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闇の輝き  作者: ぴん
4章
27/53

メルナと暗黒剣士

今この人、裏士(うらし)って言ったよな…。



「まさか。変な冗談やめてよ。」


「でもマウちゃん、本当っぽいよ。あの店員さん、暗黒剣士じゃない?ね!デリー。」



「そうだね。いつのまにか、後ろ手に暗黒剣を持ってる。奥へ逃げたんじゃなくて、魔人に気づいたから剣を取りに行ったんだろうね。」



デリーの言葉に、その通りって顔してやがる。背は180くらいありそうだけど、細身で強そうには見えないけどな。



「じゃあ、本当にこの人は裏士かよ。俺たちとそんなに歳変わんないぞ?」



「あなたたちより、ちょっぴり大人よ。でも、信じられないのも無理はないわ。こんな所に裏士(うらし)がいるはずないものね。」



いや。ある意味俺たちなら普通かも…。



「あ、アハハ…」


「それで、あなたたちはどこの国の人?」


「何言ってんの?この国の外れ村…「はい嘘。だって、この国の人ならカレーを単品でなんて食べ方しないわよ?あれはお好みでご飯にかけるトッピングよ。」



「え?そうなの?」


「ぷっ。アタシも変だと思ったんだぁ。」



おいマリーナ、どっちの味方だよ。



「で、どこから来たの?」


「確かに、僕らはこの国の住民ではありません。ただ、素性は話せないので許して下さい。」



暗黒剣士(デリー)が頭を下げて切実に頼んだが、メルナと名乗る裏士(うらし)からは返事がない。拳を口に当て、何かを考えている。



「そうね…。私たちがクラレスの国から来たって言ってもダメかしら?」


「めっ、メルナ様ぁ?」



男の店員が焦ってバタバタしている。


素性を知られたくないのは同じらしいな。でも、ニレイじゃなくて、クラレスから来た裏士なのか…。裏士ってたくさんいるのかな?



「クラレスですか?それが本当なら何故?目的はなんですか?」



暗黒剣士(デリー)が詰め寄るように言った。すると、クラレスの裏士は呆れた顔をした。



「ねぇ、さっきから私ばかり話してるけど…まぁいいわ。おそらく、あなたたちと同じじゃないかしら。」


「え?じゃあリホか?」


「あー、違う!マウちゃんのバカっ。」


「いてっ。」



闇士(マリーナ)に頭を叩かれた。


本気でいてぇぞ…。



「おねーさん、魔人ってことでしょ?」


「そういうこと。でも、ちょっと待って。今そこの男が言ったリホって…、ひょっとして、天士(てんし)がこの国に来てるの?」


「あー、いやー、そのー。」



「マウア。」



デリー、その顔はごまかしても無駄ってことか。わかったよ。



「あの、もしよかったら力を貸してもらえないでしょうか。誘拐された天士(リホ)を助けたいんです。」


「そうねぇ…。」



「いいのか?デリー。」


「マウちゃん、手遅れよー。」


「おぅ…。」



まぁ、悪い人たちには見えないけどな。



「天士の誘拐か…穏やかじゃないわね。魔人騒動と天士のニレイ入り…何か関係があるのかしら…。」


「あのー、メルナさーん?」



「なぁに?お嬢さん。メルナでいいわよ。」


「じゃあ、アタシもマリーナって呼んでね。」



「マリーナ?あなたマリーナっていうの?もしかして母親は、ファイの元裏士リーナ様?」


「そうだよー。今は食堂のママだけどね…。エヘヘ。」



「知ってる知ってる。行ったことはないけど、この店やってるのはリーナ様の影響なのよ!」


「そうなの?この店入ろーって言ったのアタシなの。ウチに雰囲気に似てたから。」



「ホントにー?アハハ!」


「アハハ!」



あれ?さっきまでの緊張感はどこに行ったんだ?



「それなら安心。メルナ、アタシからもお願い。リホは天士だけど親友なの。力を貸して!」


「わかったわ。どうやら、各国で起こってる魔人騒動と天士の誘拐は関係ありだしね。」


「そうなの?」



「えぇ。私はこのニレイが魔人騒動の犯人と疑っていたの。そこに天士の誘拐が加われば、私の推測は確信に変わるわ。」



自信に満ちた目だ。


このメルナってクラレスの裏士はスゲー人かもしれないな。元々裏士がスゲーのは、リーナさんでわかってるんだけど。



「ニレイが魔人騒動の犯人なら、リホを助けてお母さんの容疑も晴らせるよー!」


「リーナ様が犯人?ファイではそうなってるの?じょーだんじゃないわ。そんな事聞いたらますます燃えてくるじゃない。」



「うん、一石二鳥だね。よーし、やるぞー!メル姉がんばろーね!」


「メル姉?マリーナ、あなた私を姉のように思ってくれるの?ホントに?」



「うん。アタシ一人っ子だし、メルナみたいなお姉ちゃんがいたらうれしいよ。」


「あはっ。感激…。まるでリーナ様が私の母のように感じる…。マリーナ!」


「メル姉ー!」



なんだこれ?抱き合ってるけど…。



「ねえ店員さん、あのメルナって人ホントに大丈夫?」


「メルナ様は愛情深いお人なのです。あー、メルナ様、ヨカッタ、うんうん。」



泣いてるし。この人も大丈夫か?



「マウア、いい人たちにはかわりないと思うから。」


「あぁ。」



そうだけどさ…。なんだ?この展開。結局俺たちの素性はバレたけど、その相手はニレイじゃなくてクラレスから来た同じ目的を持つ人だったって事だよな。一応助かったか。デリーとマリーナは協力を求めたけど、裏士のメルナって人は強いのか?リーナさんも裏士だけど、戦闘はお任せだったからな。あの包囲網は、足手まといを連れて突破できる数じゃないぜ。



「ねぇメルナ!」


「ストーップ!あなたはメルナさんとお呼びなさい。」


はぁ?



「なんでー?マリーナにはメルナって呼べって言ったじゃん!」


「裏士の勘よ。いえ、直感かしらね。」



どこかで聞いた台詞…。



「わかったよー。で、メルナさん!あんた裏士だろ?よくこんな危険なことやってるよな?この店員さんが強そうなのはわかるけど、メルナさんはついてこれるのか?」


「あら、そんなに心配なら、あなたが私を守ってくれてもいいのよ?」



なんだ?この上から目線は!



「まぁ、その必要はないけど。だって私、裏士(うらし)だけど闇士(やみし)でもあるのよ?」


「へ?闇士?」


「すごーい。メル姉すごいよー!」



「当たり前でしょ?普通、裏士が前線に立つ訳ないじゃな~い。マリーナ、こいつってもしかして、頭弱い?」


「エヘヘ、ちょっとね。でも面白いよ!」


「マリーナ、面白いって言うなー!」



「まぁそういうこと。闇士は禁術だからナイショね!国が違えば、ルールも多少違うのよ。」


「そういうもんかね。」



「それよりあなた、マウアだったかしら?あなたの方こそ、足をひっぱらないでよね!」


「なっ。」



「それとあなた!」


「デリーです。」



「デリーね。あなたの力はさっき見たわ。暗黒剣士でも上位の腕ね。マウア、あなたは何?闇士?暗黒剣士?まさか、魔人じゃないでしょうね…?」


「んなわけねーだろ!俺は闇士だよ。だけど、何で闇士なのかわからないんだ…。メルナさんが裏士なら、何か知らない?」



「あら意外ね。素直なとこもあるじゃない。そうね、残念だけど私に知るすべはないわ。」


「…そっか。」



やっぱり、俺とデリーはファイの裏士の仕業なのかもしれないな…。



「でも、どうしてあなたたちが天士を追ってるの?親友なのはわかったけど、本来は堕天士と暗黒団の仕事でしょ?」


「暗黒団?特殊護衛団じゃなくて?」


「あぁ、ファイの国ではそう呼ぶのね。」



「あのねメル姉。アタシたちにもよくわからないの。でも天士(リホ)を追うのは、マウちゃんがリホりんに選ばれたからなの。」


「ウソ?あなたが天士に?」



「一応ね。何で俺なのかわかんないんだけどさ。だって闇士でいいならマリーナだってそうだろ?なのに、リホは俺だって…。」


「プッ…。」



何で笑うの?



「そんなの簡単じゃない!」



え?

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