罪無き裏切り
「マウア…どうして?」
「どうしてって、助けに来たに決まってるだろ?」
「だってここはニレイの国…マウアがいるはずは…。」
今にも泣き崩れそうなリホの体を支えた。
「落ち着けリホ。それより無事でよかったよ!」
「マウア…」
「泣くなって!」
「だって私…もう…。」
「何言ってんだよ。封印の儀はまだなんだろ?」
「手遅れよ…。あの魔人に…あの魔王にどう立ち向かえばいいの?」
「確かにな…。」
スゲー悪気だ。
「でも、俺はまだ何もしてない!リホ、力を貸してくれないか?」
「マウア…うん。」
「大丈夫さ、俺たちならできる!俺を選んだリホを、天士の力を信じてるからな!」
「わかったわ…ありがとう!マウア。」
やっと、リホが微笑んでくれた。
「マリーナもデリーもみんなここで戦ってる!この国で会った人たちもみんなだ!俺たちを信じてな。だから、こいつを倒して一緒に帰ろう!リホ。」
「みんな…うん!」
気持ちは固まった。だけど、本当にどうすれば魔王を封印出来るのかわからない。…って、こんな時に何を考えてるんだ?俺は。頭使うのは、昔から苦手じゃねぇーか。
「よし、暴れてやるかー!リホ、援護頼むぞ!」
「うん!」
「そうはさせませんよ、マウア様。」
剣を構えた俺の前に立ちふさがったのは、堕天士長さんだった。
「ミラさん?」
「あなたにはここで…死んでもらいます!」
なっ!
「アーサ国王、いえ、魔王様。この者を私に任せて頂いてもよろしいですかな?」
「ミラよ、好きにするがよい。」
「はっ!」
ミラさんは、敵のふりをしただけじゃなかったのか?ダメだ!考えてる暇はない。あの顔はマジだ!目が殺意に満ちてる…。だけど納得できない。
「ミラさん!待ってくれよ!俺たちは味方だろ?」
「マウア様、これはあなたの運命なのですよ!ハッ!」
「くそっ。」
間一髪、堕天士長さんの放った光をかわした。
「ミラさん、止めて!」
「リホ様、口出しは無用ー!ハッ!ハッ!」
次々に天の力が俺を襲う。過剰な天の力は肉体を滅ぼす…だったよな。もらうわけには…。
「し、しまったぁ!?」
剣を…弾き飛ばされた…。
「止めだぁー!」
堕天士長さんの両手が激しく光った。
大きさが違う…避けきれない。なんでここまで来て、堕天士に殺されなきゃいけないんだよ…。
まぶだを閉じかけたその時だった。堕天士長さんの光が失われていった。前に倒れたミラさんの背後に現れたたのは、覗き店ロウのおっちゃんだった。
「おっちゃん!?」
「すまねぇな…ミラ殿…。」
「ロウ…なぜ…。」
倒れた堕天士長さんの背中は、紅く染まっていた。




