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軽く深呼吸して、あなたはドアを開けた。
「……っ!」
悲鳴も上げられず、その場に座り込む。
室内から飛び出した真っ黒ななにかが、あなたの頭上で大きな口を開けた。
──蛇だ。
「破ぁっ!」
後ろにいた照原が、合わせた両手から衝撃波を放つ。
蛇は首を揺らしながら、室内へと戻っていく。
「悪霊か? とにかく止めを刺すぞ。お前、俺の背中触って、霊力送ってこい」
「れ、霊力? わたし霊感少女だったことなんか、ないんですけど」
「自覚がないだけだ。中途半端な霊感で浮遊霊や地縛霊引きつけて、邪気で体調崩してた美鳥が、高校行き出してから元気になったのは、お前が無意識に浄化してたからだ。夕方見てわかった」
簡単には信じられない話だが、あなたはとりあえず、部屋に入る彼の服の背中を掴んで後に続いた。
土壁に畳の狭い和室だった。
湿気が多く、ひどくじめじめしている。どこからか澱んだ水の匂いがした。
腐った畳が膨らんでいる。
さっきの黒い蛇は、その畳の隙間へ逃げ込もうとしていた。
「破ぁっ!」
あなたが背中に触れているせいとも思えないが、照原はさっきよりも大きく激しい衝撃波を蛇に放った。
その振動で鉄の扉が閉まり、部屋全体が揺れた。
全身が激しい痛みに襲われる。
照原は叫び声も上げず、衝撃波を放ち続けていた。
彼を通してあなたの中の力、霊力がどこかへ運ばれていく。
ここは、そういう部屋だったのだ。
中で発せられた力を悪霊へと運ぶために作られた部屋。
照原が顔だけ振り返った。彼も全身が痛みに襲われ、それ以上動けないのだろう。
「ごめん、シクった。ちゃんと親父に相談してれば……」
もう遅い。
──あなたたちの霊力を動力源にして、悪霊は力を増していった。
いつかこの土地に、邪悪な神が誕生するのだ。
<BAD END>




