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闇の輝き  作者: ぴん
2章
13/53

魔獣との戦い

こんなにでかくなるもんなのか?それとも、悪気の大きさで変わるとか?とにかく、これがリーナさんが言ってた魔獣化か。


しかし、巨大な蛇はあまり考える時間を、俺にくれなかった。



「シイィィィィ。」


「うおっ。」



大きく口を開いて威嚇してくる。今にもあのでかい口に食われそうだ。俺は剣を抜いて構えた。


やられる前にやるしかない。


だが、上手く間合いが詰められない。狭い上に素早いな…。尻尾を狙いたいけど、速すぎて捉えられない。



「わぁっと。」


「ギィィィィアァァァ」



スゲー牙だ。やっぱ毒とか持ってるんだろうな。気を付けないと。壁づたいに、一気に回り込むか…。


魔獣化した蛇が一瞬横を向いた。その隙に俺は反対側へ走り、覚悟を決めて斬りかかった。



「うおぉぉぉ!」



魔獣蛇のクネクネした胴の攻撃を二度・三度とかわし、剣を繰り出すが皮膚が硬い。少しでも弱らせてから尻尾を狙いたいのに、かすり傷程度にしかならない。


背中はダメ…腹を狙うか…。奴が上を向いた瞬間に行くしかない。



「今だ!」



喉元めがけて斬りかかった。硬さを俺の体が学習していたせいか、先程の攻撃よりも間合いは自然に詰まっていた。



「くっ、これでも浅いのか…ハッ!」



危険な間合いだった事に、魔獣蛇の頭突きが避けられないと思った時に気づいた。


殺られる!!


ドーン…


「何っ!?」



両腕で受けきるはずだった魔獣蛇の頭突きは、方向を変えて天井にぶつかった。助かったと思った次の瞬間、新たな危機が俺を襲った。



「マズイ!…天井が崩れる!!」



痛みでもがく魔獣蛇の動きは止まらない。何度も天井に頭をぶつけ、崩れた石や砂が洞窟内に降り注ぐ。何とか距離はとれたが、砂埃で視界があまりにも悪い。しかし、衝撃で天井に穴が開いた。偶然だが、月明かりで魔獣蛇の姿がハッキリと見えるようになった。暴れていた魔獣蛇は、傷を修復しながら徐々におとなしくなっていく。チャンスと思った俺は、再度斬りかかった。



「ハッ!しまったぁ。」


「ギィィィィアァァァ」



油断はあった。斬りかかった方向から、魔獣蛇は巨大な口を開き、鋭い牙を見せながら襲ってきた。



「くっ…。」


「ガアァァァァ」



しかし、俺を攻撃するはずだった魔獣蛇の頭が方向を変え、体を反って開いた口を天井に向けた。



「苦しんでる?何が起こった?」


「ハッ!」



聞こえた声と共に、俺は崩れて穴の開いた天井を見た。


この攻撃…この光は天士(リホ)か!いや、さっき聞こえたのは男の声…。



「今です!奴の尻尾を。ハッ!」



まだ視界が悪くて姿は確認できないが、やはり男の声だった。再度放たれた光が、魔獣蛇の動きを完全に封じる。


誰だかわかんねーけど助かったぜ!



「うおぉぉぉ!」



渾身の一撃が決まり、俺は魔獣蛇の尾を切り裂いた。



「よし!」



尻尾の傷から悪気が漏れ始める。



「離れて!ハァー!」



その声と共に、魔獣蛇の浄化が成功した。


これはバイラインの時にリホがやった事と同じ。やはり天士の浄化だ。


俺は開かれた天井を再び見た。砂埃も治まり、逆光だが目に映ったその姿には見覚えがあった。



「あっ!あなたは…リホの…。」


「はい、堕天士(だてんし)のミラです。護衛団の代わりに来ましたが、大丈夫ですか?」



さすが天士(てんし)の護衛だな。


俺は、ホッと一息ついてその場に座り込んだ。



「ありがとうございます。助かりました…。」


「いえ、マウア様。まだ安心するのは早いようです。」


「えっ!?」



なせだ?切り裂いたはずの尻尾が修復されていく?



「なっ?こいつ、尻尾が2本あったのか!」


「先程の浄化で悪気は多少減りましたが、どうやら2本を同時に切らねば完全に倒すことはできないようですね。」


「同時か…。」



「私が奴の動きをもう一度止めます。その隙に攻撃を。」


「了解ー!」



まだ修復中でおとなしい…今がチャンスだ。



「でりゃー!」



今度は、2本の尻尾を切り裂いた。



「やったか?」



魔獣蛇を見るが、弱っている様子がない。


尻尾2本でもダメなのか?



「それでは倒せません。すぐに尾は戻ってしまいます。」



確かに、もう尻尾はほぼ修復されて戻っている。



「くそっ。だけど同時は厳しい…。」


「グウゥゥァ」



攻撃?この矢は!



「マーウちゃん。崖だけじゃなくて、穴にも落ちちゃったのー?」



堕天士長(ミラ)さんの立っている反対側の天井にいたのは、洞窟の前にいるはずの闇士(マリーナ)だった。



「マリーナ!?っていうか、落ちてねーし。」



「あれが裏士(うらし)リーナの娘…、闇士(やみし)か…。」




「ところでマウちゃん、そちらの背が高くてカッコいい白ロン毛のお兄さんは誰なのー?」


「リホの護衛の人だ。堕天士のミラさんだよ。護衛団の代わりに来てくれたんだー。」




「堕天士ね…。ふーん。お兄さん強そうだね。マウちゃん助けてくれてありがと!」


「礼には及びません。それより早く奴を。」



「うん。でもさー、上から見ると尻尾が2本あるよ?えいえいっ!」



闇士(マリーナ)の放った2本の矢が、それぞれの尻尾に突き刺さった。



「ダメだマリーナ!その2本を同時に切らなければ、奴は倒せないんだ!」


「同時?それなら、簡単じゃん!」



闇士(マリーナ)が矢を2本同時に構えた。



「えーーいっと。」



再び放たれた矢は、2本同時に突き刺さった。だが、魔獣蛇は止まることなく闇士(マリーナ)を襲った。



「きゃぁー!」


「マリーナ!」



魔獣蛇は、闇士(マリーナ)の足元の岩を噛み砕いた。


くそっ、同時に見えたのにわずかにズレたのか。動く相手じゃ至近距離じゃないとタイミングが合わない…どうする。



「グウゥゥ」



このやろう!睨み付けやがって。



「マリーナ、大丈夫かー?」


「平気…。ちょっとかすっただけ。」



闇士(マリーナ)は、なんとか後ろへ飛んで避けたようだ。



「でも、あれだけウヨウヨ動かれると、同時なんて無理だよ。マウちゃん、どうするの?」


「今考え中!」



剣1本じゃ厳しいし…。ならマリーナと同時に…それもあまり変わらない。う~ん…。



「あ!わかったぁー。尻尾を結んじゃえばいいんだー。その結び目を切る!マウちゃんどう?」


「おぉ!」



なるほどね。マリーナらしい発想だな。



「でもどうやって結ぶんだぁ?」


「こうするのよ。ジャジャーン。」



矢に紐?そうか!



「でもすぐに切られちゃうんじゃ…。」


「マウちゃん、まだ気づいてないの?闇士が使えばこの紐だって強化されるんだよー。マウちゃんの剣と一緒!」



「あー、そっかそっか。」



今度こそ、やれるかもしれない。



「マウちゃん気を引いて。その隙に、私がちょちょいと結んじゃうから。そしたらスパッとやっちゃってよ!」


「わかった。行くぞー!」



だけど、こいつの速さは尋常じゃない。尻尾を結ぶには、丸まってる体を少しでも伸ばさなきゃな…。


俺は、近づくと見せかけて後ろへ大きく飛んだ。


上手くつられてくれれば、危険だが目的は果たせる。


「グワァァァ!」



来た!この牙を着地と同時に横へ飛んで避け、そのまま回り込むぞ!



「くっ。マリーナーー!」


ドーン…


魔獣蛇の頭が地面にぶつかって、わずかな隙ができた。闇士(マリーナ)が素早く矢を放ち2本の尻尾を結んだ。



「成功!うまいうまい。マウちゃーん、今よー!」



闇士(マリーナ)の声を聞いた俺は、結ばれた尻尾へ斬りかかった。



「もらったぁー!」


「ガウゥゥァァァ」



なにっ!?



「うわぁ。」




魔獣蛇の尾が、結ばれたまま俺を襲った。



「マウちゃーーん!あちゃー。尾を結んでも動くんだった…。あー!マウちゃん避けてーーー!」


「へ?だぁー。」



間一髪、結ばれた尾の二撃目はかわした。



「あぶねー。くそっ、失敗か。」



「マウア様、あなたがリホ様に選ばれた方なら、こんなものではないはず。そのお力を、今こそお見せ下さい。」



そんな事言われても…。そうだ!



「ミラさん!さっきの力で奴をもう一度止められないの?」


「申し訳ありません。力を使いすぎました。当然ですが、堕天士の力は天士には及びません。ですから、今は浄化に備えさせて下さい。あなたなら必ず倒せます!」



そんな…。くそっ、俺は全力でやってるのに、これ以上どうすれば…。



「マウちゃんあぶなーーい!」


「ぐおっ。」



やられた…。


魔獣蛇は、口を開けずに最短距離で俺に頭突きした。


まともにもらっちまったか。いてぇ…体が動かねぇ…。


飛ばされて仰向けに倒れた俺は、再度襲いかかってくる魔獣蛇の頭突きを、見ている事しかできなかった。



「こんのー!もう許さないんだからねー。」



矢を放って魔獣蛇の気を引いた後、闇士(マリーナ)が短剣を手に洞窟内へ飛び降りた。


ダメだマリーナ、逃げるんだ…。


だが、俺への攻撃が闇士(マリーナ)に向けられてしまった。



「きゃぁぁぁ!」



無情にも、魔獣蛇の頭突きが闇士(マリーナ)の全身を捕らえてしまった。体を反りながら、闇士(マリーナ)の体は自由を失い宙を舞った。



「マリーナぁ!!!」


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