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「仁季くんたち大丈夫かな?」
あなたの言葉を聞いて、河童少年の顔色が曇った。
天狗が彼に尋ねる。
「ニッキーは、まだ眠れぬのか?」
「寝ようとするとあの女のことを思い出すみたいだ」
「……なにかあったの?」
河童と天狗に見つめられて、あなたは俯いた。
少し踏み込み過ぎたのかもしれない。
しばらく間を置いて、河童少年が口を開いた。
「……死体、見つけたんだ。首吊り死体」
「ニッキーたちはいつも山の中で遊んでおったからの」
「ああ。最近は山に入るのも怖いらしくて、川原か村の入り口をうろついてる」
「あの年ごろの子どもに、家でじっとしていろというのは酷な話じゃよ。吾らと違って、ニッキーには同年代の友達がおらぬからのう」
「三太がもうちょっと大きくなったら、雪の好きなまんじゅう園とかいうゲームも出来るんだろうけど、今は化けたり走り回ったりしかできないしな」
(……魔術師の魔獣園のことかな……)
あなたと天狗は視線を交わし、河童の言い間違いを追及しないことを誓い合った。
「そういやさっき仁季が言ってた、ダークドッグさまを守ってね、ってのはどういう意味なんだろうな? 妙な化け物に騙されてるんじゃないといいんだが」
無言の天狗に指差されて、あなたはそっと手を挙げた。
河童が細い目を見開く。
「あんたのこと? あ、もしかして雪のキャットクイーンみたいなプレイヤーネームか!」
あなたは頷いた。顔が熱い。
河童が笑う。
「照れることないじゃないか。カッコいいぜ、ダークドッグ。……自分も大変なのに、弟たちのこと心配してくれてありがとう」
「ううん。わたしのほうこそ助けてくれてありがとう」
「俺は一平だ、よろしくな」
「ん?」
天狗があなたと河童の間に割り込んできた。
「一の字、ナンパか? ひゅーひゅー」
「口笛吹けないくせに無理するな。そろそろ行くぞ。仁季がリスを見たって言ってたのは、もう少し山の上だ」
「坂を登るのかえ? 吾は疲れておる。一の字、おぶってくれ」
「ふざけんな」
ぽかり、と軽く天狗の頭を殴って、河童は坂道を登り始めた。
慌ててあなたも後を追う。
ブツブツ文句を言っていた天狗も、やがて諦めたのか歩き始めた。
しばらく進んで、四方から風が吹きつける場所に戻る。
仁季がリスを見たのは、一番強い風が吹いてくる東の方角だという。
あなたたちはそちらへ向かって歩き出した。
*あなたは河童の名前を知りました。
一平。彼の名前数は『-1』です。
☆のついた番号の章へ行ったとき、その番号から1を引いた番号の章へ進むと、なにかあるかもしれません。もちろん普通に選択肢を選んで進んでもかまいません。
それでは──
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