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闇の輝き  作者: ぴん
4章
26/53

謎の裏士現る

「ここがニレイの国かぁ。」


「見てよ、マウア。あれってコロシアムじゃない?」



「この国の剣士と戦ってみたいなー。強いかな?」


「あれ剣士じゃない?」



「なんか…、こっち見てるな。」


「うん、強そうだね。」



「どうした?」



小隊長が声をかけてきた。



「あー、コロシアム剣士か。俺も昔は暴れたもんだ。今はすっかり落ちついちまったけどな。これでも一応、少しは名の通った剣士だったんだぞ?」


「あのー、どうして辞めちゃったんですか?」



「簡単な話さ。勝者のみが生き残れる世界だからな。そんな奴は一握りだ。お前らだって、憧れてた時くらいあっただろ?」


「そうですね。でも、自分には厳しいと思ってましたから。」


「もったいねーな。いい腕してるし、やってみればよかったじゃねーか。」



「いえ、護衛団に憧れてましたので。」


「まぁ、これも立派な仕事だけどな。そうだ!今度、参加自由の団体戦があるんだが、試しに出てみるか?成績次第では、エリートとの試合が組まれるかもしれないぜ。」



「本当ですか?じゃあ…」


「いえいえ、とんでもないです。」



つい勢いで返事をしてしまった俺を、暗黒剣士(デリー)が止めた。



「僕らにはとても…。ね?」


「ん?」



「お?こいつはやりたそうな顔してたけど。」


「いいえ、僕らには無理ですから。」



わかってるよ、デリー。そんなに睨むなって。ごめんごめん。



「まぁ、いつでもって訳じゃないが、やる気になればまたチャンスはあるだろ。」



コロシアムを過ぎ、しばらくするとニレイの城へ着いた。



「よーし、荷物は倉庫に運べ。お前らもついて行け。ご苦労だった。」


「はい。」



ここがニレイの城…。って、ワクワクしてる場合じゃなかったな…。



「見てマウア。あれ!」



暗黒剣士(デリー)は王様が乗っている馬車を見ていた。降りてくる人の中に、ドレス姿の少女がいた。


あの後ろ姿、間違いない!



「やっぱりリホだ!よーし…。」



「おい、お前ら。早くその荷物を運べ!」


「は、はいっ」



くっそー。また見失っちまうぜ。



「マウア、確認出来ただけでも収穫ありだよ。でも変だったね。連れ去られたっていうより、むしろ自分の意志で来たようにも見えたけど…。」


「どっちでもいいさ。連れ帰ることに変わりはない。」



裏口で闘ったあいつが全てを物語ってる。理由はわからないけど、危険な事だけはわかるんだ。


荷物を倉庫に運び終えた俺たちは、抜け出す隙を伺っていた。



「よーし、ご苦労。今日はあがっていいぞ。」


「お疲れさまでしたぁ。」

「うっしたぁ!」



なんとか潜入成功だな。さて、城の内部へ行くか!


暗黒剣士(デリー)に耳打ちし、行動を開始しようとしたその時だった。



「おい!お前らどこへ行く?」



くそっ。小隊長に見つかっちまった。



「ちょっとトイレに…。」


「目の前にあるじゃないか!疲れてるのか?」



「あー!そうでしたね。アハハ。」


「早く休めよ!」


「はいっ!」



倉庫を出てすぐ側のトイレへ仕方なく向かった。だが、偶然にもそれが良かったのかもしれない。トイレを出て冷静に城を見渡すと、兵士が個々ではなく集団で配置されていた。ファイの城の数倍の警備体制に、異様な雰囲気を感じた。

暗黒剣士(デリー)も、同じ事を考えてる様子だ。城の中へ行きたいのに、顔の向きとは反対に足は城から遠ざかっていく。


これじゃ、強行突破も出来ないな。リホの無事は確認できたけど…。



「デリー、これからどうする?」


「そうだね。とりあえずどこかで一休みしない?作戦はそれからだね。」



俺たちは、門を出て街へ向かった。



「リホはとりあえず無事だし、何か食べたいな。せっかくだしさ、ニレイの名物とかないかな?」


「それいいね。じゃあお店探そうよ。」


「おう。」

 


そう言えば、エビしか食べてなかったな…腹減った。



「ん?デリー、何か忘れてるような…。」


「あ!?マリーナだよ。マリーナの事を忘れてた!」



急いで城へ戻ろうとしたその時だった。横から聞き慣れた声がした。



「ほんとヒドイよねー。こんな可愛い子を忘れるなんてさー。」


「うおっ。」


「マリーナ!無事でよかったよ。でもどうやって?」



闇士(マリーナ)は得意げに言った。



「コロシアムの辺でササッっとね。お城に入っちゃったら出にくいでしょ?」


「全然気づかなかったな。」


「さすがマリーナ。アハハ。」



「それでデリー、城の様子はどうだったの?「おいマリーナ!なぜ俺に聞かない!」



「え?マウちゃんアホだから。」


真顔で言われたぁ!



「まぁまぁ二人とも。マリーナ、潜入するにはかなり厳しいよ。警備が厳重すぎだね。異様なくらいだったよ。」


「ふ~ん。」



「でもな、マリーナ。リホの無事は確認出来たぞ!」



どうだ!マリーナ。俺だってやるときはやるんだ!



「そう。で、これからどうするの?」



今度は普通に言われたぁ!まぁ、リホは天士だし簡単には殺られないって信頼の証なのかな。



「マウちゃん、落ち込んでないでさぁ、どうするか考えようよ。」


「それなら、名物でも食べながら考えようかと…。」



しまったぁ。こんなこと言ったら、もっとマリーナに怒られる!

マウちゃん!そんな呑気なこと言ってないで早くリホを助けるわよー!観光に来た訳じゃないんだからねー!

う…幻聴が聞こえるぅ…。



「あわわわわ」


「おぉ、アタシも食べたーい!ねぇ、はやく行こうよー。」


「へ?、あれ?」



「マウア行くよー。」


「あ、うん。あれれ?」



怒られなかった…。



「なぁマリーナ。お前の余裕は、リホは誘拐じゃないってことなのか?」


「うーん、わかんない!」



「なっ、なんだよそれ。」


「わかんないけど、リホは天士(てんし)だよ?その気になれば、マウちゃんなんて一撃じゃないの?」



その言葉はグサリと来るが、そうかもしれないな。



「それにマウちゃん、腹が減っては救出は出来ぬ!だね。」



微妙に違う気がするけど。気のせい?



「っていうか、マリーナ。お前ケーキとか食ってたんじゃねーのか?」


「女は別腹があるの。」



それは意味が逆じゃないか?



「あそこがいい!何か雰囲気がウチに似てない?」


「ん?」



ふむ。それとなくリーナさんの店に似てるな。



「うん。そうしよう。」


「じゃあ決まりね。」



完全に闇士(マリーナ)のペースで、とりあえず腹ごしらえをする事にした。



「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「三人です!」



闇士(マリーナ)が答えると、テーブル席へと案内された。


店内も、なんとなくリーナさんの店と似てるな。



「よっと。ねぇ、何にする?

アタシはねー、このエビドリアってのにしようかな。」


「僕はこのジャージャー麺かな。マウアは?」



「へへっ、デリーもマリーナもわかってないなー。ここはニレイの国だぜ?俺はこのカレーってのにする。横に小さく書いてあるし、隠れメニューみたいで怪しいだろ?」


「マウちゃん…それ。ただのダジャレじゃん…!」


なっ!?



「ちげーよ。来ればわかるって!それより早く頼もうぜ。すいませーん。」



「お決まりでしょうか?」


「えーと、これとこれと…。」



「かしこまりました。少々お待ち下さいませ。」



腹ごしらえが済んだら、リホを助ける作戦を考えないとな。リーナさんにも時間がないんだし…。


雑談をしていると、注文の品が揃った。



「ご注文の品は、以上でお揃いでしょうか?」


「はーい!」


「では、ごゆっくりどうぞ。」



「いっただきまーす。うーん、美味しい!」


「こっちも美味しいよ。」



闇士(マリーナ)暗黒剣士(デリー)は満足そうだ。


なるほど、これがカレーか。



「スープ?かな…。」


「なんか、色がね…。」



「色が?」


「それ以上、レディに言わすなー!」


「いてっ。」



闇士(マリーナ)に、平手で頭をはたかれた。


相変わらずマリーナのツッコミは本気だな。



「いいからマウちゃん、食べてみなよ。じゃなきゃわかんないし。」


「そうだな…名物だしな。よし!」


ガシャーン! 


突然、どこからか酒ビンが飛んできた。俺たちのテーブルにあった全ての食べ物が床に落ちてしまった。



「あぁぁぁぁ!!俺のカレーが…。」


「おっとすまねぇ。空きビンを片付けるつもりだったんだが、手が滑っちまった。」



「まだ食べてないのに…。てめぇ、何のつもりだ!」


「なあに。ちょっとした挨拶さ。」



3つ離れたテーブルにいたその男は、明らかに俺たちを狙った。



「あまりにおもしれー注文してやがるから、ついな。」


「おもしれー注文だと?」



「あぁ。笑いすぎて腹筋が割れちまうぜ。」



どれだ?エビドリアか?ジャージャー麺か?まさか?俺のニレイ名物カレーか?



「ぼ、僕のジャージャー麺が…。失礼なー!」



俺より先に、温厚な暗黒剣士(デリー)がぶちキレた!



「ぶはははは。そんな怒った顔されちまうと、嫌でも殴りたくなるじゃねーか。」



この男、見た目は確かに自信ありそうな体をしている。でも、デリーは剣を構えてるんだぞ?あの余裕はなんだ?



「マウちゃん、あいつ魔人だよ!」


「なに!?」



「魔人!?」



奥に逃げたか。あの店員に聞かれたのはマズイな…あっ!デリー!



「食べ物を粗末にするなー!」



暗黒剣士(デリー)が斬りかかってしまった。


今もめ事は本当にマズイ!



「くっくっ。返り討ちに…はっ、速い!」


「はあぁぁぁぁ。」


「ぐふっ。」



暗黒剣士(デリー)の剣が男の頭部を直撃し、剣が真っ二つに折れた。ニレイの兵士の剣に、悪気が入っていなかったからだろう。男に傷はないが、気絶させるには十分な一撃だった。


やっちまった…。



「ハァハァハァ…。」



「マリーナ、デリーを怒らせるの辞めよう…。」


「そ、そだね…。」



「さ、飯もダメになっちゃったし…そろそろ…。」



デリーを連れて逃げるしかねー!!

ハッ!?


そう思った瞬間、先程奥へ逃げた男の店員が出口方向に立っていた。


マズイ…どうする…。



「助かりました。私共は、お客さまに手を出すことはできませんので…。ありがとうございます。」



いたって普通の態度だな。気づいてないのか…?それなら…。



「いえいえ、絡んできたのは向こうだし、全然問題ないですよ。」


「そうですか。」


「じゃ、これで…。」



よかった…。いきなり正体バレるとか、リホ救出どころじゃなくなるからな。



「すみませんが、お礼ついでに1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「え?」



「先程、そちらの女性が彼を魔人と申されたのは何故ですか?」


「げっ!?」



もうダメだ。完全にバレてる。



「マジーって言ったんですよ。ね?マウちゃん?」


「そうそう、マジーって…。」



それでもごまかそうとした闇士(マリーナ)と俺だったが、奥から出てきた女性の声で観念した。



「悪気…間違いないわね。」



ゆっくり倒れている男へと、その女性は近づいて行った。



「隠してもダメみたいだね。この人にもバレてるよ。」


「デリー。そうらしいな。」



「あなたたち、一体何者なの?」


「先に聞いてきたのはそっちだぜ?」


「そうね、失礼したわ。私の名はメルナ。裏士(うらし)よ。」



「う、裏士ぃ!?」

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