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闇の輝き  作者: ぴん
4章
25/53

ニレイへの潜入開始

ニレイ?犯人は他国だって言うのかよ…。



「そう。あの二人が疑ってたわ。でも、特護である以上動けないとも言ってた。」



悪魔騒動もあるし、なにより天士(リホ)がさらわれたんだ。でもどうする…?まともに行っても真相は掴めそうにないな。


難しそうに考えていると、闇士(マリーナ)がワクワクしながら言った。



「潜入しちゃえばいいのよ!アタシ変装は得意だよ。」


「変装かぁ。でもマリーナ、何に変装するんだ?イノシシか?ヘビか?」



「マウちゃん、何で動物かなぁ…。まぁいいや。とりあえず今からあの王様帰るし、チャンスじゃない?」


「そうか。護衛団員だね。」


「さすがデリー!せいかーい!」



護衛団員に変装か…。



「そうと決まれば待ち伏せだな。急ごう!」


「みんな、気をつけるんだよー。」


「はーい。」



元とはいえ、裏士(うらし)のリーナさんはさすがに動けない。ニレイの国への潜入は、俺たち3人で行く事にした。


まさか今日、極秘潜入するとは思わなかったな。だけど、本当にリホはニレイの国に連れ去られたのか?一体目的はなんなんだよ…。


門を出て橋を渡り、街へ繋がる人気(ひとけ)のない森の道で、俺たちはニレイの集団を待った。


これで準備完了だ。



「来たぞ!ニレイの護衛団だ。じゃ、頼むぞ。」


「マウアもね。」



俺は足止め役の為、先にある街へ走った。暗黒剣士(デリー)闇士(マリーナ)には、後方の荷物を運ぶ手押し車を狙ってもらう。



「デリー、来たわよ。」


「うん。」



「今よ!引いてー!」



土で隠した板に紐を着け、車輪を軽く穴に落とす作戦だ。


ガシャーン!



「ん?何だ?今の音は?」


「すっ、すみません。車輪が穴に。」


「早く出せ。いいか押すぞ、せーの。うぅぅぅ。はぁ、ダメか…積み荷が重いな。」




「どうしました?」



そこにデリーがタイミングよく登場だ。



「あぁ、町の人か。ちょっと車輪を落としてしまってね。手伝ってもらえるか?」


「いいですよ。」



「すみません。前方で酔っ払いが団員に酒をよこせと絡んできまして…。」



「ちっ、すでに遅れているんだぞ!もういい、前方は俺が対処する。お前はここを手伝え。」


「はっ、はいっ。」



前方にいるのは、もちろん俺だ。



「あー?早く酒よこせって言ってるだろー?いいじゃん。一本くらい。」



「こいつか?」


「は!申しわけありません。」



隊長…いや、胸にある星の数からして小隊長だな。



「ハァ…。おい君!わかったから、これで勘弁してくれ。」


「本当に一本かよ。仕方ねぇなぁ。」



「君は未成年だろ?ほれ、あんまり飲むなよ。」


「わかってるよ。ありがとな。」



これで後方に気は回ってないはず。時間は稼いだぜ。後はデリーとマリーナ待ちだな。



「せーの、よいしょーふぅ。やっと出せたな。少年、ありが…グフッ。」


「いいえ、こちらこそ。許してね…。」



「グフッ。」


「ごめんねー。」



酒を持って、集団とすれ違うように後方を目指す。すると、暗黒剣士(デリー)闇士(マリーナ)が気絶させた兵士を引きずって森に寝かせる姿を目にした。


うまくいったみたいだな!


俺は、走って二人と合流した。



「二人は早く着替えて。アタシは荷台に隠れるから!」



闇士(マリーナ)は、脱がしたニレイの護衛団の服を俺に投げ渡し、シートで囲まれた荷台へピョンと乗った。



「マリーナの奴、楽しやがって。」


「仕方ないよ。この服は男物だし。それよりマウア、急ごう!」



着替えた俺と暗黒剣士(デリー)は、台車を引いて前方との合流を目指した。



「あぁ。くっそー、重てー!」


「あー、これ美味しそう。これは何だろうー。あー!ケーキ?」



「…!くっそおぉぉぁぉ。」


「まぁまぁ。」



しばらくして、ようやく前方最後尾に追いついた。調度街へ入るところだった。誰にも見られることなく、こうして変装は成功した。


後は、潜入するだけだな…。



「遅くなりました。申し訳ありません。」


「おう、ご苦労。もう遅れるなよ。」



あ、さっき酒をくれた人だ。



「はいっ。」

「はーい!」



「ん?今女の声がしたような…。」



マリーナのバカ!



「きょ、今日は街もお祭りですからね。ほら、あちらで女性が歌を歌ってますし…。」


「おぉ、いいなー。次は護衛ではなくプライベートで来たいものだ。」


「アハハ、そうですね。」



なんとか暗黒剣士(デリー)がごまかしたが、俺は闇士(マリーナ)に言わずにはいられなかった。でも、小声で…。



「マリーナのバカ!デリーに感謝しろよ!」


「ごめーん。つい返事しちゃった。」


「ふぅ。」



暗黒剣士(デリー)も安堵したようだ。俺たち集団は、街を出てファイの国境を通過した。


他国は初めてだな。ここから山道が続くのか。


荒れた道で荷台をゴトゴト揺らしながら、俺はすれ違った豪華な馬車の人影を思い出した。



「ところで小隊長、あの豪華な馬車に乗っておられるのは国王様でしょーか?」


「当たり前だろ!」



「そ、そうですよねー。まさか国王様以外の人が乗ってるなんてことは…。」


「おい、新人…。」


顔が曇った!覗きこんだのがまずかったか?


「はい。」


やべぇ…。



「ここだけの話だがな。実は客人も乗っておられるようだ。確か…女性だったな。」



よかったぁ。だけどさっきの顔はなんだったんだ?



「女性!で、ありますか。」


「詳しいことは俺にもわからない。国王様がファイの国の女性を気に入って連れてきた!とかいう話だろうな。羨ましいぜ。」



そういうことか…。



「本当ですかー。それは羨ましい。どんな方かお目にかかりたいものですなー。」




「ばか野郎。これは内密と言っただろ。もう…忘れろ。」


「そう言われましても、気になるもんは気になると言うか…うおっ。何すんだよ。」



突然、足元に矢が突き刺さった。



「マウちゃん、多分リホよ…。」


「えーーーー!あ…。」



「どうした?急に大声出して。」


「いえ、何でもありません。突然足元に矢が刺さっただけです。」



「矢だと!敵襲か?どこからだ!」


「ぼっ、僕が彼を驚かそうとして、つい矢を。お騒がせしてすみません。」


「あのな、今は護衛中だぞ。任務に集中しろ!」


「はっ。申し訳ありません。」


「お前もだ!たかが矢1本でそんなに驚くな。」



「そんなこと言われても、これ普通の矢じゃないですよ?」


「普通じゃない?じゃあ何だと言うんだ!」



しまったぁ!つい口が…。


「そ、それは…その…」


「盗賊だぁ!」


ん?



「そ、そうです。盗賊の矢です!はい。」


「そうか、わかったぞ。お前ら前方の盗賊に気づいていたんだな。だが、わざと驚いたフリをした。敵の狙いは我々の同士討ちだろうとな。敵を騙すにはまず味方から…か。よくやった!我々の混乱に乗じて、盗賊の主力部隊が突撃する作戦だったんだろうな。」


「は、はいっ。多分その通りであります。」


「さすが隊長です。恐れ入りました。」



あぶね…助かった。



「安心するのは後だ。盗賊を片付けるぞ!」


「はっ。」



小隊長と暗黒剣士(デリー)は、盗賊討伐へ向かった。



「危なかったね。マウちゃん。」



マリーナぁ!


「誰のせいだよ。誰の。」


「マウちゃんが、リホって気づかずに騒ぎを大きくしそうだったからでしょー!天士が乗ってるのも、下には秘密かもしれないし。」



「だっ、だからって矢はねーだろ!」


「仕方ないじゃん。手っ取り早いんだもん。」



「あのなーマリーナ、知らせるだけなら他にも…「おいお前、何をぶつぶつ言ってる!早くこい!」


「あ、はいっ、小隊長。」



話は後だ。でも本当にあの馬車にリホが?捕まったんじゃないのか?



「でりゃ。」


「ぐはっ。」



「ふう。」


「ようやく片付いたな。お前たちもご苦労だった。新人にしてはなかなかの腕前だったぞ!」



「ありがとうございます。」

「うっす!」


「だが、まだまだ気を抜くなよ。」


「はい。」



「危なかったね…マウア。」


「マリーナのやつには困ったもんだよ。まったく…」



「もう食べられなーい!」


「え!?」

「げっ!?」



「ん?どうした!」


「あ、いえ。先程のお誉めの言葉でお腹いっぱいでして。」


「そうか、ならいい。」



小隊長の目を盗んでシートをめくると、闇士(マリーナ)は俺たちが盗賊と戦ってる最中に寝ていたようだ。



「こっ、今度は寝言かよ!」


「アハハ…。」



しばらく山道を歩いて下りにさしかかると、道が開けてきた。今夜はここで一泊らしい。


翌朝から再出発し、いくつかの山を越え夕方に差し掛かった時だった。森を抜けると、地平線の先には街らしきものが見えた。


あそこがニレイか?



「よいか!もうすぐ我がニレイの国だ。到着まで気を抜かぬように。」


「はっ!」



「到着か。何とかなったな。」


「リホもあの馬車が怪しいしね。」



ニレイの門に近づくと、見上げる程高い位置に城があった。



「デリー、いよいよ潜入開始だな。」


「うん。」

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