表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の輝き  作者: ぴん
5章
39/53

逆転のマウア

突然現れた女性が、動かない堕天使長(ミラ)さんをうつ伏せにし、膝枕をしながら手を握っている。少しだけだが、二人の会話が聞こえた。俺は、二人の目の前で方膝をついた。



「ミラさん!」



どうして…どうしておっちゃんはミラさんを刺したんだ!?ミラさんは死んでしまったのか…?でも、いきなり現れたこの人は誰だ?知り合いっていうか、愛してるって…恋人なのか!?



「あんさーん!」



部屋の入り口付近に、走り去っていくロウのおっちゃんがいた。



「アッシはこれで失礼しまっせー!メルの姉さんに言われたことをしたまでですから、そいじゃー!」


「あー!おっちゃーん…。」



って、闇裏士(メルナ)さんの指示だって!?


俺たちの会話に、堕天士長(ミラ)さんに寄り添う女性が反応した。



「そうでしたか。メルナには、私の行動が読まれてましたのね…。」



目を閉じたままの堕天士長(ミラ)さんを見ながら、女性はつぶやいた。



「ミルカさん…。」


「リホ様、お久しぶりでございます。」



リホはゆっくりと、二人に近づいてきた。


ミルカ?…ミルカって、確かメルナさんが言ってたファイの裏士じゃなかったか?本来俺たちが探していた裏士…。若いな。闇裏士(メルナ)さんと変わらない年に見える。この人が天才裏士か…。



「ですがリホ様。今は一刻を争いますので、少し急がせて下さい。リホ様、今からミラの魂に天の力をお与え下さい。そして、私の体に…。」


「わかりました。」



この人、今から闇士(やみし)になるのか…。



「では、お願い致します。」


「はいっ。ハッ!」



堕天士長(ミラ)さんの魂に向かって、リホが天の力を放った瞬間だった。



「させるか!ミルカー!」


「ハッ?ネルア!」



あの水晶…放ったのは悪気か!まさか、ミラさんの魂に!?マズイ…!!



「なっ!?」



放たれた闇の力が、天の力とぶつかって浄化した。



「相変わらずせっかちねー。ネルア。」


「メルナさーん!」



ネルア…。そうか、あいつがニレイの裏士か…。魔人騒動の犯人だな。



「メルナさん、向こうは片付いたの?」


「マウア、私を誰だと思ってるの?」



「そうでした…。」


「それよりマウア、何よアレ!まだ終わってないじゃない!!しっかも、余裕こいて座っちゃってさー。」



闇裏士(メルナ)さんが指差したのは、玉座で方肘をつき、ニヤリと笑みを見せている魔王アーサだった。



「あの…ミラさんの事とか色々あって…。」


「まぁいいわ。さて、ミルカの方もうまくいったようね。」



ミルカさんを見ると、すでに闇士となっていた。ものすごい天の力を感じた。



「で、どうするの?ミルカ。」


「ここにある全てを排除します。私はリホ様と魔王アーサへの封印の儀に備えますので、後の二人はお任せします。」



後の二人?裏士(ネルア)と魔王の横にいる魔人か。



「そっ。じゃあ私はネルアをやるわ!マウア、あなたはあの魔人をやりなさい。」


「わかった!」



「じゃ、行くわよ!」


「おう!」



かけ声と共に、俺と闇裏士(メルナ)さんはそれぞれの目標へ攻撃を仕掛けた。



「だぁーりゃー!」


キーン!


「グオァ!!」


「ちっ…。」



なんて硬い爪だ。それに弱点の尾がない。これが完全体の魔人か…。簡単にはいかないな。真っ向勝負しかねぇ!



「マウアー、手助けしないわよー。」



闇裏士(メルナ)さんは、裏士(ネルア)の剣を受け止めながら俺を気にしていた。



「さっさと片付けて、俺がメルナさんの援護をしてやるよ!」


「生意気言うじゃない!」



「メルナー!」



裏士(ネルア)が、よそ見をしている闇裏士(メルナ)さんの剣を押し返した。



「くっ、私もキツい相手だったわね。」



俺も闇裏士(メルナ)さんも、互いの相手に苦戦していた。強いのは当然だが、何より不気味な魔王アーサの動きが気になっていたからだ。


くそっ、いつあいつが加勢するのかと考えてると、集中できねー。どうする…決め手がない…ん?背中から温かい光を感じる…。


振り返ると、天士(リホ)の体が天の力で包まれていた。



「マウア!封印の儀の準備が整ったわ!」



スゲー、なんだあの光は…。これが天士の本気…。


俺が天士(リホ)に目を奪われていたその時、闇裏士(ミルカ)さんが動いた。



「まずは、あなたにどいて頂きましょう!ハッ!」



瞬時に放たれた凄まじい天の力は、完全体の魔人の動きを止めた!



「グォゥォゥォ!」



これが、天才裏士と堕天士長が合わさった天の力…やっぱり普通の闇士じゃない。助かったぜ。チャンスだ!



「うおぉぉぉー!」



正面から突っ込んだ俺の剣が、魔人の心臓を貫いた!



「よし!」



完全体の魔人を倒した。だが、俺の中に不思議な感覚が残った。


こうもあっさり、あの完全体の魔人を倒せるなんて…ミルカさんの天の力のおかげだったのか?いや、闇士としての力が上がっているのか?



「ちっ。ビクめ、使えない奴だ。」


「ちょっと、ネルア。よそ見してると勝っちゃうわよー!」


キーン!


裏士(ネルア)闇裏士(メルナ)さんの攻撃を受け止めてはいるが、完全にメルナさんが押している。



「くっ、こっ、国王!!」


「なんだ?ネルアよ。」



「このままでは…くっ。」


「クック…。やっと、この体に慣れてきた所だ。どれ。」



魔王アーサは、左腕を右から軽く払った。



「ふぅん!」


「うおっ!!」



踏ん張る程の風圧が、部屋中を襲った。


めちゃくちゃだな…。やっぱ魔王だから、それくらい当たり前か。いよいよ、約束の封印の儀か。



「ミルカさん!俺はどうすればいいんだ!」



「ここからは、天士と天士の選んだ運命の戦い…。それ以上はありません。」



具体的な方法はわからないのかよ。



「リホー!」


「リホ様…。」



「マウア…ミルカさん…。」



リホが微笑んでる?そうか…そうだったよな…。初めて丘で話した時の約束。俺から最後まで笑顔でいようって言い出したのに…。ありがとう…リホ、おかげで思い出したぜ。これは、この闘いは小さな者が大きな者を逆転で倒すあの記憶!方法なんて、俺は最初から知ってたんだ。迷う必要はない!!


俺は天士(リホ)に微笑み返し、魔王へ立ち向かった。



「うおぉぉぉ!」



リホは天の力を魔王に放つ。



「ハッ!!」



俺は、一心不乱に剣を振るった。効かぬとばかりに、魔王アーサは避けようともしない。俺は攻撃を最小限でかわし、手を休めず反撃した。



「まだまだぁー!」



こいつの体が硬いなんて、最初からわかってるんだ。


だが、俺の攻撃もリホの攻撃も、ことごとく通用しない。


関係ない!まだ動ける!後ろからリホが支えてくれる。休むな。攻め続けるんだ!



「うおぉぉぉ!」


「その程度か…。」



「なっ!?」



その一言が、俺の足を止めた。


たった一言が、これ程のダメージになるのかよ…。くそっ。



「ハァ、ハァ…」



リホが肩で息を…。目は…大丈夫、諦めていない!ん…?なんだ?なんでこんな時に、俺はコロシアムでの試合を思い出してんだ?そうか…。



「もう終わりか?目など閉じよって、戦意喪失か!わからなくはないが、それもよかろう。アッハッハッハ。」



集中…集中だ。聞こえる…みんなが俺を呼ぶ声が…。


俺自身が先程気づいた異変に、天士(てんし)であるリホだけが気づいた。



「これは!…でも、いつものマウアの光とは何か違う。」


「リホ様!マウア様が逆転の一撃を出します。その時、最大の力を放って下さい!」


「ミルカさん…わかりました!」



二人の会話は…俺の耳には届かなかった。俺はまた、あの記憶の中にいたのだ。



「最期の悪あがきか。むむっ?悪気が強まっただと?なっ、なんだこの力は…うおっ。血?血だとぉ!うっ、くっ…くそぉぉぉぉ!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ