゃんとナイクに話してくるのよ。」



「それはいいけど、何でマリーナも一緒なの?」



「マウちゃん、酷ーい。」


食器の片付けをしていたマリーナの声が背中に突き刺さった。


俺の言い方が気に入らなかったのか?



「お店の看板娘と一緒に歩けて嬉しいでしょー?」


「いやいや、そういう意味じゃなくてさ。目的地が訓練団だからだよ。」



まさか、リーナさんはマリーナを訓練団に入れようとか考えてないだろうな…。俺たちみたいに。



「まっ、そういう事だからマウア、よろしく頼むわよ。」



「リーナさん。わかったけどさぁ…。」



そう笑顔で言われてもね。まぁ娘を訓練団に入れる感じじゃないからいいか。



「じゃマリーナ、行くか。」


「エヘヘ、お母さん行ってきまーす!」



とりあえずリーナさんに言われるがままに、俺とマリーナは訓練団施設へ向かった。


そういえば、マリーナと出かけるなんて初めてかもしれないな。俺はコロシアム剣士、マリーナはお店の看板娘。お互い忙しいから、そんな暇もなかなかないんだけど。

ナイクさんに話せか…。頭はまだ混乱したままなんだけど。今日リホに会って、もっと話を聞いてから色々考えようと思ってたのになぁ。

でも、リーナさんの頼みじゃ断れないし。とりあえず気持ち切り替えて、この用事を済ますか。



「なぁマリーナ、何でお前まで訓練団に?」


「アタシも知らなーい。」



「はぁ?何だそれ。てっきりマリーナは知ってるもんだと思ってたぞ。」


「アタシだって、ナイクさんに会えって言われただけだもん。」



隠してる様子はないか。本当に知らないみたいだな。まぁ、いいや。行けばわかるだろ。



「ナイク先生に会うのも久しぶりだな。いつぶりだっけなぁ?あ…。」


「ん?」



そういえば、護衛団長をしていたマリーナのお父さん、シフおじさんが事故で亡くなった時、ナイクさんは部下だったんだよな…。ナイクさんが、嘆いていたのをよく覚えてる…。



「マウちゃん!マウちゃんってばー!」


「えっ、あぁ。」



「今、気にしたでしょ!」


「いや、その…ごめん。」



「私は気にしてないから大丈夫だよ。」



マリーナは二・三歩スキップして先に行った。一連の騒動とわずかな知識から連想した俺は、聞かずにはいられなかった事を聞く為、マリーナに追い付いた。



「あのさマリーナ、もしかしてあの時シフおじさんは事故じゃなくて悪…「シッ!ほら、街の人たちに聞かれるでしょ!」



やばっ。リーナさんにも言われてたな。俺が知らなかったように、これは隠すべき事実だったな…。



「そうか。今ならなんとなくわかる気がするよ。だから、ナイクさんに会うのか。」


「そうじゃないかなー。」



体験に勝る知識はないってことか。俺の考えなんて、リーナさんにはお見通しなんだろうな。本当、不思議な人だ。



「そういえばさ、昨日は大丈夫だったのか?」


「うん、リホならちゃーんと送り届けたよ。すごく楽しかった。」 



楽しかった?



「そうじゃなくてさ。誰かにつけられたり、襲われたりしなかったか?」


「それはなかったけど、リホの帽子を届けに来た人ならいたよ。」



なにぃ!?



「ちょっと待て、マリーナ。今届けに来たって言ったか?」


「うん。何か変なの?」


「変!」



「あはは。変なのはマウちゃんだよ。」



俺?俺なの?



「だってさ、俺は天士に近づくなって言われたんだぞ?」


「そんなの当たり前でしょ。」



「そうなの?」



「天士には定められた運命があるんだから。それよりマウちゃん、着いたけど入口わかんない。案内してよ。」


「あ、そうだな…。」

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